サヨナラ、浅見君

「浅見光彦最後の事件」という副題のついた内田康夫「遺譜」を読んだ。中年のころ随分読んだ、内田の浅見光彦シリーズの最後というからには、読まずばなるまい。勿論図書館で借りたものである。見開きの扉に「この作品を浅見光彦を愛したヒロインたちに捧げ…

酸っぱく甘く苦い愛などー志水辰夫の短編「いまひとたびの」ー

志水辰夫の短編小説集「いまひとたびの」を読んだ。 昨年「行きずりの街」「背いて故郷」という長編小説を読んで面白かった作者の短編集である。いいなあ。実にいい。9編のうち、1編を除いて全ていい。以下ネタばれ。(1)酸っぱく甘く苦い愛 「忘れ水の…

今年もいい年になりそうだ

昨日でようやく、帚木蓬生の「閉鎖病棟」を読了しました。私の不得意な、多くの主人公がある小説で、誰が誰だったか分からなくなり、読むのに時間がかりました。 しかしいい小説でした。精神病を病んでいる人たちが主人公です。読んだ感想の第一は、精神病入…

「白鶴ノ紅」「残照」「霜の朝」

近頃白内障と脳みその衰えで、本をあまり読まなくなってしまった。これではいかん、ということで小説を三つほど読んだ。全て忘れるので、感想を書いておく。佐伯泰英「居眠り磐音」第48巻「白鶴ノ紅」 お家騒動にに巻き込まれ、友人を殺害し、その友人の妹で…

「日米同盟の正体」を読んだ感想

孫崎 享「日米同盟の正体」(2009年、講談社現代新書)を読みました。 現在の安全保障問題(集団的自衛権も含む)を理解するのにとてもいい本だと思いました。印象に残ったところを書き出し、感想を書きます。・・・・印象に残ったところ・・・ 第1章 戦略思…

「額田女王」を読んで

井上靖「額田女王」を読みました。白内障と加齢で文章を読むスピードがかなり落ちたと感じました。1年前でしたら多分一日・二日で読んでたものが四日かかりました。自由に好きなだけ本を読むと言うことが出来なくなりつつあります。困ったものです。加齢と…

「春風馬堤曲」のような小説

「花はさくら木」(辻原登著)を読みました。後藤さんの命が危ない状況で、こんなのんびりした小説を読んでいていいのかとも思いますが、私には何もできることがないので、読みました。まあ、面白かったと言えます。ロマンチックな小説でした。江戸時代中期…

哀しくて、厳粛で、背筋を伸ばさざるを得ない現日本国憲法

今年は運が良い年かもしれない。新年早々良い本に当たった。 「1945年のクリスマス」(1995年)である。ベアテ・シロタ・ゴートンの自伝(平岡磨紀子構成・文)である。彼女の名前は、現日本国憲法の男女平等条項の起草者と言うことで知っていたが、どのよう…

「私がいて良かった」

お盆や仕事の関係でだいぶブログを書いていませんでした。今まで4人でやっていた仕事が、一人辞めて3人になったので急にきつくなりました。この間も本は読んでいたので、備忘のため、雑感をまとめておきます。○白石一郎「横浜異人街事件帖」・・ 幕末の横浜…

日本が言うから、信頼して武器を差し出すんだ。

瀬谷ルミ子「職業は武装解除」という本を読んだ。(2011年、朝日新聞出版)瀬谷氏が生い立ちから現在やっていることまでを自伝風に書いている。と言っても まだ現在37歳。日本紛争予防センターというNPOの事務局長をしている。彼女の仕事は、武装解除の仕…

「アンネの日記」と「きけわだつみのこえ」

私の愛読書の一つは、「きけわだつみのこえ」である。「きけわだつみのこえ」は、アジア・太平洋戦争時の日本人戦没学生の遺書・日記などを集めたものである。学業半ばに倒れた学生たちの悲痛な叫びである。しかし、それは軍国主義日本の大人の声である。ア…

「アンネの日記」を読んで

恥ずかしながら60歳半ばで「アンネの日記」を読んだ。読んだ感想を以下に書く。(1)13歳から15歳の女の子の心の動きを克明に記述していることに感嘆する。 古今東西多くの女の子は、このような複雑な心の動きをしてるんだろうけど、それを日記に残すことが…

魯迅「藤野先生」を読んで

「藤野先生」は、魯迅の「阿Q正伝」と言う短編集の中の一つである。 この短編集を読んだ感想は、辛亥革命前後の中国国民のひどい心の荒廃である。「藤野先生」は、魯迅の仙台留学中の思い出をつづった随筆?である。その一節を紹介する。>だが私は、やがて…

うーん、哀しいなあ、しかし頑張ろう。

金目とは、どういう言葉だろう。余り聞いたことないな。少なくとも座りの良い日本語じゃない感じがする。石原環境大臣は普通に使ってるんだろうか。俺は使わない。普通に使う言葉なんだろうか。「金目当て」と言う言葉はよく聞く。その略ではまさかあるまい…

居眠りがホントに眠ってしまった

「居眠り磐根」の近刊「湯島の罠」と「空蝉の念」を読んだ。つまらない。もう2巻とも飛ばし読みだ。この前の2巻と同じ感想であるが、安手のホームドラマそのものである。 ますますつまらなくなった。あとがきによるとあと5巻ぐらいと作者は言っているが、…

やあ、面白い小説に当たったぞ

近頃白石一郎を読んでいる。白石一郎は、随分前「海狼伝」を読んで面白いなあ、と思ったまま、忘れていた作家だった。近頃、4冊ほど短編と言うか連作と言うか、長くないものを読んだ。面白いなあ。連作は、十時半睡事件帖。他の事件帖と違い、主人公の縦横無…

律儀の美しさー「黒書院の六兵衛」

浅田次郎「黒書院の六兵衛」を読んで思ったのは、律儀と言う言葉でした。江戸無血開城の時、的矢六兵衛という旗本がただ一人、状況がどうなろうと、誰に何と言われようと、かれ本来の将軍護衛の任務を尽くして一言もしゃべらず、頑として江戸城内詰所から動…

胸キュンの恋と愛ー「陽だまりの彼女」

いいねえ。俺は男なので、こんなに恋され愛されたら、うれしいな。いやうれしいではすまないな。 重すぎるかもな。どうなるのかな。想像つかないな。うーん、わからん。とにかく幸せだな。「僕は幸せだなあー」と言って鼻でもこするとするか。あまーい恋愛成…

古市憲寿「誰も戦争を教えてくれなかった」感想文

世界各地の戦争に関係する博物館をめぐった筆者の見学記である。それと戦争に対する考察がある。以下それを読んだ簡単なまとめ(自信はない。)と自分の感想を書く。簡単なまとめ序章 ハワイのアリゾナ記念館(真珠湾攻撃) ・・さわやかで楽しい戦争記念館…

元気な子どもたちー「下駄の上の卵」感想文

井上ひさしの「下駄の上の卵」を読みました。昭和21年の山形の野球好きの6年生の話です。相変わらず、楽しいですね。実に楽しい。と言っても何のことやらわかりませんね。まあ、どたばた喜劇+言葉遊び+ばかばかしい蘊蓄を傾けたおしゃべり+ばかばかし…

特攻隊「震洋」について思う(1)

近頃、島尾敏雄著「震洋発進」(潮出版社、昭和62年)と木村禮子編集「海軍水上特攻隊震洋」(元就出版社、平成16年)を読んだ。 どちらも義父から借りた本である。以下はこの2著を読んで思ったことである。震洋とは、太平洋戦争末期の特攻兵器である。全長…

菜穂子・楡の家を読んで

堀辰雄の「菜穂子・楡の家」を読んだ。思ったことは、われらは、いや俺は、現代小説に毒されているなあと言うことである。「菜穂子」は、>「やっぱり菜穂子さんだ。」思わず都筑明は立ち止りながら、ふりかえった。<と始まる。現代的である。都筑明と菜穂…

殺さないため盗むー池澤夏樹「カデナ」を読んで

1960年代末のベトナム反戦運動を描いた小説である。舞台は沖縄。反戦運動と言ってもただの運動ではない。アメリカの北爆情報(どこをいつ爆撃するか)を北ベトナム側に伝えると言うスパイ行為と米軍人の脱走を勧誘し援助すると言う二つの反軍・反国家行為であ…

「あの物語はもともと嘘っぱち」−太鼓たたいて笛吹いてー

井上ひさしの「太鼓たたいて笛ふいて」を読みました。林芙美子を主人公とした演劇です。「あの物語」とは、明治以降の「日本人みんなが気にいって」いた「戦さは儲かる」という物語です。芙美子もこの物語にあわせ、日中戦争に従軍記者として、兵士や国民を…

「特攻は、もううんざりなんだよ」ー「翼に息吹を」

(ネタばれ) 熊谷達也著「翼に息吹を」を読んだ。主人公須崎少尉は、昭和20年鹿児島県の知覧特攻基地で、特攻機の整備に当たる。 彼の仕事は、特攻機がきちんと飛べるように整備することである。 「敵艦轟沈を決意して特攻隊員が飛びたったからには、かれら…

俺たちは何をしてきたんだろうー森詠「はるか青春」を読んで

俺たちは何をしてきたんだろう?これが森詠の「はるか青春」を読んだ感想でした。森詠著「はるか青春」は、1968年から1971年頃の若い編集者を主人公とする短編小説集です。帯には、「毎日が現代史だった、濃密な時代を描いた自伝的小説」とあります。主人公…

「放浪記」と「残虐記」

先に桐野夏生の「ナニカアル」を読んで、主人公林芙美子に関心を持ちました。そこで有名な「放浪記」を読みました。「ナニカアル」の中でも、芙美子と不倫相手の毎日新聞記者斎藤謙太郎が別れる大きな契機となった「放浪記」です。斎藤謙太郎は、芙美子の作…

国家は疑心暗鬼を使い国民を統制するーナニカアルを読んでー

桐野夏生「ナニカアル」を読んだ感想を書きます。(半ネタばれ)①とてもいい小説だ。すごい小説だ。戦時中の戦意高揚に活躍した良心的ジャーナリストや作家の役割とその苦しみが良くあらわれている。 新しく「大東亜共栄圏」に組み入れられた地域の様子も活…

「永遠の0」感想と「きけ、わだつみのこえ」「戦没農民兵士の手紙」

映画ではなく、小説の方を読みました。 以下に小説の感想を書きますが、「ネタばれ」というのでしょうか、先入観をもちたくない人は、読まない方がいいと思います。余計なことを言いました。①最後の方で泣けてきました。一番泣けたのは、主人公宮部久蔵が特…

近頃読んだ「色彩のない多田つくる・・・」と「千鳥舞う」を読んだ感想

図書館に行ったら今年話題になった「色彩のない・・・」があったので読んだ。まあ面白く読んだという程度かな。村上春樹は、読ませるのがうまいんだと思う。最後まで一気に読んだ。しかし、読後に印象は残らない小説だった。高校生の頃のぴったりした仲間が…