浅田次郎の青春もの。何といっても俺と同じ時代の青春故=浅田次郎も同じ=面白い。
昭和44年京都大学に入学した人が主人公=語り手だ。おれもその同じ年東北大学に入学した。学生運動が激化し、東京大学が入試中止をした年である。東大入試があれば、主人公は京都に来なく、そして親友とも恋人とも幽霊とも出会わず、そしてだから恋の挫折もなかった。また京都でなければ、映画に憑かれた幽霊とも出合わず、親友を失うこともない。その意味では、昭和44年という時代とと京都という舞台も大きな大きな背景である。
いいなあと思うこと
①主人公三谷と清家忠昭の出会いが青春の出会いらしくていい。
②主人公と恋人早苗の出会いと恋への陥り方がまた青春らしい
③各場面にちりばめられた京都の美しさが素敵だ
④幽霊夕霞の美しさ・はかなさ・映画への執念がいい
⑤滅びゆく映画への挽歌がいい
⑥ところどころにユーモアがあっていい。会話が青春だ。
⑦ミステリー調がいい。
気に入らないところ
①なぜ主人公が恋人をすてて東大を再受験するか、それが弱いと思う
親の期待・その時代に生きるなどいろいろ言っているが、弱い。
②東大を再受験して入学しても、恋人を捨てる必然はないと思う
しかし、夕霞が初めて台詞をもらって演ずる場面は美しいなあ。もっと美しいのは、恋人との別れの場面だ。別れる必然性が弱いのは残念だが、ストイックな二人故、向上心が強い二人故、そして青春である故別れも’あり’かもねえ。しかし、この二人その後どうなったか不明だが、もちろん本当の別れがあったのだろう。やはり青春への決別なのかねえ。小説の扉にー僕の青春、そして喪われた親友と、永遠に愛する初恋の人へーとある。
青春のみずみずしさとその喪失がテーマか。
そんなこともまあどうでもよい。
美しい、そして懐かしい。永観堂へ行ってみたい。