自民党憲法改正案の劣悪さ(人権関係)

自民党は、人権を迷惑なものと思っている政党のようだ。だからできるだけ制限しようとしている。それが改正案に良く表れている。
①やがて「君の行動は公益に反する。君の言葉は、公の秩序に反する。」と言われるかも
  改正案
   12条「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、
      常に公益及び公の秩序に反してはならない」
   13条「・・・・国民の権利については、公益及び公の秩序
      に反しない限り、最大の尊重」
   21条 表現の自由の保証
      前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害する
      ことを目的とした活動を行い並びにそれを目的にした
      結社をすることは認められない。
   
 12条・13条の「公益及び公の秩序」は、現憲法では、公共の福祉とあったものである。しかもそのあり方が違う。現憲法では、「・・・公共の福祉のためこれを利用する責任を負う」という文脈である。これは、「各人には権利がある。その権利は、自分のためばかりでなく、公共の福祉のために使おう」というわれら国民の意思の表明である。公共の福祉とは、「僕だけじゃなく、君にも、他の人のためにも良いように」という意味であると思う。
 改正案では、国家か政府か多数者が公益や公共の秩序で人権を制限するということである。この場合公益とは、全体の利益と言う意味に近い。「全体の利益に反するな」と言っているのである。しかも公の秩序に反するなである。公の秩序はだれが決めるのか。法律であれば国会、政令であれば政府と言うことになる。人権が制限される。自民案の根拠は、「選挙で選ばれた国会・国会から作られた政府だから制限するのが民主主義」なんてものだろうが、多数決によっても制限されないというのが人権で、だからこそ法律・政令よりも上位の憲法で人権を保障しているのだ。
 本来人権は、国会や政令よりも上位の概念である。国会や政令でも(つまり多数決でも)奪われないというものである。制限されるのは、君の人権や他の人の人権とぶつかる場合のみである。その調整の時、考えるべきなのが「公共の福祉」である。これが現憲法の考えである。と言っても現憲法でも、「思想・良心の自由」は、「公共の福祉」でも制限されないものである。
 自民案はひどい。なんとかして制限しようとしている。だからこそ次の条文を完全に消している。恐ろしい。
   97条「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる
      自由獲得の努力の成果であって、これらの人権は、過去幾多の試練
      に耐え、現在及び抄来の国民に対し、侵すことの永久の権利として
      信託されたものである。」
②俺は「犬」じゃないから尊重されるのか。
   自民案では、第13条で「人」として尊重と改正している。現憲法では、「個人」として尊重とある。
  現憲法の「個人として尊重」とは、わたしが小さい子供だから、あるいは弱い老人だからではなく、男だからでもなく、女だからで  もなく、高い地位・経済力を持つからでもなく、良い人だからでもなく、子どもでも老人でも男でも女でも金持ちでも貧乏でも良い  人でも悪い人でも、おねえキャラでも同性愛者でも、どのような個性を持っていても尊重されるという意味だ。それが個人として尊  重という意味だ。国家は、区別してはならぬという国家への命令だ。
   自民案「人」としてとは、のっぺらぼうの人一般を言うようだ。俺は、犬でなく人だから尊重されるのか。人を「人でなし」なん  ていうことあるが、「人でなし」の人でも個人だから尊重せよと現憲法では言っているのだ。国家権力は、それに口出しするなと言  っているのである。「人でなし」は、だれが決めるのか。「人でなし」は、社会的に断罪せねばならぬだろう。しかし、「人」に   は、多数のあるいは時代のあるいは権力の定義が入りやすい。その定義に入らない人は尊重されぬのか。恐ろしい。
自民党は言う。「国民よ。これが目に入らぬか。これが憲法だぞ。良く命令に服せ。」
  3条「国歌」「国旗」を尊重しなければならぬ
  12条「・・・・反してはならない」、21条の2「・・・認められない」、
  19条「思想良心の自由は保障する」→誰が保障するのか。保障されずともあるのだ。もともと。現憲法では、「侵してはならない」
     とある。国家や政府や多数派が侵してはならないというのが今の憲法なのだ。それを「保障する」だと、えばってやがる。
     もともと人権はあり、それを国家や政府や王や多数派から守るため憲法がある。人権は、多くの歴史を通して市民革命を通し     て多くの努力困難を通して達成してきたものだ。それを自民案は無視している。だからこそ97条を消しちまったんだ。
  24条「家族は互いに助け合わなければならぬ」→誰が誰に命令しているんだ。
     国民に対する命令口調が多いねえ。いっぱいある。これは、現在の憲法にない口調だ。

  自民党案は、「憲法は、国民が、自分のもともと持っている人権を国家や政府や多数派から守るためにできたもの」と言う近代憲法 の基本中の基本を無視している。俺は、こんな自民党案を決して認めない。
  
  そのほかまあ自民案には文句が一杯あるが、哀れなのは、憲法前文だ。現憲法にある民主主義への意思も平和への意思も世界人類へ の視点も何もない。格調もない。まったくない。目新しく入れたのは「天皇を戴く国家の良き伝統を子孫に伝えるため憲法を制定」だ  と。
  いつの時代の歴史を良き伝統と言うのか。良いことも悪いこともあるはず。天皇制もまた歴史的に様々に変化した。いつの天皇制を 伝統と言うのだ。そんな不確かなことを憲法に入れるな。
  余りにも余り余りにも低レベルである。天皇関係については、いろいろ文句があるがとりあえず人権について考えを述べた。
  自民党案は、腐っている。危険である。