ホタルとタヌキと蛍三七子

 今日相馬は、多分初めての30度越え。夜9時過ぎ、妻と夜のドライブ。目的はホタル。家の西の方2〜3キロ付近は、阿武隈山地のふもと。山里と言っていい。しかし、近年開発が進む。特に、高速道路工事の最中で、年々ホタルを見なくなった。その道はタヌキもキツネも何べんも見た道だ。いるかいないか。
 蒸し暑い初夏の夜に蛍は孵化するとのことで出かけた。
 ポイントその一。田んぼの真ん中の細い道。路傍に車を止めて、ライトを消した。あたりはほぼ真っ暗。良く見たが全然光はない。ポイントその二.ここも全然ない。今日ははずれか。
 ずっと前から一番ホタルを多く見た場所だ。近くに小さい流れがあり、その合流地点である。しかし数年前から高速道路工事がすぐそばで行われているところである。期待半分、あきらめ半分で車を止めた。
 妻が「いた一匹」と叫んだ。俺の側には見えない。駐車ランプを付けて降りてみたら、いるわいるわ。ピカピカ。「あ、あっちにも、こっちにも」
 ランプの点滅がうるさいので消してみた。そしたら、いなくなった。いや、光らなくなった。光の点滅に反応するんだろうか。また、駐車ランプを点滅させたら、木の茂った空の高いところにいっぱい。田んぼにもいっぱい。そして車に近寄ってくる。いやーホタルは、光の点滅に反応するんだ。車を止めた道路に降りたのが数匹。車にひかれたらまずい。点滅を消して、間もなく車を走らせた。
 今年も見れた。しかもいっぱい。来年は見ることができるのだろうか。
 それにしてもきれいだ。わーとピカピカ。
 
 ちばてつやの「蛍三七子」を思い出した。最後の場面は素晴らしかったなあ。漫画を馬鹿にしていた俺が、これは漫画でないと表現できないなと思った場面だ。漫画の価値を再認識した漫画である。遅れた村に大きな資本が進出し、開発のため自然を破壊する。村人も開発に協力する。三七子はそれに抵抗する。激しく抵抗するのには理由がある。三七子に弟がいた。知恵遅れの弟だ。その弟が蛍好きで、その時蛍が川に流され、それを救うため弟も溺れる。その死んだ弟のため三七子が蛍を育てる。しかし工場側は、その育てている場所も汚す。・・・本がもうないんで忘れた。とにかく開発が蛍の生存を危機に陥らせる。そして最後の場面。開発を邪魔した三七子と彼女に同情した大学生が、工場側の人や村人に暴力をふるわれる。その時、蛍がスイーと飛ぶ。「あー」そのうち多くの蛍が飛ぶ。そのホタルを工場側の人がはたき落とす。それを村人がやめてくださいと言う。
 膨大な蛍が舞い飛ぶ最後の1ページ。印象的な絵であった。

 さらにタヌキがいないか、キツネがいないか探しながら車をゆっくり走らせた。そしたらいた。中型のタヌキが道路の端でこちらを見て、それから、闇のなかへ消えた。
 久しぶりにタヌキを見た。良い夜だった。