「風立ちぬ」で腹立ちぬ

上の題は、大げさに言ったものです。
腹が立つほどではありませんが、つまらない映画と思いました。珍しく妻と同意見でした。

今日話題の宮崎駿の「風立ちぬ」を妻と二人で見てきました。ゼロ戦の設計者堀越二郎が主人公でした。若き日の堀越に、堀辰夫の小説「風立ちぬ」の恋をさせたもののようです。
ようですと言うのは、「風立ちぬ」を読んだのが40年以上前のことで良く覚えていないからです。
風立ちぬ」のヒロインが菜穂子だったのかな。ヒロインが結核だったのは良く覚えています。何か透明な感じを受けた小説でした。

まあ、この映画はこの映画として観賞すべきでしょう。
なぜつまらないないと思ったのでしょうか。

はっきりしているのは、主題がはっきりしないということでしょう。主題は何なのでしょうか。堀越の努力・天才・夢・純粋さなのでしょうか。ゼロ戦の性能の素晴らしさなのでしょうか。ゼロ戦の美しさなのでしょうか。彼の恋・愛の純粋さなのでしょうか。菜穂子の愛なのでしょうか。多分全部を含めているんだろうと思います。そこに感動できない理由があると思います。

宮崎作品らしく幻想的な部分がありましたが、ゼロ戦はあくまで現実です。そこに無理があるような気がしました。トトロやダイダラボッチや湯婆は幻想です。しかし、ゼロ戦は現実です。ゼロ戦は、日中戦争時〜太平洋戦争初期には、世界最強と言われた戦闘機でした。それは、スピードと旋回性能と航続距離と20ミリ機関砲という攻撃能力に優れていた点で最強でした。戦争後期にはその弱点=防御能力のなさ・高空での性能の低さを突かれ優位さを失いました。ゼロ戦の長所短所は、吉村昭や柳田邦男の著作によると搭乗員の人命軽視の末の高性能とのことです。その通りだろうと思います。末期には特攻機にも使われた。僕の知識ではこんな程度しか思いつきませんが、戦争時代の現実の中で使われた兵器でした。そこを描かないないのは、良いと思います。一つの表現の仕方ですから。しかし、友人が関係した一式陸上攻撃機の弱点を描いているのに、ゼロ戦の弱点を言っていないのがどうも変に感じました。

説明不足もあったと思います。
前半は、関東大震災・金融恐慌・昭和恐慌と言う時代を描いていますが、地震や不況が何なのかはっきり説明されていません。はっきり説明すると、お話でなくなるからでしょう。説明しては幻想でなくなります。
ここに現実の堀越・ゼロ戦を美しく描く難しさがありますねえ。

妻が途中で何か飲み物をそっとよこしました。あ、彼女つまらなく思ってるなと思いました。後で聞いたら途中で寝てしまったとのこと。確かにつまらない映画ですね。
途中でこれは失敗作だなあと思いながら真面目に見ていました。

この映画は泣けてしょうがないという話を聞いていたので、覚悟していったが、泣ける場面なんてあったかな。
まあ、美しい場面や背景の細かい丁寧な作りは、力作だなあ、金がかかっているなあとは思いました。

喫煙論争で盛り上がったと言う話も聞きましたが、確かにこの映画では喫煙シーンが多かったな。しかし、男は昔良く煙草を吸っていたんだから、この映画の登場人物たちがすうのは当然なのじゃないかなあ。何の論争なんだろうねえ。興味ないな。論争自身に。

本筋終わって人名がずっと流れる場面、早く映画館出たかったが、中央の席なので出られない。多くの人が動かない。感動してるのかなあ。そんなはずないなあ。
大勢の観客がいました。面白かったのでしょうか。俺と妻の感性が鈍いんでしょうかねえ。

電気がついてすぐ、「つまらない映画だなあ」と言って妻にたしなめられた。しかし、ほんとにつまらなかった。見た人はどう思ったんだろう。気になった。