凛とした生き方 乙川優三郎「生きる」

家老に殉死を止められて、藩内・家族からも白い目で見られ、ほとんど全てを失っても、
生き続けた男の話。

主人公が失ったものは、藩内の信頼・友人、娘の夫(殉死)、娘の信頼、その上息子まで殉死で失った。主人公はもともと殉死したいと思っていたのであるから、何とつらい人生であったろう。

苦しんだ末、「正しいと思う法に従い生きることに何の不都合があるか」と言う境地になって生きた。しかし苦しい生きざまだな。同じ境遇の唯一の友人は、自分の意思で餓死した。これもすごいねえ。

最後、娘が自分を認めてくれたと言う幸せが訪れた。

俺が思ったこと

①信念を持って生きていけばなにがしかの幸せがあるということ
②幸せがなくとも、世間と違っても、信念で生き抜くべきこと
③名作森鴎外阿部一族」では、阿部一族が主君の命により殉死ができず、結局藩に抵抗して滅んだという話であるが、こちらは苦しんでも生きた。
④この作者の作風は、葉室麟に似ていると思う。