「原発事故対策、国が前面に」には、「村の利益」の偽装が臭う

11月11日、福島原発事故対策に国が前面に出て積極的に関与するという報道があった。自民党復興加速本部と公明党幹事長の提言受けとのことだ。


確かに事故対策が遅れているのは事実だ。しかし、一見よさそうに見えるこの方針転換は、東電の責任をあいまいにするもくろみがあると思う。


これまでは、東電が国からお金を借りて除染や賠償や汚染水対策をやって、そのお金を後で東電が返すというやり方であった。



これを、東電の負担の一部を国が肩代わりするという方針転換である。9月に騒がれた汚染水対策に470億投入したあのやり方である。除染も公共事業的発想で、かなりの部分を国が負担するというやり方である。


一部国が肩代わりする部分について考えてみよう。


これまでのやり方だと、東電が国に借りたお金を返すのであるから、東電の経営陣・株主・従業員と消費者(電気料値上げ)が負担することになる。(他の電力も負担するがそれも同様なので東電に限って述べる)



今度のやり方は、国が肩代わりということである。それは税金投入ということであり、全国民が負担するということである。


消費者=国民であるので、この方針転換は、東電の経営陣・株主・従業員の負担軽減ということを意味する。


東電は、今年黒字を計上した。その時社長は、「やがては配当を復活したい」と言った。そして原発再稼働しないと経営が
苦しいという。安部政権も原発再稼働を目指している。つまりはかの原子力村の利益優先なのである。「復興加速で国が前面に」
とは、原子力村の利益の偽装ではないのか。



しかし、この事故に一番責任のある東電関係者の負担軽減、その分を全国民でというのは、どう考えてもおかしいだろう。




電力会社の給料は、大企業の中でも飛び抜けて高かった。株主は、これまで配当金を2〜4%もらってたはずだ。
何もなければ、給料が高いのも、安定して高い配当金もらってもいいとおもう。自由社会なのであるから。羨む人は、電力の社員になればいいんだし、電力の株主になればいいんだから。


しかし、東電は事故を起こした。安全対策をすっぽかしてその金を高い給料と配当に回した。何十年もだ。そのお金で一体何百メートル高さの堤防が作れたんだ?
外部電力のヂーゼル発電機を丘の方に設置するのには、大したおかねはかからなかったろう。配電盤を高い所に移設するのにそんなにお金かかると思えない。
そうすれば全電源喪失はなかった。この巨大な被害はなかった。


安全対策をすっぽかしたその責任はとるべきだ。





東電は民間会社であるから、どこに金を回すかということを考えることもあると思う。そのため復興も遅れることもあろう。
国が前面に出て決定せねばならぬこともあると思う。


ここから出てくる結論はただ一つだ。東電の清算とその後の国の全面的関与である。


東電を清算すれば東電株を持つものの含み損がそのまま損となる。銀行・自治体・個人株主・・が損をする。それはやむをえない。株主とはそういうものだと思う。これまで安全対策をさぼり利益を得てきたのだからしかたない。東電株価は震災前の10分の1になったが、最安値から2・5倍に増えた。このまま復活してやがて配当も出るなどとなったら、全国民の負担を踏み台に、東電株主が利益を得ることとなる。


そんなのおかしい。いまのしくみでやれ。それで困るなら、東電を清算して、その条件のもと国が前面に出て税金を投入せよ。


おれは、そう思う。