グレーをブラックにするな

解釈改憲の自公協議は、武力攻撃に至らないグレーゾーン事態への対応から始めるようだ。

5・15安倍首相の政府の「基本的方向性」では、我が国の離島に漁民を装った武装集団の上陸が例としてあげられている。これを安保法制懇報告ではより詳しく説明している。

事例6である。「海上保安庁等が速やかに対処することが困難な海域や離島において、船舶や民間人に対し武装集団が不法行為を行う場合の対応」と言う題がついている。

煩瑣になるので詳述しないが、報告では、「自衛隊の活動がいろいろ現在でもできるけれど、(1)迅速な行動をする必要があると言う主張と、(2)どのような実力の行使が可能か、国際法の基準に照らして検討する必要がある、と言う主張をしている。

この場合、実力の行使とは何か?検討する必要があると言っているので検討したらいいと思う。しかし、「国際法の基準に照らして」と言う発想は危険である。と言うのは、国際法で認めていても憲法では認めていないと言うことがあるからである。その一例が集団的自衛権である。国連憲章で認めていても憲法で認めていない。
つまり、この報告は、グレーゾーン事態でも、憲法を無視してやろうとしているのである。

具体的に考えてみよう。

尖閣に中国軍特殊部隊が漁民を装って数十隻で押しかけたとする。海上保安庁がそれを阻止しようとする(=たとえば放水などで)が、数隻に上陸されたとする。海上保安庁は、これは、領土侵犯に当たるので、逮捕しようとする。それを中国海軍が、自国の漁民の
保護を理由に邪魔しようとする。邪魔しようとする中国海軍を海上自衛隊が邪魔しようとする。その邪魔する手段に何を使うか=どのような実力行使するかを検討せよと言うのが、報告の内容である。


この場合、海上自衛隊が警告射撃などののち、中国海軍に対してミサイル発射しその艦船を撃沈、あるいは先に中国海軍が自衛艦に対してミサイル発射し撃沈という状況になったとする。ここから日中戦争になる可能性がある。

この現地戦闘を拡大しないためには、日中双方のシビリアンコントロール、日中両国民の
感情の高ぶり防止、日中双方の政府の意思疎通が大事である。


さて、私が安保法制懇委員であるなら、戦争にならないため、日本国憲法を生かし平和的解決を研究する。
(1)中国政府及び中国国民へ国際司法裁判所尖閣領有権を決めようとの提案、それを世界中に宣伝する。(こうすれば、漁民を装う特殊部隊の活動はしにくくなるだろう)

(2)中国政府・国民との交流を進める。そのためには、戦後体制の再確認=侵略反省
平和的手段による平和国家建設再確認、安部さんに、靖国参拝は間違いと世界に向かって宣言せよ、専守防衛に徹するという宣言せよと提言。

(3)海上自衛隊の艦船を海上保安庁に移して海上保安庁強化。船体、人員はそのままで攻撃する武器を保安庁段階(多分機関砲ぐらい)に下げる。何せ、武装魚民は犯罪者なので犯罪者を取り締まるのは警察なので、警察=海上保安庁を強化すればいい。
そうすれば、尖閣紛争も国家間の戦争になりにくい。そもそも自衛隊を使おうという発想が間違いなのである。これまで自民党政府は、出来るだけ自衛隊を使おうとしてきた。それが大間違いなのである。

(4)その他、仲良くする手はいくらでも考えられるだろう。それを考えるのが安全保障というものだ。

どうして、どんな武器使えるか、どんなふうに実力行使するかなんてばかり考えるんだ。そりゃー戦争へのみちだ。暗黒の世界だ。

グレーをブラックにしちゃダメだ。

安保法制懇の上げるもう一つのグレーーゾーン事態も同様だ。

事例5である。もう詳述はしない。中国潜水艦が我が国領海を退去に応じず徘徊を継続する場合。安保法制懇は、強制的に退去させる方法を考えよ、と言っている。まさか爆雷を使えと言うんじゃないだろうな。武力行使をせよと言うなら、戦争が近付く。

この場合グレーはグレーでいいではないか。徘徊されてもそれを排除するため武力行使をしてはだめだ。白=すっきりになろうとして黒く=戦争になっちゃだめだ。

戦争もいいではないかと言う人もいるだろう。中国なんぞやってしまえなんて人もいるかもしれないが、そりゃ駄目だ。何故だめかは、長くなったので別の時に述べる。

詳述しないなんて言いながら、また長くなっちゃった。ここまで読んだ人がいるなら感謝。