「アンネの日記」を読んで

恥ずかしながら60歳半ばで「アンネの日記」を読んだ。読んだ感想を以下に書く。

(1)13歳から15歳の女の子の心の動きを克明に記述していることに感嘆する。
古今東西多くの女の子は、このような複雑な心の動きをしてるんだろうけど、それを日記に残すことがすごいと思う。これはアンネの自分を見つめる力の強さから来ると思う。もちろんナチスの迫害から逃れて隠れ家に住むという特殊環境もあると思うけれど。

老若男女、古今東西日記を書いた人は多いと思うけれど、なかなかアンネのように自己表現が出来た人はまれなのではないか。

(2)アンネは素晴らしい女の子だ。自分を見つめる強い力が、大人をも突き刺す。その視線は自分に跳ね返り自分を素晴らしい人にしようとする行動へ導く。外に出られないかつ学校にいけない環境の中で、たとえば新しい言語を学習しようとする、そんなこと出来るかい?

(3)アンネは、魅力的な女性だっただろう。精神的に活発で利発で活動的である。13の頃までは,おませなおきゃんな女の子だったろう。のちには他人を思いやる優しい気持ちを持つようになる。すごい成長だ。本人は、自信と懐疑の間で揺れ動くが、文才も紛れなく一級品であると思う。

(4)アンネは、ナチスの行為をきわめて鋭く批判している、もちろん親の影響もあるだろうけど、自分の言葉でナチス批判を表現している。自分の目で見て考えナチスを批判している。すごい。

(5)アンネは、正義感あふれる勇気ある女性である。

>もしも神様の思し召しで生きるることが許されるなら、私はお母さんよりも立派な生き方をして見せます。つまらない人間で一生を終わりはしません。きっと世のため人類のため働いて見せます。<(アンネ=フランク、1944年4月14日)

>一体全体、こんな戦争をして何になるんだろう。何故人間はお互いに仲良く暮らせないんだろう<(アンネ=フランク、1944年5月5日)

>戦争の責任は、偉い人たちや政治家、資本家だけにあると思いません。そうではなくて名もない一般の人たちにも責任はあるのです。そうでなかったら、世界中の人々は、とっくに立ち上がった革命を起こしていたでしょう(同上)

こんな14才の女の子を殺した人類を恥じる。

(6)アンネの恋を読んでいると、ゲーテ「若きウェルテルの悩み」の文章を思い出す。弾む心の動き。ペーターにキスをさせる彼女には、女の手練手管を感じる。恐るべし。しかし、アンネは、年上の男の子をあっさり抜きさって、さらに成長していく。

(7)当時の生活・習慣・考え・戦争への受け止めかたがタイムカプセルのように残されている。アンネの観察力・文章力のたまものだろう。

(8)翻訳を読んだわけであるが、13歳〜15歳の女の子にしては合わない言葉が多くあった。日本語・漢語で表現する難しさなのだろう
。もっとこの年齢の女の子の言葉で訳してほしかった。翻訳は難しい。当時のペーターとなって彼女の言葉を聴いてみたい。

(9)この書は、世界の平和の大きな礎(いしずえ)となった来た本だと思う。少なくともEUを形成させた精神的基礎なのではないか。EUは、数多くの戦争の惨禍を経験してきたヨーロッパが、再びの戦禍に遭わないようにつくったものである。この戦争の惨禍を示すものの一つが、「アンネの日記」である。

我々は、この日記後のアンネの運命を知っている。アンネの日記を彩った多くの人々の運命を知っている。

アンネの日記」は、ナチスや戦争の犯罪、人類の馬鹿さ加減を永遠に告発している。