古希の人もこき使うべき

和田芳治著「里山を食い物にしよう」を読みました。

藻谷浩介「里山資本主義」で紹介された、広島県庄原市総領町で活動している和田氏が、自分の活動を書いたものです。里山利用に限らず、バイタリテイあふれる素晴らしい人です。以下に感想を書きます。

(1)プラス思考が素晴らしい。
たとえば、過疎については、「ない」と言うことは「何でもやれる可能性がある」と考えて、廃屋・廃校を利用するイベントを実行する。村が雑草にのみこまれそうなことを逆手にとって「雑草を食う」会を作る。逆境でも「面白がればなんだって面白い」と考える。邪魔する人がいる場合、10人中10人に受ける営みなんておかしいと考えるなどなど。プラス思考が苦手な俺も見習わなくちゃ。

(2)考え方が面白い
「遊び半分の生き方こそ、21世紀の理想の生き方」
「エライ人が反対する企画はうまくいく」
「夫は妻の出来の悪い第一子」
            などなど

(3)「里山資本主義」にも紹介されているが、言葉の言い換えのうまさ
たとえば、里山快席(食事)、交歓具(交換具)、里山木族(貴族)、笑湖(えこ)ハイヅカ、人輝商品、「夫婦は響存」等等

(4)イベントの盛り上げ方が実にうまい。ポイントは、参加者を使うこと。

(5)里山の生活はいいと思った。水・食糧・エネルギーを自分の手で手に入れるなんてすばらしい。「里山資本主義」で言っている
サブ=システムが具体的に了解される。

50年以上前、母に連れられ、山に薪(たきぎ)取りに行ったことを思い出した。薪と言っても枯れて落ちた枝である。俺は、山に登っただけでくたびれて、薪を背負えなかった。母の友達数名行った。子どもは俺だけだった。里山を利用した生活であった。
そういえば、風呂やご飯は、薪で炊いていた。洗濯は、池でやっていたなあ。魚も鮒・鯉・ドジョウ・鮠も食っていた。たまには鰻・ナマズも釣って食っていた。もちろん買った魚もあったけれど。肉は殆ど食わなかった。卵も特別な時だけだった。

今俺は、畑に撒く水は湧水を使っている。結構な量が流れ出ていてもったいないと思ったからだ。どうだすごいだろう。・・・この自分の恥ずかしげもない自慢は、和田さんの真似です。和田さんは自分を自慢し、妻を自慢します。これが出来るかどうかは、性格の問題ですね。

(6)ないものねだりをしないということには賛成である。あるものを使えば良い。過疎地にあるものの一つ。高齢者。これをうまく使えば良い。「古希の人もこき使う」いいねえ。「里山資本主義」にもあった。生産年齢減少→女性労働活用→団塊世代が家事・孫の世話
これはいいねえ。全てにプラスで正しいことだ。

(6)彼は唱歌「故郷」が大嫌いとのことだ。この歌は、故郷を捨てた人の歌で、故郷に残って活動すべきなのに捨てるとは何事だと言うことである。
私はこの歌が大好きで、国歌にすべきと思っている。彼と正反対である。彼は、農家の長男で故郷に残され、そこでいろいろ活躍した人なので、故郷で活躍すべきと言うのもわかる。
確かに「故郷」の作詞家高野辰之が、故郷を離れて故郷を思って作った歌である。彼は出世して故郷に錦を飾ったという。

しかし、作られた歌は、作った人を離れ様々にて解釈されていく。人が故郷を離れるのには、様々な理由がある。
この歌は、故郷で食えなくてやむを得ず都会へ行き、苦労していて故郷を思っている人の歌ともいえる。開発により壊された自然を思う歌ともいえる。遠い異郷で父母友人を思う歌でもある。自分を鼓舞する歌ともいえる。団塊世代には、金の卵といわれ実際は、劣悪な環境で低賃金長時間労働を強いられた人も多かった。そんな人にとっては「故郷」は、心の支えであったろう。

原発事故後は、この歌は福島県人にとってつらい歌となった。避難先のコンサートで、皆で最後に歌ったのが「故郷」だったそうだ。古い友人が言っていた。この歌は、泣けて泣けて仕方なかったと言っていた。そうだろう、もはやきれいな自然はないんだ。みよ、あの山を。蕨もキノコもタケノコもイノシシも何にも食えないんだぞ。隣町のあの川のアユは食えないんだぞ。今も。
2012年の年賀状に私が書いたへたくそな歌を紹介します。
「かの山やかの川汚し輸出だ?と再稼働だ?と馬鹿にしすぎだ」

(7)筆者は、フツーの人を本気にさせる方法として、>恋する、競争させる、ほめる<ということを言う。
かれは町作りで、このことを言っているが、いまいち納得がいかなかった。文そのものが変だと思う。「恋させる、競争させる、ほめる」なら文としていいと思うが。他の文章から推察すると、恋については、結局好きなことをさせるという意味だ。好きなことをしていればそれは本気になるだろう。しかし、好きなことだけで町づくりが出来るんだろうか。
競争させるやほめるは、どうも上から目線だ。競争よりも共同の楽しさの方が力を発揮するんじゃないかな。

(8)「社会を変えるには、自分が変わることから」と言う主張には賛成である。

(9)この本や「里山資本主義」の趣旨に賛成するが、本流の「マネー資本主義」の在り方を考えねばならない。