若者よ、騙されるな。映画「西部戦線異常なし」を見て

『ネタばれ』

映画「西部戦線異常なし」を見ました。戦争の過酷さを示す映画でした。

読んだ感想は、「若者よ騙されるな」でした。

主人公たちは、学校の先生から祖国ドイツのために兵役に志願せよと宣伝されます。

曰く、「君たちはこの祖国の命だ」「ドイツの鉄の男だ」「敵を撃破する偉大なヒーローになる」「国が滅びるに任せるというのか」「戦争は君たちにとって良い経験なるはずだ」「闘いは美徳である」「女性が軍人に憧れるのは馬鹿だと思うのか」等。

先生は、個人にも働き掛けます。主人公ポールには、「君はやがて素晴らしい詩人となるだろう。しかし今は、祖国が君を欲しがっている。栄光は今始まるのだ」

こうして、少年たちは熱狂のうちに兵隊を志願します。

実際の軍隊は、栄光とはかけ離れたものでした。知っていた郵便屋さんが理不尽な上官になるという軍隊組織。泥の中のほふく前進訓練。・・しかし戦場はもっと過酷です。砲弾の中でひたすら命令を待つ恐怖。気が狂いそうになる学友=戦友も出ます。戦友が次々とけがをしたり死んでいったりします。足を失った戦友の死。戦争の実態を一つの軍靴の持ち主が変わることで表わしています。・・映画は過酷な戦闘シーンを延々と描写します。塹壕戦ですからお互い突撃しあって殺し合います。塹壕に敵兵が飛び込んで来る怖さ。そして殺し合い。

ある時主人公は、塹壕に一人取り残されます。敵が頭上を飛び越えていきます。その怖さ。敵兵の一人が塹壕に落ちてきます。彼は敵兵を刺します。敵兵はすぐには死にません。彼は、瀕死の敵兵に水を飲ませます。やがて敵兵は死にます。主人公は言います。
「神様何故ですか?僕たちはただ生きたかっただけなのに」
「銃と軍服を脱いだら友達になれたのに」

そうなんです。殺さなければ殺されるというのが戦争です。戦争でなければ、異国の若者同士は友達になれます。友達になれなくとも殺し合う必要なんてないんです。若者を、いや国民を戦場にたたせなきゃいいんだと思います。

主人公は、けがをし休暇をとって帰郷します。大人たちは、戦争の行方をゲームのように言います。ここを攻めれば勝てる。こうすりゃいい。・・・彼はひどい違和感を感じます。

母校も訪問します。そこではあの先生が自分より若い生徒を相変わらず扇動しています。

先生から英雄譚を求められた主人公は言います。「戦場は、生きるか死ぬかだけだ」「誰かが死ぬ」「命を犠牲にして祖国のために戦う必要なんてないんだ」「(先生に対して)あなたは、命を捨てろという。しかしあなたは、自分の命を捨てることが出来るのか」
戦争に否定的言辞を表明する主人公に対し、後輩の生徒たちは、主人公を非難します。「ひきょう者」と。

そうです。大人たちは、自分が戦場に出ずに若者を戦場に送ろうとします。・・・ある何らかの目的のために。

「祖国を守るため」「祖国が滅んでいいのか」「日本人を救い出そうとする米艦を守らなくていいのか」「日本のため活躍している米軍を見捨てていいのか」「石油が手に入らなくなっていいのか」

題名を忘れてしまいましたが、近頃読んだ小説の中に「若者には希望があるというが、希望とは、まだ何も持っていないということだ。自分の手にはまだ何もない」と若者が言う一節がありました。

そうなんです。若者の人生はこれからです。つらいこともありましょうが、楽しいこともあるでしょう。まだ何も手にしてないんです。若者は。

60代、70代の中には、集団的自衛権行使賛成の人が結構います。彼らの多くは既に何かを手に入れました。手に入れなくとも人生を生きました。彼らが集団的自衛権を行使したいと思うのは、自分が戦場に立つ可能性が低いからと言うこともあると想像します。それに対し若者は、人生をまだ生きちゃいない。戦争で死んじゃいけない。

若者よ、騙されちゃいけないよ。

誰かは、現代には塹壕戦はないよ、なんて言うかもしれませんがしかし、戦争の殺し殺されるという本質には変わりません。

安倍政権は、集団的自衛権が抑止力を高め、戦争を防止すると盛んに宣伝してますが、私は、これを嘘と思います。

米国の軍事力はダントツです。中国なんか問題じゃありません。軍事費は、中国の4倍です。(2012年、ミリタリーバランス)兵器の差は歴然でしょう。軍事抑止力の点で見れば、米国だけで中国を抑止出来ます。日本の軍事力は必要ありません。理性があれば中国は、米国に戦争なんか仕掛けません。

日本は、米国に基地を提供しています。それは沖縄の、日本の重い負担です。「集団的自衛権を行使しないと米国に守ってもらえない」というなら、基地負担を返上しましょう。「基地提供する。米国の戦争にも参加する」そうしないと守ってもらえないなんて馬鹿みたいです。安保条約は嘘と言うことになります。尖閣は安保適用地域とオバマ大統領は明言したでしょう。安倍政権が、集団的自衛権行使容認の解釈変更をする前です。

騙されてはいけません。

この映画では、何故戦争になるかという話し合いが兵士の間にあります。戦争は、だれの利益になるか、軍事抑止力強化論はだれの利益になるかよく考える必要があります。

若者は、騙されてはいけません。自分の幸せになるかどうかどうかよく考える必要があります。

この映画は、第一次世界大戦のドイツ対英仏の西部戦線を描いています。第一次大戦のそもそもは、セルビアオーストリアの戦争でした。それがドイツ対英仏の戦争になったのは、抑止力の強化のため集団的自衛権(=軍事同盟)を使ったからです。日米安保条約集団的自衛権を付けくわえると軍事同盟そのものです。集団的自衛権が危険なのは、これだけでも明白でしょう。

政権を変えましょう。自公・維新・みんななど集団的自衛権を認める政党を応援しては、戦争の惨禍を再現します。他国民にも自国民にも不幸をもたらします。今の処の最大野党民主党は、分裂しても集団的自衛権行使反対の旗を立ててください。分裂してください。自民党専守防衛を大事に思う人は、自民党から出てください。民主党は、共産・社民・生活と選挙共闘をしてください。集団的自衛権行使は、そのぐらいの大きなことです。

1930年にこの映画が作られました。その後もっとひどい第二次大戦を起こしてしまった人類は、どうして戦争を起こしたのか、よくよく考えなければなりません。