俺の考えは甘かったかなあーTPP参加への賛成

近頃新書で「(株)貧困大国アメリカ」を読んだ。感想は、(1)資本の論理=利益の極大化がどの国にもどの局面にも貫徹するということの再確認、その怖さ、(2)TPPに参加することの怖さであった。
その結果、TPP参加に賛成と言う私の考えはぐらついた。

私は、(1)自由貿易が世界にも日本にも有益という歴史、(2)TPPに参加して(国益に反するなら脱退を前提にであるが)国益を主張すべき、(3)日本の競争力の強い部分(省エネ技術、繊細さ等)を生かして積極的攻勢をすべき、(4)弱い農業部分は、(細心の注意を図ってであるが)、TPP=外圧を使ってでも強化すべき、(5)消費者には安い農産物は得、等と言うことでTPP参加に賛成であった。
しかし、この本を読んで米国の食糧・農業・小売の巨大資本の利益優先の行動原理は強烈で、日本の良さが壊されると思い、TPP参加に恐ろしさを感じた。
それにしても、交渉が秘密裏に進んでいる。どうなっているかよくわからん。日本政府の米国従属姿勢を考えると、ホントのことが、特定秘密法で隠される可能性も高い。沖縄密約のように。そんな心配も頭に浮かんだ。特定秘密法は、廃止すべきだ。

以下にときどき自分が考える材料のために「(株)貧国大国アメリカ」をまとめて置く。

プロローグ 株式会社奴隷農場
低所得者対策=食糧支援制度は、ウオルマート社等の食品業界や薬品・金融業界の貧困ビジネスとなっている。
1章
養鶏業界は巨大資本が生産から流通全てを支配し、中小農場は競争に敗れ激減。農民は
鶏舎施設等で借金地獄に陥り、実態は工場型食肉生産現場の低賃金労働者である。農奴と言ってもいい。
この傾向は、レーガン政権以来の新自由主義で激化した。巨大資本は政権への巨額の献金でこの傾向を進めた。
遺伝子組み換え作物(GM)業界でも同じで、モンサント社は、GM種子とそれに適合する除草剤を販売している。これらはガン等の健康被害が心配される。しかしモンサント社は、研究・行政・マスコミ・住民投票にも手を回し、反対派を抑えている。

2章 巨大な食品ピラミッド
ウォルマートは、小規模小売店群を吸収しただけでなく巨大食品会社も支配下に置く。その安さの根源は、人件費を最低限に抑え、農家
やメーカーへの徹底的なコストカットだ。それは世界規模で展開され、その裏には金融資本が存在する。かれらは政府機関も影響下に置く。2011年成立した食品安全近代化法は、安全を旗印に食品の生産・流通を巨大資本が支配できるよう作用する。中小農家は、つぶれるほかない。巨大な食品ピラミッドは、世界の農業を変えていく。

3章 GM種子が世界を支配する
イラク戦争後米政府は、外資系資本が進出しやすいように、イラクの経済・産業を解体した。モンサント社などは、テキサスA&M大と
連携し、GM小麦を導入した。そしてイラク農民の小麦種を排除し、GM小麦を保護する法令を作った。それを支える考えが「知的財産権保証十いうことだ。
モンサント社は、インドにGM綿花を導入し、それに適合する農薬を導入した。それらはインドに合わずインド農家の経営は崩壊し自殺者が多く出た。それでもGM種子が増え続けるのは、インド富裕層が支持しインド政府を動かすからだ。
アルゼンチンへのGM種子の侵入にはIMFが一役買った。GM大豆には、労働力がいらず、数十万の農民が失業した。ハイチへのGM種子の侵入は、地震被害を利用して行われた。
NAFTA/FTA/TPP等の自由貿易条約は、その国の農業を、多国籍アグリビジネスの活躍の場とし、GM種子を使った輸出用
単一栽培地に変える。それは食糧自給率低下、その国の経済主権、小規模農家の廃業、格差の拡大をもたらす。利益を得るのは多国籍アグリビジネスの株主だ。

4章 切り売りされる公共サービス
米国地方自治体は財政危機に陥っており、警察・消防・公教育が解体されている。そこに民営化という大義で民間企業が入り込む。
そのような地域では、労働権法という労働者の権利を制限する法律を導入し雇用を生み出そうとする。一方生活保障野予算は削減される。
サンデイ・スプリングなど、民間企業が運営する自治体が人気を呼んでいる。この自治体の住民は富裕層である。

5章 政治もマスコミも買ってしまえ
米国立法交流評議会(ALEC)には、米国の州議会議員の三分の一、八十五人の下院議員、14人の元知事、300人の企業代表が所属している。運営費のほとんどは、企業が出しており、州議会議員は、当然企業に有利な法案を作る。
2010年、企業による選挙広告費は無制限という最高裁の判決が出た。この判決は、米国のみならず外資系資本の米国の政策への影響力を強めた。このことを米国民は知らない。大手マスコミが報じないからである。大手マスコミは、これら企業の広告費で潤うからである。

エピローグ
フェイスブックツイッター、知恵・口コミで市民は意思表示すべき。無関心な人々の意識を少しずつ変えていけ。それが1%の富を独占する富裕層に対する99%のやり方だ。


資本の論理(株主利益の極大化)は、結局資本主義のくびを絞めるものではないか。世界の多様性を壊し、世界の生活様式を壊し、富の偏在を極度に進め、自然の生態系を破壊する資本主義は、崩壊し始めたのではないか、この本を読んでそんな気がした。