今日の「自民圧勝か」の報道でがっかりしたので、久しぶりに「男はつらいよ」をビデオで見ました。
「寅次郎と殿様」です。私は、これは傑作と思います。いいですねえ。どたばた喜劇とほろりとした話、この両方楽しめる映画です。
嵐寛寿郎の殿さまぶりが面白い。庶民生活との落差がいいですねえ。冒頭の夢の話から、おふざけ連発。嵐寛寿郎を模した寅の演ずる鞍馬天狗のずっこけぶりからどたばたが始まります。松の廊下を模したおふざけ。水戸黄門を模したおふざけ。こんなどたばたばかりでない、ユーモアもあります。初めの出会いでは寅を追い返そうとする執事(三木のり平)が、映画の最後では、脱走する寅を逃がさないようにする。その対照も面白い。
寅は、殿さまの息子の未亡人(真野響子演ずる鞠子)に恋します。そして、いつもの通り
失恋します。鞠子が職場で新しい恋を得、その人と結婚しようと決意するからです。
その失恋の場面がドラマチックです。
鞠子は、未だ前の夫を思う気持ちがあります。寅は、そんな鞠子をそのまま愛することが出来ると言う。一般的に、それは可能でしょうか。普通の男は、嫉妬に狂わないでしょうか。わかりません。しかし、車寅次郎は、それが出来るだろうと俺は思います。彼は、自分をダメ男と自覚しているから。そして相手の気持ちに寄り添うことが出来る男だと思うからです。前の夫を忘れられない女をそのまま受け入れる、それが愛と知っている寅次郎です。
だから、妹さくらを通じてみんなに披露される寅の言葉「そんな男、ほんとにいるのかなあ」と言う言葉が心を打ちます。勿論寅の言葉には、「自分以外にいないんじゃないか」という意味が隠れており、彼の成就しなかった無上の愛がクローズアップされ、心を打ちます。