いい人生だなあ、いい映画だなあ。ー映画「鉄道員」を見て

何年かぶりで、「鉄道員」をみた。NHKBSプレミアムでの放映である。

幌舞駅長佐藤乙松は、鉄道員の仕事に頑固に業直に従事する。そのためというばかりでもでもないだろうが、生まれたばかりの自分の娘を失い、妻の死に目にも会えない。

彼は、さびれ切った町の、定年を目前に控えた駅長である。家族のない男である。表面的には、さびしい不幸な人生に見える。

しかし彼は幸せ者だ。昔からの友人やその息子が行く末を心配してくれる。駅前の店のおばさんやその養子も心配してくれている。

そして何よりも、何よりも、0歳で死んだ娘が、成長した6・7歳、11歳、17歳の時の姿を見せてくれる。これ以上の幸せなんて、絶対ない。

17歳の高校生になった娘に、乙松は言う、「俺が殺したようなものだ」と言う。娘は言う。「私、幸せだったよ」何と言う優しい会話であろう。

娘は言う「おっかながらないように、別な人のふりしてた」乙松「どこに自分の娘を恐がる父親がいるかい」何と言う優しい会話だろう。

乙松が自分の娘が幽霊となって、自分の前に現れてきているのを悟って、振り向いた瞬間、駅長帽をかぶった娘が敬礼しているあのシーン。何というシーンだろう。僕は涙があふれ出た。

あれは雪の中で死にゆく乙松の末期の夢なのか、現なのか、どちらともとれそうだ。まあ、そんなことはどうでもいいじゃないか。

・・・人の優しさに乾杯。浅田次郎・降旗監督に乾杯。高倉健広末涼子に乾杯。

鉄道員」の載った浅田の文庫本は、傑作ぞろいだ。優しい物語であった。どこかになくしてしまったが、また買ってこよう。

おっとっと、今日は上の娘の誕生日だ。娘を持てた俺も、またいい人生だ。