ヨハン・ガルトウンクさんのインタビューに思う

本日の朝日新聞に、「積極的平和の真意」と題して、ノルウエーの平和学者ヨハンさんの
インタビューが載っていた。彼の主張をまとめ、私の感想を書く

(1)まとめ
a.私の言う「積極平和」と安倍政権の「積極的平和主義」はまったく異なる。「積極平和」は、消極平和=戦争がない状態+貧困・差別もない状態を言う。「積極的平和主義」に基づく安保法制は、米国と一緒に世界中で武力を行使するもので、平和の逆である。それは報復を招き、安全が脅かされる

b.軍縮を唱える日本政府は、紛争解決に後ろ向きで、「9条を守れ」という平和運動も具体策を考えず、9条を[安眠枕]にしている。

c.「安保法制」は、抑止力を高めない。「安保法制」が成立すれば、中国が軍拡を進め東アジアは、かつてない軍拡競争に陥る。

d.北東アジア共同体の創設を提唱する。メンバーは、日・中・台湾・南北朝鮮・極東ロシア。本部は沖縄。モデルはEC。

e.これらの国々は、協力になれていない、共同プロジェクトを通じて良い点を発見し段階的に進めていかばいい。対立する領土、尖 閣・竹島北方領土は、共同管理。

f.日本の中韓と和解に向けたプロセスは不十分。

g.国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄した憲法9条1項を堅持すると国連で表明せよ。各国に9条の採用を呼び掛けよ。これに反する政策はやめて攻撃性の高い武器は手放せ。

h.私は専守防衛のための軍事力は必要という立場で、100%の理想主義者ではない。

i.「イスラム国」の勢いは止まらない。イスラム教徒の理想を言っている面があるから同調者もでる。大きく言えば、西洋の植民地主義で引かれた国境線を解消とする動きの一部だ。西洋の植民地主義に対抗した唯一の国が日本。安倍談話で「日本が国際秩序への挑戦」を言っているが、植民地主義は挑まれて当然。日本が米国との軍事協力を進めれば、植民地主義に加担することになる。

(2)感想
イ.安倍政権の「積極的平和主義」と安保法制の本質を喝破している。この安保法案は戦  争法案という言い方がやはりあてはまる。  (a,c)

ロ.北東アジア共同体は、将来の目標とすればいいだろう。その一プロセスとして共同プロジェクトや日本側からの和解の努力や紛争地の共同管理は、大いに賛成である。(d,e,f)

ハ.平和運動が、具体策を考えず9条を「安眠枕」(笑)にしている、という指摘にはなるほどと思った。具体策を考えてなかったわけではない。たとえば岩波新書小林直樹憲法第9条」。これは当時ある程度の支持を得、社会党という政治勢力の支柱ともなったが、非武装中立の思想であり、自民党の「専守防衛」には、対抗できなかった。
ヨハン氏も専守防衛という思想である。だからこそ、9条1項を宣伝せよといい、2項については触れていない訳である。2項は非武装規定と普通には読めるからである。(g) 
そのヨハン氏も安保法制を批判している。それは、この法制が、いくら専守防衛と言っても実態は専守防衛を逸脱しているからである。
 私は、武装中立自衛隊専守防衛、安保廃棄)で行きつつ、非武装を目指す=集団安全保障体制や北東アジア共同体や国際警察組織へ移行、がよいと思っている。そのため9条2項も残しこれを国家目標とする。はっきりさせるためには、憲法改正しその明確化のため3項を置くのがいいと思う。 現状と目指す目標を区別すべきである。

ニ.iについて。氏の「日本が西洋の植民地主義に対抗した唯一の国」というのは半分しか真実はないと思う。確かに明治維新以後西洋の植民地にならず独立を維持したのは日本(とタイ)である。その意味では、西洋の植民地主義に対抗したと言える。しかし植民地主義に対抗という意味を植民地主義を否定すると言う意味なら、氏の認識は間違いである。なぜなら日本は台湾・朝鮮・満州国植民地主義を実践していったからである。日本は西洋の植民地主義を見習い、東アジアにそれを実践したと言える。
 安倍談話で安倍氏は、戦前の日本を「国際秩序への挑戦」として間違ったこととらえているが、ヨハン氏のいい方では、戦前の日本を肯定するようにもとりうる。「西洋による植民地支配という国際秩序への、日本による植民地支配というやり方で挑戦」と言うべきである。 氏も日本は西洋の植民地にならなかったという意味で言っているのであろう。

も一つ。
 この数世紀の西洋の植民地主義を否定すると言う大きな歴史の流れで「イスラム国」をとらえるべきという考え方は、なるほどと思った。東アジアに植民地主義で臨んだ日本は、それに失敗し、中東には植民地主義で接していない。日米同盟強化は、中東への植民地主義に日本も加担することになる(故に安保法制はダメ)と言う氏の指摘は鋭い。