「護憲派へ 自衛隊は違憲でしょ」という投書についての返事

10月4日朝日新聞声欄に表題の投書が掲載されました。高校生の投書です。
内容は、次のように思います。
(1)憲法9条を素直に読めば自衛隊違憲である。それなのに護憲派からは、違憲と言う声が聞こえない
(2)立憲主義を通すなら、9条改憲か、自衛隊解散になるはずだ
(3)安保法に反対する人は大半が護憲派で、かつ自衛隊が現状のままでいいと考える
人が多数と思われる。それは立憲主義から言えば矛盾である
(4)自分は、自衛隊国防軍と位置付け(改憲する)、安保法には反対と考えている
私みたいな人は、誰に投票したらいいか。

高校生らしい純粋な立論です。若い人が真面目に考えるのはとても良いことと思います。君たちが直接関係することでありますし、日本国民全体の幸不幸に関係すると思いますので。
私も専門家ではありませんが、そして不十分でしょうけど、一人の大人として、あなたの質問に応えようと思います。一つの参考にしてください。

(1)と(2)について、安保法制に反対の、あなたの言う「護憲派」の中にも自衛隊合憲論者はいます。というより多いのだと思います。その理屈は、あとで述べます。一応理屈が立ちます。その立場ですと、自衛隊存続でも立憲主義に反しないと思います。
(3)安保法に反対する人の中には、憲法改正派もいます。憲法改正してから安保法制を成立させないといけないと言う考えです。これは、立憲主義の立場からの反対です。

ですから、安保法制反対派には、
ア、自衛隊がそもそも憲法違反である。(少数?)

イ、自衛隊は、個別的自衛権行使でのみ(=専守防衛)合憲である。今回の安保法制は、集団的自衛権行使も認めるので違憲(多数?)(自衛隊は、合憲的存在だけれど、行動によっては違憲で、できないことがあるという考え、これは安保法制以前の自公政権の考えでもある)

ウ、自衛隊は、安保政策上集団的自衛権も行使できるようにするべきである。しかしそれは、現憲法を改正しないとできないことだ。安倍内閣は、行政の解釈の変更を元に安保法制を作ったのであり、安保法制は、内容的にも方法的にも憲法違反である。(多数?)
という3つがあります。

政党では、多分、社民は、アとウ。生活は、イとウ。共産は、ウとアかイ。民主は、ウとイが主流。集団的自衛権行使容認もいる。自民・公明には、隠れイがいる。維新は、ウとイと集団的自衛権行使容認がいる。以上は、多分ですよ

        

自衛隊合憲論で、安保法制反対派の考えを説明してみます。
確かに9条を素直に読むと、憲法改正して、自衛隊憲法の中に位置づけるか、自衛隊を解散するのが立憲主義を貫くことになるように見えます。一方、自衛隊は合憲だと言う意見があります。これまでの自民党公明党民主党がそうでした。国民の多くも合憲と考えていました。どのような考え方でしょうか?これは、戦後の与野党と国民の苦心の安保政策です。(それを安倍安保はぶち壊している。)

合憲の理屈は、9条2項で禁じている戦力と交戦権は、9条1項で禁じている「国際紛争を解決する手段」としての戦争のための戦力であり、自衛のための戦力は、合憲であると言う理屈でした。そして自衛隊は、自衛のための戦力なので、合憲と言う理屈です。

自衛隊が自衛のための戦力だと言う証明は、装備と運用の面で決まります。装備にもいろんな議論があると思いますが、運用では、自国を攻撃された場合のみ戦う(個別的自衛権)と言うのが原則でした。だから海外派遣は禁止でした。それを専守防衛と言いました。そういう考えを認めますと、自衛隊は合憲となります。

安倍安保法制は、自国が攻撃されていなくとも、戦っている米軍と一緒に戦う(集団的自衛権)と言うことなので、自衛と言えない故、違憲という考えが成り立ちます。憲法の文言で言うと、米軍が他国と戦うのは、国際紛争としての戦争であり、この戦争に参加する自衛隊は、国際紛争としての戦争を禁じている憲法に違反する行動と言うことになります。

自衛隊について合憲か違憲かには、学者の間でも政党の間でも国民の間でも、意見が分かれています。

本当は、違憲立法審査権を持つ裁判所が、合憲か違憲かを決めなけばならないのですが、最終的に合憲か違憲かを決める権力を持つ最高裁が、判断を示していません。いわゆる統治行為論です。自衛隊の存在の是非というような高度な政治的行為は、裁判になじまないと言う理屈です。私は、これを最高裁の仕事放棄だと思います。政治的な行為でも、最高のルールである憲法に合わせてやらなければいけません。憲法に合うか合わないかを、国会や行政に任せては、三権分立になりません。

最高裁が判断しない以上、誰が違憲か合憲かを決めるか、それは結局主権者である国民が決めることになると思います。それは、あなたがおっしゃるように政党を選ぶと言うことによってだと思います。

あなたの場合、「自衛隊国防軍」にと言うのは、個別的自衛権のみ行使できることにするのか、集団的自衛権行使もできるようにするのかで大きく違います。前者であれば、多数解釈によれば、改憲の必要はありません。はっきりさせたいと言うなら、国防軍は、個別的自衛権を行使すると文言を付け加える改憲ということになります。後者の場合、憲法改正が必要です。
あなたはどちらですか。

参考までに私。
あるべき安保政策は、理想=非武装・集団安全保障体制・その他軍事力以外の抑止力を使った政策。ただし、現状では、最後の安心装置として自衛隊による軍事力行使を認める(個別的自衛権のみ=厳密な意味での専守防衛
憲法解釈上では、個別的自衛権行使可能故改憲の必要なしと判断する。
投票について
自公=憲法違反の集団的自衛権を非立憲的手段で認めた故最悪。しかも集団的自衛権は、自分の理想の安保政策と違うので不支持
選挙区では、自公以外勝てるところに投票する。比例区も自公以外が増えるように投票する。

あなたの一判断材料にしてください。