「借金は返そうね!大人!」への私の回答

これは、朝日新聞今年2月24日の声欄に載った、15歳の高校生の投書である。
これに答えなきゃとずっと思いながら、自分にも分からなくて、もう3か月以上もたった。いつまでも答えないのは卑怯なので、無理して答える。(今は、一部しか答えを持っていない)

考えてみれば、この質問は、強烈である。しかし、彼らが借金を創ったわけじゃないのであるから、当たり前の質問ではある。大人はこれに答えなくちゃいけない。食い逃げ(高校生から見れば食い逃げに見えるはずだ)は、許されない。特に政権を握ってきた政党(今の借金を作った政党)や政権を取ろうとしている政党は、答えるべきである。
私も、今の日本を作った大人の一人として答える。

彼(?)彼女(?)(名前から性別不明)の主張は、次のようなものである。

(1)現在の国の1千兆円の借金は、いつ誰がなんのために借りたのか。それでどんな風に良くなったのか、いつ誰が返すのか説明してほしい。
(2)これからこの借金で、どう良くなっていくか説明してくれなきゃ、借金返すの手つだってなんて言わないでほしい。
(3)自分が総理大臣で、1千兆円のお金があったら、子どもにやさしい国を作りたい。

自信はないけど、私の回答を書こうと思う。

(1)について
(A)いつ誰が何のために
ウィキで国債残高の推移を見ると、1990年代初めから激増したことがわかる。具体的には、1991年172兆円(GDPの37%)から2014年885兆円(GDPの181%)に激増している。同じ資料を見ると国債以外の借金も含めると2014年、998兆円とあり、君の言うとおり1000兆円の借金である。
この借金をどんなところに使ってきたか。
ネットで国家予算内訳推移を探索すると、日経新聞がまとめた1997年度〜2015年度の政府予算の内訳推移という帯グラフが見られる。
これから次のことが分かる。
(あ)2000年度を除いていつも社会保障費が支出の一位で、ニ位が国債費(この年度だけ国債費が一位)
(い)社会保障費の割合が増加の傾向
(う)三位が地方交付税で、ここまでの項目の額が大きい
(え)四位がおおむね公共事業関係(年度によって項目の名称がが違うけれど)
(お)その次が、文教・科学振興費(年度によって項目の名称の違いあり)と防衛費で大体同じ程度となっている。
国債費は、過去の借金の返済、地方交付税は、地方自治体への支出である。

「誰が」については、一応「日本という国が」と答えられる。もっと言うと、「このような政策を決めた政権を持った党=政権党=多数派」がということになる。さらに言うと、「こういう政党を選んだ国民の多数」がということになる。

以上をまとめると、日本国(すなわち政権党→すなわち国民の多数派)が、1990年代以降、「社会保障地方自治体への支出、公共事業、文教・科学振興費・防衛費のため借金したと言える。これらの支出項目は、特別なこととは言えないと思うので、「普通の生活」のため借金したと言える。


(B)それでどんなふうに良くなったか
この問を、1990年代初めと現在の比較で、どう良くなったかという問に置き換えて、考えてみる。ただ、なにをしらべるか(無限にある)、それをどう解釈するかは、客観的な答えは難しかろう。だから私の主観で調べ、解釈を述べる。(  )は出所
平均寿命(厚労省): 男 1990年 75 → 2015年 80.5  
           女 1990年 82 → 2015年 87
出生率厚労省):  1989年 1.57 → 2014年 1.42
実質GDP(世界の経済ネタ帳): 1991年 440兆円 → 2015年 530兆円
一人当たり実質GDP(同上) : 1991年 353万円 → 2015年 418万円

2人以上世帯の平均貯蓄額(総務省統計局ホームページ):1991年 1465万 → 2015年 1798
2人以上世帯の平均年収(同上)1991年 719万 → 614
ひとり当たり居住室畳数(同上)1993年 12畳→ 2014年 15
一人当たり肉類年間摂取量(食糧庁):1990年 25キログラム→ 2014年 30キログラム
乗用車保有台数(国交省):1991年 3500万台 → 2015年 6000万台
ケータイ=1990年代は多機能化の時代、2007年〜スマホ時代(ウイキのまとめより)
エアコン普及率(一軒当たり台数)(内閣府消費動向):1991年 70%(2台)→ 2015年 90%(3台)

国富(ウイキの内閣府「国民経済計算」): 1990年 約3200兆円 → 2012年2800兆円
個人資産合計(日銀「資金循環統計」): 1990年 1000兆円 → 2014年 1600兆円
個人資産・世帯主年齢別純資産(平成27年7月〜9月):30代以下、40代、 50代、 60代、 70代以上 
総務省統計局ホームページより割合を計算)       6%    11%  16%  33%  34

大学進学率(文科省学校基本調査):1991年 27% → 2015年 41
年間平均総労働時間(従業員30人以上会社)(厚労省):1990年 2000時間 → 2009年 1780時間
10万人中刑法犯罪発生率(警察庁):1991年 1800人 → 2013年1500
自殺者数(内閣府警察庁):1991年2万1000人 → 2015年2万4000人(2003年 3万4000人がピークで減少し続け)


思いついたものを調べてみた。私は、車保有台数を除いて顕著に良くなったものはないと判断する。一方、少し良くなったものも多いと言えると思う。資料には出していないが、もっと長い経年変化を見ると、戦後から1990年ごろまでに、多くの項目で、生活水準が大きく向上していることが分かる。1990年ごろまでにほぼ現在の生活水準が達成され、そこからさほど生活水準は向上していないと言えそうだ。ただ、平均寿命の伸び、大学進学率の上昇、年間総労働時間の減少、犯罪発生率の低下から、日常生活は、少し向上したと判定する。

まとめ
現在の生活水準は、1990年ごろまでに達成された。その後800兆円の借金をさらに積み上げて、これを維持し、日常生活は少少向上した。

(A)(B)をまとめると、日本国(政権党すなわち国民の多数派)は、1990年初頭までに現在の生活水準を達成し、その後の少しの生活向上はあるけれど、基本的には、それを維持するため、借金を800兆円増やした
これはまあ、私たちが持っている常識そのままで、何の驚きもないことだと思う。

これを、お金だけの観点から見てみよう。簡単のため、20年として見てみよう。厳密な数値ではないが、傾向はわかる。

日本国(以下前述と同じ)は、800兆円借金を増やし、個人資産を600兆円増やしたと言える。この差額の200兆円が、国民全体の生活の維持と少しの向上に使われたと言えると思う。

1年間で考えると(計算の簡単のため20年と考えて)日本国は、毎年40兆円借金して、その金のうちの30兆円を個人資産に移し、残りの10兆円で生活を維持しあるいは少々生活を向上させてきた。このように言えるのじゃないかと思う。

(2)について
この1000兆の借金は、これから返済しなきゃならないお金なので、このお金でこれ以上生活が良くなるとは、言えない。

さらに、1990年代以降、借金を800兆円しても、生活水準が大きく向上したとは言えないので、これ以上の借金も、生活向上にはつながらないだろうと想像する。だから、良くなることはない、精々現状維持と言えるんだと思う。

さて、国民生活の現状を維持する場合、上の10兆円の借金は、必要かと思う。だから個人資産の30兆円の増加に回るお金を減らせばつまりは個人資産の増加を20兆円に減らせば、これ以上の借金を増やさないで、国民全体の生活の現状維持が出来る
個人資産をどういう人が、どのようなことで増やしているかを調べて、30兆円の増加を20兆円の増加に、(経済の破たんを回避しながら)、抑えることを考えればいいことになる。

上の資料では、年齢別で60代以上で70%弱があることが分かる。彼らがどのようにして資産を増やしたか。想像すると、遺産相続、賃金、退職金、資産運用(国債、預貯金、不動産投資、株投資、投資信託)いろいろあろう。同じ高齢者でも生活に困るような人もいる。いろいろな人がいる。若くても一杯お金を持っていいる人もいるだろう。一杯持っている人に毎年増やす分を減らしてもらうのが、一番簡単だ。もらうのは、税金としてもらうことが簡単だ。も一つは、お金持ちへの社会保障の切り捨てという手段だ。

税金には、高所得者への累進課税の強化、資産運用での儲けへの税金強化(現在20%の税金を40%にとか)、(遺産)相続税贈与税への課税強化とか、いろいろ手はある。まとめて富裕層への課税効果(財産税への課税強化)と言っておく。
これを実行するには、このような政策を実施する政党に、多数派を握ってもらうことが一番簡単だ。

逆に言うと、少なくともこの20年、今の日本を作ってきた政党=自民と公明党民主党などでは、同じことの繰り返し=毎年40兆の借金をし、そのうちの10兆円を国民全体の生活維持に充て、残りの30兆円を個人資産増加に使う政策の繰り返しとなる。

これはお金だけで見たことではある。
この20年、「リストラ」、「技術革新」、「インフレを目指せ=デフレ脱却が正しい政策」、「円安にするのが正しい政策」、自由貿易とTPPの是非、金融緩和や財政出動社会保障の充実こそ成長になる、成長政策等、様々言われてきた。政府も評論家も政党も経営者もいろいろ言ってきた。
しかし、お金だけの結果では以上の通りと思う。

まとめ
日本国(政権党=国民の多数)は、1990年代初頭から現在まで、毎年40兆円の借金をして、少々の向上はあるものの、基本的には、国民生活を維持することに10兆円を使い、残り30兆円を高齢者を中心とする個人資産の増加に使った。

以上のように考えますが、どうでしょうか、15歳の高校生君。・・・・高齢者の一人として怒られそうだな。私の立論は、多分間違いも在るし、異論もあるとは思う(それを期待もしてる)


(3)について
あなたは、このお金を子どものために使いたいと言うけれど、このお金はありません。返さなきゃならないお金だと思います。
あなたが総理大臣だったら「子供のために使いたい」と言うことは、「これまで1000兆円も借金しても、子どもが大事にされてこなかった、もっと子供にお金をかけよう」と言う考えだと思います。私も子供にお金をかけるべきと思います。そう言う政策をとる政党を選ぶのが一番簡単です。

さて、回答がなかなかできなかった大きな理由は、(1)の「どうやって返すか」の回答が書けないからでです。これは今も回答を持っていません。分からないのです。がしかし、一人の大人として、何か答えを書かないといけないと思います。それは、一応宿題としておきます。答えには、期待はしないでください。

私の回答は以上です。私の回答は怪しいですので、親や先生にも聞いたらいいでしょう。出来れば各政党に聞くのもいいでしょうね。
私がやったようにネットを繰れば、政府の調査を初め多くの情報が得られます。それを使って自分で考えてみることも大事だと思うのです。
多分多くの学者・評論家が、日本国の借金について、本を書いていると思いますので、本も読んでみたらいいと思います。
友人同士で考えてみるのもいいでしょう。多くの仲間で考えてもいいです。部活を作ってもいいかな。大学なんぞに行かなくたって、調べたり考えたりすればいいと思うのです。勿論大学に行って勉強をするのもいい。ご活躍を祈っています。