私たちは、平和裡に生き延びられるのだろうか、ーNスペ「グレートファミリー」を見て

ビデオに取っておいたNHKスペシャル新映像の世紀第2集「グレートファミリー」を見た。私には知らないことが多くて、面白かった。第2集「グレートファミリー」では、20世紀のアメリカを動かした大資本家たち(財閥)の話を扱っている。以下に感想を書く。

(1)巨大資本の力のすごさ

第一次大戦の処理=ベルサイユ講和条約は、米大統領ウイルソンの意に反し、ドイツへの巨額の賠償を決定した。世界史の受験知識では、ウイルソンの理想主義に対して、老練な英仏の現実主義が、ドイツへの巨額の賠償を決めた、と言うことだが、実は金融王モルガンが動かしたというのだ。モルガン財閥は、戦争中英仏へのお金を貸していて、それを返してもらうのが一番の関心事だからだと言うのだ。この米国大統領もしのぐ資本の力。ドイツへ巨額の賠償金賦課が、ナチスを成長させる土壌の一つになった事を思う時、巨大資本の力のすごさとその盲目性(利潤追求のみで行動)に恐れ入る。

タイタニック号は、モルガン一族の経営する会社の船であった。あの悲劇の後、人命軽視・儲け優先という批判があったが、モルガンはこれを無視し、びくともしなかった。誰も逆らえないのである。

モルガンは関東大震災で困った日本へ巨額のお金を貸したが、その返済が終わったのは、日本の高度成長の時とのことである。(どれほど巨額だったのか!)

(2)巨大資本のしぶとさ

ロックフェラーは、大恐慌で株価暴落のあと、暴落した株を買って損を取り戻していた

デユポンは、第一次大戦の時火薬で儲けて、戦後化学繊維等で儲けて、第二次世界大戦が近づくと再び戦争で儲けた。

ロックフェラー財閥は、世界で慈善事業を展開したが、それを自分の経営に生かしたこと

(3)そのほか初めて知って、面白かったこと

ヘレンケラーがモルガンを批判していたこと。

マックスファクターは、ロシアを追われたユダヤ人で、ハリウッド映画製作で、女優のアラ消しのメークから、化粧品の巨大な会社を作ったこと。

ロシアをのがれたユダヤ人が、発明王エジソンの妨害を避けるため、ハリウッドに行き映画産業を起こしたこと(パラマウント、ワーナー、20世紀フォックス等)

禁酒法は、移民労働者を勤勉にするために、フォードやエジソン等が働きかけた結果成立したこと。

ケインズが、モダンバレーの踊り子の虜になって結婚したこと

ケインズが、グローバルで個人的な資本主義を、知性も美も道徳も善もないと批判したこと

ロックフェラー財閥の基本理念が自由貿易による世界平和」であり、彼のつくった石油製品が標準であり、それゆえスタンダード石油
という名前だと言うこと。

ロックフェラー3代目の創った「世界貿易センタービル」があの9・11テロの標的となったビルであること。
自由貿易とは、資本の世界的搾取という意味もあるのではないか。それがテロを引き起こしているのじゃないか。そんな感想も持った。


(4)モルガンは、世界大恐慌5日前、「何の心配もない。コントロール下にある」と言っていた。
資本主義は、コントロール可能だろうか?リーマンショックを考えると、どこからか、今の知見では分からないかたちで崩壊が起こるのじゃないか。そんな事を思った。

先の巨大な資本主義崩壊(世界恐慌)は、第二次世界大戦引き起こした。民族・国家を頼って生きようとした先進国間の戦争が中心であった。
現在のアメリカのトランプ人気、欧州各国での極右の台頭、英国のEU離脱の動き、中国・ロシアの自己中的行動、安部政権の国家・民族の強調(憲法改正草案、マスコミ、教育支配等)、日本国内の嫌中・韓、ネトウヨ繁殖。世界も日本も戦後70年たち、先進国家間の戦争体験を忘れ始めたのか。

この民族・国家優先主義の世界的蔓延に心配の念が募る。

も一度の資本主義大崩壊の時
「国家・民族に依拠して生きのびよう」(=他国・他民族を虐げても自国民・自民族優先)、とならないだろうか。それは戦争に行きつくんじゃないか。もしそうなれば、それは人類の破滅となるのじゃないか。70年前に比べて、破壊力は格段に大きくなった。核・生物化学兵器、その運搬手段の高度化、テロ、都市化・過密化(テロに対して脆弱)、・・・。そんなことが心配になった。