オバマ大統領の「核兵器先制不使用」政策について

オバマ米大統領が検討している「核兵器先制不使用」宣言に対して、安部首相が反対姿勢を示したと言う報道がありました。それは間違っています。残念なことです。日本は、米国の核兵器先制不使用を応援すべきです。
核兵器は、広島・長崎の被害で分かりますように、非戦闘員まで殺傷するもので、国際法違反のものです。核兵器については、国際司法裁判所も2006年国際法違反という判断をしました。勧告的意見であるので法的拘束力はありませんが、核兵器は、結果的に法的に存在してはならない兵器と認定されました。ですから、当然核兵器を使用することは、違法なわけです。

オバマ大統領が、核兵器の先制使用をしないと宣言するのは、法の支配から言えば当然のことです。違法な核兵器の廃絶への第一歩です。現在中国だけが先制不使用を宣言していますが、米国も先制不使用を宣言すれば、それらを足がかりに、全核保有国の先制不使用が達成できるかもしれません。それは、核兵器を使用しないことへの大きな一歩です。核兵器全廃への第一歩です。日本も核兵器保有国に対して、先制不使用を要求すべきなのです。安倍首相は、その反対の行動をしています。安倍さんは、米国に核兵器先制使用の権利を放棄するなと言っています。法的に使っちゃいけない武器、「先には使わないことにする」と言っている仲間に対して、「先に使わないなんて言うな」と言っていることです悪いことから一歩抜けだそうとしている仲間に、抜け出すなと言っているのと同じことです。やくざな世界から少し足を洗おうとする親分(米国)に子分(日本)が足を洗わないでと言っているようなものです
北朝鮮を含めて、多くの国が違法の核兵器を何故持つのでしょうか。その理屈は、「敵国に核兵器で攻撃された場合、自国も核兵器で反撃する能力を持つ故、敵国に攻撃されない」という安全保障政策と言う理屈です。いわゆる核抑止論です。この理屈で、米国に続いて、ソ連・英国・仏国・中国・インド・パキスタン核兵器保有国が広がりました。イスラエル核兵器を持っていると言われています。北朝鮮も持っています。北朝鮮の場合、「米国に攻撃されたら、核兵器で反撃するぞ、それが自国の安全保障だ」ということでしょう。米国が核兵器を持つ限り、そして使用する可能性がある限り、いくら世界が北朝鮮核兵器を持つことを抑えようと思っても、理屈が立ちません。「やられないように、最強兵器を持つ」という理屈は、米露英仏中印パで成り立つように、北朝鮮にもなり立ちます同様に全ての国に当てはまります。同様に日本にもなり立ちます。日本の核武装保有論者もこの理屈です。

しかし、この核抑止論には、危険があります。相手よりも、より強力な核兵器を持ちたいと思うのは当然です。その結果核兵器保有国間で果てしなく核兵器の増強が図られます。核軍拡競争です。もっともっと怖いのは、相手に反撃される前に全滅させる兵器を持てばよいと言う誘惑です。それを使いたいと言う誘惑です。この誘惑に負ける指導者が出てこないとは言えません。

北朝鮮の立場で考えてみましょう。まず、核先制使用が可能な現在で考えましょう。つまり、自分が攻撃する前に、「米国が核兵器を使う」と北朝鮮が考える場合です。「いつやられるかわからない、自分はおとなしくしておこう」となるか、「いつやられるかわからない、やられる前にやっつける準備をしておこう」となるか、簡単には言えません。核兵器先制不使用に反対する人は、前者のことしか考えてません。後者の場合もありえます。後者になった場合、大変なことになります。米国の核先制使用可能の現在、北朝鮮は、大人しくしていません。核兵器の開発にいそしんでいます。
次に核兵器先制不使用と米国が宣言した場合を考えてみましょう。北朝鮮は「先にやられることはないので、もっと強硬に出よう」となるか、「先にやられることはないので、ある程度のところで妥協しようか」となるか、これも簡単には言えません。先制不使用に反対の人は前者を心配しているのだと思います。さて北朝鮮の強硬な手段とは何か、核開発とミサイル発射でしょう。先制使用可能の現在と同じ強硬手段と思います。となれば、北朝鮮を国際社会のルールに出来るだけ従わせるため、国際社会のルールである「核兵器は、違法」という方向に一歩進める方が得策です。

キューバ危機の時、フルシチョフとケネデイは、相手に先にやられる恐怖に耐えて、妥協することが出来ました。しかし、恐怖に耐えられない指導者でしたらどうでしょう。あの時どちらかが使えば、多く人々が死亡していたでしょう。あのころに比べて、格段に
核兵器の性能のアップした現在、核戦争になったら人類の滅亡かもしれません。

米国の核兵器先制不使用宣言が、世界中の核兵器保有国の先制不使用宣言になれば、核兵器の恐怖や惨禍から数歩遠のくことが出来ます。

世界中が、核兵器全廃条約を結べればいいのですが、現状では無理です。しかし、核先制不使用が核保有国すべてに広まれば、世界人類の平和的生存権確保の大きな成果と言えます。日本政府は、オバマ大統領の核先制不使用宣言を応援すべきです