「ごめんなさい」という墓標 / 沖縄は前線基地 / 楔なて我身や世間に尽くさ

ETV特集境界の家」を見ました。放送時私は見ていなかったのですが、cangael様のブログで紹介されていて興味を持っていました。妻がこの番組を見ていてビデオに撮っていたのを知り、視聴しました。この番組を見て思ったことを書きます。

(1)番組内容とこの番組の主人公の経歴については、cangael様の4月19日付ブログで簡明に紹介されていますのでご覧ください。興味をお持ちの方は、cangael様のブログもぜひご訪問ください。またcangael様の内容とダブル点があることもご容赦ください

(2)福島第一の付近は、今でも23µ㏜という表示がありました。またある廃炉作業員は、「一日10時間拘束時間はあるけれど、働くのは実質一日数分」といってました。どのぐらい高い線量か、恐ろしい。こんな中で働いているのは、事故の責任を感じているからなのでしょう。名嘉さんは言います。「お金がもらえるから行くんだろう、なんて簡単に考えないでください」と。名嘉さんが言う通り、「研究者がいくらいようと現場で働く人がいないと何も進まない」。

(3)印象に残った彼の言葉その1 「ごめんなさい」という墓標を立ててくれ
このドギュメンタリーの主人公の名嘉幸照(なかゆきてる)さんは、沖縄生まれです。タンカーの船員になり、米国に渡りGE(ジェネラルエレクトリック)社の原発技術者としなりました。そして、出来立ての福島第一原発で働きました。原発の保守点検の主任技術者としてです。やがて東電の協力会社東北エンタープライズを作り、富岡に定住しました。
そして原発事故にあいました。
彼は、強制避難させられた友人・知人に会います。その苦しみをひしひしと感じて言います。「家族を壊した」「地域社会を壊した」「悔しい」「申し訳ない」「いくら謝っても謝り切れない」と。そして言います。「私は最高の加害者だ」と。だから、「自分の墓はいらない。『ごめんなさい』という小さな石碑を立てて後ろに自分の名前を書てくれ」といいます。原発事故の罪深さよ。彼は、原発については、「事故の反省に立って、計画作って国民に心の準備が出来たら、原発0にすべきです」といいます。「これ以上の負の遺産はいらない」といいます。
これが誠意ある人だと思います。「一所懸命原発の安全に努力してきて、その結果が皆を不幸にした」と彼は悔います。原発の罪深さよ。
ところが、・・・。
名嘉さんよりも、原発事故の加害責任がもっともっと大きい人がいっぱいいます。東電の歴代経営陣と国です。彼らは、事故の前から津波のことやその結果の被害を知っていました。しかし、お金をケチり、対策を怠りました。国策として原発を推進していた国は、東電に対策を講じるよう指導すべきでした。しかし、そうしませんでした。その無責任な行動が、家庭を壊し、地域を壊し、故郷を壊しました。人が大勢なくなりました。20兆円以上の国民負担を生じさせました。その責任は取るべきです。
ところが東電や国は、その責任を感じている風には思えません。東電は、柏崎の原発再稼働にシャカリキです。安倍政権も、原発再稼働に一生懸命です。なんと不誠実な人たちか。彼らは言います。原発事故は想定外であったと(自分たちに責任はないと)。そうであるなら、今後も想定外の事故が起きるのではないですか。原子力規制委員会は「絶対安全とは言えない」といっているんですよ。それでも再稼働するんですか。それが無責任・不誠実ということですよ

そうですよね〜〜。事故が起きたって、「(震災は)東北で起きてよかった」ですもんね(復興大臣)。やがては、川内で起きてよかった、伊方で起きてよかった、高浜で起きてよかった、柏崎で起きてよかったといえるんですもんね。
(4)印象に残った言葉その2 沖縄は前線基地故人権は認められないのは当たり前
沖縄で反基地運動に携わった名嘉さんは、米国に勇んで留学したそうです。それは、「アメリカは民主主義の国なのに、なぜ沖縄には民主主義がないのか。なぜ人権が認められないのか」と問いただしたかったからだそうです。その問の返答が「我々は沖縄を前線基地と思っている。だから民主主義や人権が認められないのは当然である」ということです。

そうなんだと思います。米国から見れば沖縄は前線基地なんです。沖縄には海兵隊という殴り込み部隊がいます。海軍も空軍もいます。米国のアジア戦略の前線基地なんです。ちと考えてみてください。沖縄ばかりではありません。米国から見れば、日本全体が前線基地なんですよ
このところ緊張の高まっている朝鮮半島で戦争が起きたときのことを考えれば、それは明白です。米軍は、日本にある米軍基地を使い出撃し、補給に帰ってきます。日本は、前線基地なんです。普通の生活している一般人がやられるのは、日本と韓国なんです。bihind JAPANという、トランプ大統領の言葉(拙ブログ本年4月14日)のbihindは、やっぱり「後ろで」なんです。原義通りですよそれを日本政府と日本国民の多くは、日米同盟をありがたがっています。ばかみたいと、私は本気で思ってます。
もともと戦争をしない日本が、もともと戦争をする米国と同盟していることが不自然なんです。

まあ、戦争が起きて何かあれば、これも、「三沢でよかった、嘉手納・普天間でよかった、岩国でよかった」、というつもりなんでしょう。オット、「横須賀でよかった」とも「横田で良かった」ともいうつもりなんでしょう。横須賀を狙った北のへなちょこミサイルは横浜に落下するかもね。まあ官邸は大丈夫でしょう。パックスリーが守るでしょうから。
(5)印象に残った言葉その3 楔(くさび)なて我身(わみ)や世間(しけ)に尽くさ名嘉さんが先祖から言われた言葉です。「家を支える楔のように、自分も社会に役立つ人間になれ」という意味だそうです。先祖のこの教えが身についていて、どんな本よりも、これが行動の基本になっていると名嘉さんは言います。この言葉は、名嘉さんの一家のみの言葉なのでしょうか?沖縄全体で言われる言葉なのでしょうか。私はわかりません。
私は、農耕にクワも使います。鍬が古くなると緩んで使えなくなります。その時、楔を打ち込んで固く締めます。柄と鍬先が中心でしょうけど、楔も大事です。役立っています。ここからこの言葉は、小さくとも、縁の下の力持ちになれ、ということなのかなと想像します。
名嘉さんは、この教えに従って全力で生きます。その結果が、この原発事故だったと嘆きます。まったく、原発の罪深さよ。いや、東電経営陣と国の罪深さよ。

私は、沖縄を思います。沖縄は、日本の安全保障上大切な役目を果たしていると考えられています。でも楔でしょうか。面積では1%もない沖縄は米軍基地の70%以上を引き受けています。鍬本体そのものでしょう。楔のような小ささで鍬本体の働きを担ってます。
昨日安倍政権は、辺野古埋め立てを強行しましたなんという冷たさでしょう。米軍基地が役立つなら、そして迷惑施設なのは明白なので、基地は、日本全体で平等に引き受けるべきでしょう。他の地域で引き受けるのが難しいなら米国に引き取ってもらえばいいのです。海兵隊は機動力が持ち味です。どこにいたっていいのです。米国にいたっていいのです。近頃の朝鮮半島の緊張を見ればわかります。すぐに戦争なんて起きませんよ。危なくなったら、移動すればいいんです。それに海兵隊は、敵の中枢への殴り込み部隊です。専守防衛の日本と合わない軍事力ですよ。軍事抑止力が減っても平等の方が大事でしょう。(詳しくは、拙ブログ2016年7月27日)


名嘉さんは、沖縄からの集団就職の女子中学生の言葉を鮮明に覚えているそうです。まだ沖縄が占領下の時です。この子は、鹿児島の港の税関で、大きな風呂敷を抱え困っていたそうです。そして、彼女は泣きながら沖縄方言で「お母さん、どうして日本人に生んでくれなかったの」といったそうです。これを言う名嘉さんは、今も泣き顔です。この長い長い沖縄差別。
名嘉さんは、福島と沖縄を二つの故郷といいます。この二つの故郷は、日本政府から軽視されています。被害を受けても、あそこあたりでよかったと思われています。日本国民の多くも、自分じゃなくてよかったという意味で、福島でよかった沖縄でよかったと、そう思っているんじゃないですかね。

国民ひとり一人は、何もできませんから、そう思うのもしょうがありません。自分でなくてよかったと思うのも、普通でしょう。他の不幸を、自分でなくてよかったと思う心は非難できません。しかし、政府は、それでは困ります。巨大な金を税金として徴収し、足りない分は借金し、それをどこかに使います。また法律や行政命令で、個人や団体を強制する力(権力)を持つわけですから。


その政府を作るのは、国民ひとり一人です。国民ひとり一人は、福島や沖縄でよかった、と思う政権を作っちゃいけません。粛々と辺野古基地を作るとか、辺野古が唯一とかいう政府を作っちゃいけません。震災は、東北でよかったという政府を作っちゃいけません。国民ひとり一人にはそういう力があります最高裁も手続きの上だけで判断して、沖縄の訴えを却下しています。それは、地方自治自治体構成員の意思を重視して政治をする)と平等原則を軽視しています。こんな最高裁裁判官は、国民審査で、首にしましょう。国民には、そういう力があります。少しは目が覚めるはずです。