与謝野晶子訳「源氏物語」の感想/備忘碌(1)

(1)退職したら、かの有名な「源氏物語」を読んでみようと思ってた。退職後7年経ってようやく今挑戦する。勿論現代語訳である。訳者は、一杯あるようだが、家にあるのは与謝野晶子のみ。文庫本2冊だがものすごい小さな字とすごい量のページである。これだけで圧倒される。果たして読み終えることができるのか。大学時代「戦争と平和」を読んだが、「大きい」と思ったことを覚えているだけで、中身を覚えていない。せっかく源氏を読むのだから、備忘のため、感想を書いておく。

(2)桐壺 光源氏は義母と密通する。その伏線がこの巻に張ってあり、構想力のすごさを感じる。あとで、書き直したのだろうな。

(3)帚木 有名な女性論=雨夜の品定め、よく理解できなかった。源氏の発言は少ない。弟を使って姉への恋情を伝えるなんて、憎い。

(4)空蝉 こんな短い章もあるんだ。空蝉は、源氏を拒否する数少ない女性。

(5)夕顔 はかなくも美しいこの巻の女主人夕顔。光源氏の義弟かつ親友である頭中将のもとカノ。因縁深いし、印象深い話。光源氏の美貌に惹かれた、家付きの亡霊が夕顔を取り殺すということに、妙に納得する。そんなことがあるかもと。源氏が廊下に出ると明かりが消えるというのが俺には怖い。不気味さを醸し出すのがうまい。

(6)若紫   物語の全体に大きな位置を占める巻だと思う。光源氏は、罪を二つおかす義母との密通と幼い女の子(若紫)の略取である。当時の性道徳としても、どうなのであろうか。光源氏は、色きちがいじゃないか。好きだからって愛してるからって、義母を妊娠させていいのか。若紫をかわいいからって、保護し得る自信があるからって、小さい女の子を連れてきて自分の好みの妻に仕立てるなんてやっていいのかい。この小説は、女性作家の作である。理想の男性を描いているはず。やはり性道徳の違いか。それよりも、もっと大きい違いという気もする。全体を読み終わたのちも一度考えてみよう。

(7)末摘花  醜く、心の働きも鈍い女性も、源氏は「この人は、ほかの男には愛されないだろう」と思って、時々通う。贈り物もする。なるほど光源氏は大したものだ。

(8)紅葉賀  源氏と頭中将が宮中で青海波を舞う。作者は、源氏の美しさをこの世のものと思えないほどに描く。作者もきっと酔っている。重大事態が出来する。源氏そっくりの顔をした子を、藤壺が生む。密通の子だ。天皇は疑わない。天皇は、源氏とこの子を同じように愛する。天皇から見れば兄弟なのだ。源氏と藤壺は、思い悩む。「源氏は顔の色も変わる気がして恐ろしくももったいなくも、うれしくも、身に染むようにもいろいろ思って涙がこぼれそうだった」と作者は描写する。恐ろしい小である。世界の古典にもこんな設定の小説があったなあ。当時の皇室・貴族の婚姻関係では、結構あったケースだろうとは思う。公認の場合もある。源氏と藤壺は、秘密の場合。天皇の言葉や作者の地の文で源氏は浮気性でないといっているが、それは怪しい。

自民党憲法改正草案や安倍政権が作った新教育基本法は、歴史や伝統を言うが、源氏物語の時代も頭に入っているのかい?まさか、光源氏のようなのが男子の教育目標とでもいうのじゃあるまいな(笑)どうとでも解釈できる言葉を憲法や法令に入れるべきでない。