前川氏への圧力、「日の名残り」感想

今夜NHKニュースを見てびっくりした。また「ざわっ」とした。
文科省が、前川氏の中学校での講演会内容を報告するよう、教育委員会に要請したそうだ。NHKのニュースによると、教育基本法違反の疑いがあるそうだ。不当な教育支配に当たる可能性があるという。異常事態とNHKは言っている。文科省は、教育委員会に要請すること自身がおかしいことである。

これを許しては、教育の自由が損なわれる。教育は、官僚や政権のものではない。これは、文科省の一課長補佐の判断でできることではない。官僚はやらない可能性が高い。ということは、政権の圧力がある可能性は高い。野党は、国会でも、文科省へのヒヤリングでも厳しく追及してほしい。この行為には、官僚の反乱への復讐または見せしめというにおいがプンプンしている。課長補佐の後ろには、政治家がいそうだ。NHKがここまで踏み込んだのだから、他のマスコミもぜひ取り上げてほしい。

・・・・本日読んだイシグロ作品の感想・・・

イシグロ作品に感銘を受けて、これを読んだが、大した刺激も感動も受けなかった。それは、この小説が普遍的なものを、あまり含まないからだと思う。この小説は、20世紀の前半の英国貴族に仕えた執事の誇りを描いている。この英国貴族は、欧米外交に影響力を持った人物であるが、ナチスに協力的で評価を下げる。執事の行動基準は、唯一、主人にどれだけ奉仕できるかである。だから彼の仕事の価値は、客観的には低くなる。哀れなものである。これで連想したのが、21世紀のわが日本の官僚である。ご主人様を忖度するのは、この英国執事と同じじゃないか。主人は、国民なんだけどねえ。

哀れといえば、主人公の恋愛である。女中頭は、彼への愛を表わしている。彼はそれを知ってか知らずか、執事という殻から出ない。20年後彼女に会いに行って、その愛を確認する。会いに行くのも仕事を理由に、だ。これが、20世紀の英国執事だろうと納得した。イシグロは、典型的な英国の貴族と執事を表現できたが、これで世界の人に感動を与えるのは難しいと感じた。

ただ、イシグロは、英国のある時代のある仕事の人間を、きっちり文章に冷凍保存したとは言える。

また見ようによっては、イシグロは、英国の貴族社会・執事を皮肉ったともいえる。