相馬市玉野のメガソーラ発電反対運動の現在

相馬市玉野のスゲカリ地区の人たちが、太陽光発電の建設阻止に立ち上がって1年が過ぎました。

昨日、玉野に新しくできた看板を見に行きました。


スゲカリ地区と言っても、軒の家しかありません。そのうちで積極的に反対運動をしているのは2軒、多くて3軒です。この看板は、積極的に反対運動をしているお二人の手作りです。手作りのいい味が出ています

板を買ってきて、ペンキを塗って黄色い下地を作り、そこにバランスを考え、定規で線を引いて文字を書いたのだそうです。どうですか、見事なものでしょう。(と言っても私は何の手伝いもしてませんもっとも図工1や2ばかりだった私が手伝えば、ひどいことになったと思います。)。数万円かかったとのことです。

実は6月24日にできる予定だったのですが、作成に手間取り、なんと、私が行ったちょうどその時出来上がったのだそうです。(私はとっくにできているだろうと思っていきました)ですから現場にお二人がいました。「看板と一緒に写真を」といったのですが、「恥ずかしい」とのことで、看板だけとなりました。

彼等も、太陽光発電そのものに反対しているのではなく、森林を伐採し山崩して作る太陽光発電に反対しているのです。それが、「大きく山を壊す」という言葉にあらわれています。


看板にある相馬の水と自然を守る会という名前には、玉野を水源とする宇多川が貫流する相馬の町全体を守ろうという考えが込められています。

会社は初め230haの規模で作る計画でしたが、その計画がひどくずさんで、諸方面から文句が出て、現在会社は、150haに計画を縮小しています。150ヘクタールのうち、パネル設置は約100haです。そのほかは、残地森林・砂防ダム等です。それでも100ヘクタール以上の山林を伐採し、表土を剥げば、中下流での洪水、水源の汚染が心配されます。ましてや、玉野は福島第一原発の北西に当たり、放射能汚染で全村避難した飯館村のすぐ北隣です。工事中の放射能の拡散も心配されます。

樹木を伐採すれば、宇多川を通して松川浦や太平洋に流れる森の栄養分が減ります。漁業に影響が出るでしょう。

この本の冒頭は、「漁民は山をみていた。海から真剣に山を見ていた。海から見える山は、漁民にとって命であった」という印象的な文章で始まります。畠山重篤さんは、ご存知の通り、宮城県気仙沼の牡蠣漁師です。畠山さんたちは、海が生きていくためには山が大事だということに気づき、気仙沼湾に流れ込む川の上流に植林をしていきます。海と山は有機的にも生活的にもつながっていたことがよくわかる本でした。

私たちも植林まではいかなくとも、松川浦や沿岸漁業を守るため、森林伐採は防がなければなりません。


相馬市中心部を流れる宇多川です。今年の冬珍しく雪が降った時の写真です。遠くに見える山並みが玉野です。あの山から流れ出た水が宇多川となり松川浦に流れ込みます。

スゲカリ地区の反対派は、玉野の部落でもごく少数派です。前にも言いましたが、玉野部落は高齢化の進む典型的な中山間地で、会社に土地を貸して手に入る賃貸料は魅力です。ですから反対派に対して、会社に土地を貸す地権者は、冷たい目で見ています。いやがらせが起きないか心配です。

初めに建てた小さな看板です。この道路を登った一番上に、30年前ゴルフ場の土地買収に来た人に対して「金なんぞ要らね。生活できるだけで充分だ」といったおじいさん(93歳)の家があります。(拙ブログ2017年12月「私は何を残すか」参照)その息子さんが反対派のリーダーの一人です。但し、この先は、この見えてる家の他2軒しかありません。

この道路は、建設しようとしている会社にとっても、反対派にとっても死命を制する重要な道路です。ここが長さ4キロメートル近くになる太陽光建設予定地の中心です。ここから会社は、工事車両を入れたいわけです。これは、それをけん制しようという看板です。


会社と言いますのは、合同会社相馬伊達太陽光発電所という資本金100万円の会社です。そのHPを見ますと代表は麦島善光となっており、麦島氏は、資本金5億、10社を束ねるZENホールディングスの会長だった人です。ですから、この合同会社の後ろには巨大資本がついているわけです。

さらに地元住民に対する今年1月の説明会では、この合同会社から、ビジネスパートナーとしてトタルという巨大資本が共同事業者についたとの説明があったそうです。実際、トタルがどの程度の共同事業者かわかりません。ウイキペディアで見ますと、トタルは石油・ガス関連の巨大な多国籍企業で、近時再生可能エネルギーにも進出しています。そこから見ますと、共同事業者に名乗りを上げたというのは、まんざら嘘でもなさそうです。

しかし私たちは、ZENホールディングスとかトタルとかの巨大資本がバックに控えるというと、かえってうさん臭さを感じます。名前を聞いたような企業がこの発電事業に名乗りを上げてないからです。

というのは、相馬市磯部で昨年から営業を開始した太陽光発電所は、九電工オリックス・ベルテクノエナジー等々聞いたことのある会社の共同事業です。今飯館で建設中の太陽光発電は、NTT関連企業の事業です。南相馬市原町太陽光発電は、東北電力の事業です。

このいずれの発電所も、山を削って造られたものではありません。津波原発事故で荒廃した田畑の利用です。その意味で、玉野のスゲカリ地区の太陽光発電は、性質が違います。

玉野の太陽光発電は、
現在、災害防止・景観・水資源・生態系維持・温暖化防止等に役立っている山林=自然を破壊して造る自然エネルギーなのですから

但し、私個人は、磯部などの太陽光パネルが20年後(営業年数20年というのが多いようです)どうなるか心配です。20年後きちんと撤去する契約なのでしょうね。廃墟になって放置にされないかと心配してます。

現在利用できない土地の利用でも、今さえよければ、では困ります。

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私も含めた反対派は、昨年来、知人、市役所、水利組合、地元民間団体、市会議員へ玉野の大規模太陽光発電の危険性を訴えてきました。

今年7月、相馬市民の会という地元の民間団体が、この玉野の大規模発電のことを取り上げてくれました。この会は、30年前の玉野のゴルフ場や近時の隣接する丸森町産廃処理場設置に、強固に反対し阻止した素晴らしい実績を持つ団体です。

彼等は、「相馬市民の会だより」という会報で、玉野の太陽光発電についての情報を市民に提供してくれました。

これがその会報です。この会報はなんと、市政だよりと一緒に相馬市の全戸に配布されました。同会は「問題点を指摘して、みんなで考えよう」というスタンスですけれど、まずは知ってもらうことが大切です。反対派にとっては、ありがたいことです。


麦島氏が持つ土地は私有地です。原則として私有地の利用はその個人の自由です。環境に影響がなければ、県も相馬市も許可せざるを得ません。環境影響評価はすでに昨年の4月に終わっています。(私は昨年の夏このことを知りました。)なかなかこの計画を阻止するのは難しい点があります。

それでも「自然を破壊して自然エネルギーを造る」というのはどうにも変です。

この土地は、ゴルフ場予定地でして30年前買収に5億円が投下されたそうです。バブル崩壊によってゴルフ場は、建設中止となり、転売が続き、最終的に麦島氏が千万円で手に入れたものです。

思えば、
ゴルフ場も、太陽光発電基地も長い目で見れば瞬時のことです。森林は永遠です。瞬時が永遠を壊してはなりません。私もあきらめず反対していくつもりです。