10月からの消費税増税は、台風被害、即位関連、ラグビーの話題等で国民の頭から飛んでしまいました。しかし消費税を含む税制は、全国民の生活に長く深い影響を与えますので、しっかり考えるべきことです。
私が考えたことは以下のことです。長くなりますので、前もってまとめておきます。
興味がありましたら、お付き合いください。(言うまでもないことですが、私はど素人ですので間違いがあると思います。ご容赦ください。)
(1)消費税減税を民主主義を取り戻すきっかけにしよう。
(2)消費税は不公平な税制である。
(3)この30年の租税政策(所得税最高税率軽減、法人税軽減、消費税増税)は、経済成長をもたらさず、国家財政を悪化させ、国家の借金を増やし、格差を拡大した、間違った政策であった。まずは、元に戻すべきである。
(4)・(5)「消費税を5%に軽減」は、「所得税の累進性を元に戻す」、「所得税の総合課税制」、「法人税を半分元に戻す」、「相続税を全段階50%に増税」で、悪影響なしに達成できる。
(6)(7)(8)少子高齢化進展に伴う社会保障の維持、国家の借金返済、経済発展のため、消費税7%、相続税全段階70%にすべき(これを、「ラッキー7」政策と称す)
この税制は、富裕層への重税政策です。しかし、この30年国の政策で日本の富が富裕層へ集中したのも事実で、またそれが良い結果をもたらさなかったのも事実ですので、野党は覚悟を決めてこれまでの政策の逆を提唱すべきです。勿論支出の面も含めてです。もしそれを担うのが自民党であっても(無理でしょうけど)私は支持します。
(1)消費税減税を、「政治を国民に取り戻す」きっかけにしよう。
この10月から消費税が10%に上がりました。
こう書くことに、どなたも違和感を持たないでしょう。私もそうです。しかし、落ち着いて考えますと、この言い方はおかしいのです。
消費税が10%になったのではなくて、「10%にした」または「10%にされた」が正確な言い方でしょう。「10%になった」という言い方は、何か自然現象のような言い方です。考えてみれば、こんな言い方は日常良くあります。
言うまでもなく消費税増税は、自然現象ではなく、10%にしたのは、日本政府であり、究極的には、その政府を選んでいる日本国民なわけです。消費税増税に賛成な人は、10%にしたというのが正確な言い方でしょうし、反対の人は、されたというべきです。
「・・・になった」という言い方には、人為的に決めたこと、起こしたことを自然現象のように考える日本人の心性があります。「戦争になった」「原発事故が起こった」「地球温暖化が進んだ」「安倍政治の下、ファッショ化が進んだ」「日米同盟だから、○○だ」なんて言い方も、人為的なことを、人為を超えた自然現象のように考えている例証です。これは日本人の、「お上のすることはやむなし」や「長い物には巻かれろ」という心性にも通底することでしょう。
私は、社会の在り方は、一人一人の判断・行動の積み重なりで決まると考えています。
確かに、戦争、原発、地球温暖化、社会のファッショ化、日米安保体制というような大きなことは、複雑な巨大なもので、理解が難しいことです。個々人の想いや努力を超えるものとも思います。何か個人の抗えないものと見えるのも確かです。また原発や社会のファッショ化や日米安保体制などと自分との関係を見つけるのも難しいのも確かです。ですから、これらについて「・・・・になった」という言い方は、やむを得ぬと思います。
しかし一方で、これら複雑で巨大なものも、個々人の考えや行動の総体が作ったものであることも間違いありません。ですから、複雑で巨大なことも、個々人が真剣に考え行動すれば、そしてそういう人が多くなれば、より良い方向に行くと思っています。
さて本題です。
戦争や原発、地球温暖化などに比べ、消費税増税は身近なものであり、自分の生活に直接関係します。ですから、この消費税増税問題は、個々人が政治や社会を考え、参加し、社会を変える良いチャンスと思います。
この意味で、先日朝日論壇に載った、山本太郎の「消費税をあげることができるなら、下げることもできる」という発言は、真実をついた発言と思います。彼は消費税全廃を目標に、まずは5%に戻すということを提唱しているようですが、5%はともかくとして、ほかの野党もこれに乗ってほしいと思います。そしてこの機会に、多くの国民が野党を応援して、消費税減税を実現出来たらいいなと思ってます。
もし減税ができれば、政治を国民に戻せるきっけになります。我々のことは、我々が決めるという民主主義を実感できるでしょう。
ただ消費税減税には代替財源の確保は、絶対必要です。山本は、代替財源に国債増発も考えているようですが、それは後代へのつけを増やすことで、われらがやってはいけないことだと思います。
国債以外の代替財源を探す中で、消費税を5%にはできず、6%や8%になっても良いと、私は思っています。その辺を消費税減税を目指す野党間でプロジェクトチームを作り、国民に提示してほしいのです。
(2)消費税率は、低い方が良い
私は、消費税の性格を他の税制に比べて不公平な税制と考えています。例えば国民年金だけで生活している人でも(年収は多くて一人70万円前後)、何らかの消費をします。小学生の消費にさえ、税金がかかります。
一方、消費税以外の主要な国税であるA所得税やB法人税やC相続税は、次のように、貧乏な人や会社に配慮してます。
A 年収の低い人、すなわち、給料のみ収入の人だと103万円以下課税無し、65歳以下で年金のみの収入ですと、108万円以下課税なし
B 赤字の会社は、非課税
C 大きな資産のない人(例えば相続人3人だと4800万以下非課税)
所得税・法人税・相続税は、収入の少ない人・会社には課税ありません。消費税は、貧乏人からも取ります。この点で不公平で、悪税と思います。故に私は、原則できるだけ消費税率は低くすべきと考えています。
(3)この30年の税制の政策は間違いであった。
下の税収の年次推移は、良く紹介されるグラフです。これはやはり、租税制度を考えるのには大事なグラフでしょう。財務省の作成したグラフです。
棒グラフを見ますと、消費税が導入された平成元年とその30年後の令和元年(予算)
は、ほぼ同じくらいの税収です(60兆円前後)しかし税収の内訳は違います。所得税と法人税が減少し、消費税が増加しています。所得税と法人税の減少を消費税が補充している と一応いえそうです。
・・・・・・
今年の各税の税率を、1988年(昭和63年)と比較している資料がありましたので、お借りして紹介しますと、
2019年【各種税率】
1988年比
(「税率」推移を図解 ニッポンの数字より )
法人税・所得税・相続税の税率を軒並み減少しています。所得税の最低税率も約10%から5%に減らしています。消費税だけを 0→10%と増やしています。
結局、この30年日本政府の財政政策(のうちの、租税政策)は、
超貧乏人まで含めた国民全員の税負担(消費税)で、お金持ち・強者を優遇してきた(所得税・住民税最高税率減、相続税最高税率減、法人税減)といえると思います。
この政策の理由付けもいろいろあるでしょう。それらは結局、経済成長のため(経済成長→結局全国民の利益をもたらす)というものでしょう。
例えば、「所得税の高税率で高額所得者の勤労意欲をそぐのは、経済成長にマイナス」というような理由です。「法人税が高いと企業が日本から逃げ出す」とか「企業の競争力をそぐ」とかの理由です。これってホントでしょうか?
確かに、この政策で、経済成長が順調であれば、たとえ税率を下げても、法人税も所得税も税収が上がるはずです。しかし、この30年経済成長は、大して出来ませんでした。いわゆる失われた30年です。税収も伸びませんでした。それゆえ借金を増やすことで、何とか国民の生活を維持するしかありませんでした。それは、後世代への負担押し付けでの解決策でした。
つまりは、この30年来の財政政策(のうちの租税政策)は失敗であったといえます。
ですから、これと逆の租税政策をしてみたらどうでしょう。消費税減税、法人税・所得税・相続税増税というやり方です。経済成長できるかもしれません。
(私は、日本のかつての経済成長の大きな要因は、人口ボーナス(若い安い勤勉な多量の労働力=団塊世代とその前後の存在)だと思っています。故に、この逆の租税政策でも、めぼしい経済成長は無理じゃないのかなと思っています。まあ、めぼしくなくとも成長が望めるかもしれません)
高い成長が望めなくとも、この逆の租税政策は、格差を縮小させるのは間違いありません。
豊な所からいただき、貧乏な方へ回すという本来あるべき社会の姿に一歩近づくと思います。(家族・部族・地域社会・国家・国際社会等、人の作る社会は、人類が生き延びるための不可欠の組織で、その本質は何らかの相互協力・扶助と考えています)
(4)消費税5%にするための補填財源を考える(新規国債発行は考えない)
平成29年度政府決算の消費税収入は、17.5兆円。国税消費税の7%で割ると、1%で2.5兆円。地方消費税1%分を足すと、1%で2.75≒3兆円が消費税収入。2.75×5=13.5兆円。つまり、消費税を5%にするためには、13.5兆円が必要ということになります。これを、所得税増税、法人税増税、相続税増税で代替することを考えます。
これは、実に様々なシミュレーションができるでしょう。それは私にはできません。私は超大雑把に、かつての「国税所得税・最高税率60%時代」に戻してみることで考えます。
甲。上の税収年次推移を見てみましょう。景気の動向で所得税は大きく変わりますので、税収総額がほぼ同じ年で比較していきます。
税収総額が60兆円と現在とほぼ同じ平成2年・3年の所得税は、26兆円、今年令和元年の所得税見込みは、19.9兆円。約6兆円減少しました。ここだけ見ると、元に戻せば6兆円の増税(消費税2%分)という風に考えていきます。
同じく平成元年と平成28年(税収総額55兆円)では、所得税は約4兆円の減少、
同じく昭和62年と平成25年(税収総額47兆)では、所得税は、約2兆円の減少。
同じく昭和63年と平成19年(税収総額51兆)では、所得税は、約2兆円の減少。
つまり、単純に最高所得税率60%時代の所得税制に戻すと2~6兆円の増収になります。(これは、最高税率60%時代に戻しても2~6兆円の増収にしかならない、ともいえます。)この増収を、安全策をとって単純に3兆円と考えます。つまり、「最高税率60%時代に戻す」と3兆円増収(消費税補填財源3兆円で)で、消費税9%にはできそうです。
乙。総合課税制すればどのくらいの増収になるか。
所得税には、様々あります。財務省資料をコピーしますと、以下のようになります。
種類 | 概要 | 課税方法 | |
---|---|---|---|
事業所得 (営業等・農業) |
商・工業や漁業、農業、自由職業などの自営業から生ずる所得 | 総合 | |
事業規模で行う、株式等を譲渡したことによる所得や先物取引に係る所得 | 申告分離 | ||
不動産所得 | 土地や建物、船舶や航空機などの貸付けから生ずる所得 | 総合 | |
利子所得 | 公社債や預貯金の利子などの所得 | 源泉分離 | |
国外で支払われる預金等の利子などの所得 | 総合 | ||
配当所得
※配当所得には確定申告不要制度があります |
法人から受ける剰余金の配当、公募株式等証券投資信託の収益の分配などの所得 ※申告分離課税を選択したものを除く。 |
総合 | |
上場株式等に係る配当等、公募株式等証券投資信託の収益の分配などで申告分離課税を選択したものの所得 | 申告分離 | ||
特定目的信託の社債的受益権の収益の分配などの所得 | 源泉分離 | ||
給与所得 | 俸給や給料、賃金、賞与、歳費などの所得 | 総合 | |
雑所得 | 公的 年金等 |
国民年金、厚生年金、確定給付企業年金、確定拠出企業年金、恩給、一定の外国年金などの所得 | |
その他 | 原稿料や講演料、生命保険の年金など他の所得に当てはまらない所得 | ||
業(事業規模を除く。)として行う、株式等を譲渡したことによる所得や先物取引に係る所得 | 申告分離 | ||
公社債の償還差益のうち、一定の割引債の償還差益などの所得 | 源泉分離 | ||
譲渡所得 | ゴルフ会員権や金地金、機械などを譲渡したことによる所得 | 総合 | |
※ 株式等の譲渡については事業所得、雑所得となるものを除く |
申告分離 | ||
一時所得 | 生命保険の一時金、賞金や懸賞当せん金などの所得 | 総合 | |
保険・共済期間が5年以下の一定の一時払養老保険や一時払損害保険の所得など | 源泉分離 | ||
山林所得 | 所有期間が5年を超える山林(立木)を伐採して譲渡したことなどによる所得 | 申告分離 | |
退職所得 | 退職金、一時恩給、確定給付企業年金法及び確定拠出年金法による一時払の老齢給付金などの所得 |
申告分離・源泉分離が結構多いでしょう。
これらを総合課税にすれば税収は原則増えます。表の課税方法にある総合課税とは、いろんな所得をまとめたものに課税します。故に所得は増えます。総合課税にすれば、所得税は累進性ですので、税収は原則増加します。では、どのくらい税収が増えるか、多くの計算が必要であり、私の力ではこれにこたえることができません。
(総合課税にして税収が減る場合もあります。私は退職したころ退職金のうち500万円を株式売買に投資して1年で100万円儲けた時があります。次の年には100万円損しましたが。(笑)この時には、年金150万円への課税は5%で、「株式売買の儲け」へは、20%の課税です。これを総合課税にしますと、250万への課税ですから、5%か10%の課税です。払う税金が減ります=国家の税収は減ります。このように簡単ではありません。けれど基本的には税収増になるのは自明でしょう)
そこで専門家の意見を参考に見てみます。
「富裕層への課税強化で税収8兆円増収に。浦野教授が試算 」(題目のみで中味の引用できませんでした。彼の試算は、総合累進課税制にしたら8兆円増収という内容です)
浦野教授の説が正しいかどうかは分かりません。まあ、話半分以下として3兆円増収になるとすると、消費税はここまでで8%にできます。
(3)株式譲渡益増税 (参考)
分離課税のままでも、株式譲渡益について現在の20%課税(1兆円税収あり)を40%にすると単純に、1兆円の増収となります。(平成27年度で計算しました)
法人税 実効税率は、1988年比ですと、マイナス21.81%とあります。法人実効税率とは、法人にかかる様々な税の合算の、所得に対する割合です。
つまり、1988年には、法人は、所得の(現在の29.7%+差の21.8%)≒50%の税を払っていたわけです。法人税は法人所得にかかるものですので、その年所得のない会社等は、払いません。儲けのある会社等からいただきます。
法人実効税率を現在の30%から40%に上げるとどのくらいの税収になるでしょうか。令和元年が13兆円ですので、13兆÷29.7×40≒17.5兆円となります。
ただ法人実効税率には法人地方税もありますので、国税収入は減少します。そこで、国税収入を16兆円と考えますと3兆円の増収です。消費税を1%下げることができます。消費税はここまでで7%となります。(もし、現在の税率約30%を1988年の実効税率50%としますと、22兆円の税収となり、地方税の分をひいて国税分を19兆としますと、19マイナス13=6兆円の増収となります。これで消費税を2%下げることができます。1988年段階の実効税率50%に戻すと、消費税を6%に下げることができます。)
相続税の合計課税価格階級別の課税状況等(平成29年分)
合計課税価格 階級区分 |
件数 | 納付税額 | 平均 課税価格 (a) |
平均 納付税額 (b) |
負担割合 (b)/(a) |
||
---|---|---|---|---|---|---|---|
件数 | 累積割合 | 税額 | 累積割合 | ||||
件 | % | 億円 | % | 万円 | 万円 | % | |
~5千万円 | 10,189 | 9.1 | 64 | 0.3 | 4,438 | 63 | 1.4 |
~1億円 | 56,180 | 59.4 | 1,392 | 7.2 | 7,114 | 248 | 3.5 |
~2億円 | 29,538 | 85.8 | 3,290 | 23.5 | 13,703 | 1,114 | 8.1 |
~3億円 | 7,782 | 92.8 | 2,428 | 35.5 | 24,077 | 3,119 | 13.0 |
~5億円 | 4,766 | 97.1 | 3,146 | 51.1 | 37,739 | 6,600 | 17.5 |
~7億円 | 1,575 | 98.5 | 2,024 | 61.2 | 58,687 | 12,851 | 21.9 |
~10億円 | 872 | 99.3 | 1,790 | 70.0 | 82,755 | 20,525 | 24.8 |
~20億円 | 632 | 99.8 | 2,419 | 82.0 | 133,415 | 38,272 | 28.7 |
~100億円 | 178 | 99.9 | 2,000 | 91.9 | 308,390 | 112,339 | 36.4 |
100億円超 | 16 | 100.0 | 1,633 | 100.0 | 2,384,419 | 1,020,581 | 42.8 |
合計 | 111,728 | 20,185 | 13,952 | 1,807 |
(ばんざーい、やっとやっとこの資料をコピーできた。何時間かかったことか)
さて、相続税100%で考えてみましょう。どのくらい税収が増えるのか計算してみます。ただし、 合計課税金額とは、すでに各段階の控除額をひいた金額で、控除額は相続人の手元に残ります。その意味での100%です。
計算方法は簡単です。例えば100億円超の合計課税価格の場合、納付税額が1633億円で、これが負担割合42.8%ですので、負担割合を100%としますと、
1633億円÷42.8×100=3815億円となります。5千万円以下ですと、64億円が1.4%ですので、これを100%にしますと、64億÷1.4×100=4571億円となります。
これらをそれぞれ計算して合計しますと、13兆5182億円!!となります。現在の控除額をひいて、(遺族に残し)、残りを徴収しますと13.5兆円となります。つまり11.5兆円の増収です。
相続税100%というと、遺族に全く残らないように思いますが、それは違います。すべての相続に対して、基礎控除があります。3000万円+相続人1名につき600万円は、遺族の手元に残ります。
さらに高額納税者には、控除があります。例えば6億円超の人すべてに、7000万円の控除、つまり手元にのこるお金があります。勿論控除もなしの100%もあると思いますが、それでは相続行為自体がないという風に考えます。
相続税を一律50%にしますと、単純計算で5.7兆円すなわち消費税2%弱分になります。
<消費税5%にするための代替税についてのまとめ>
所得税最高税率60%時代に戻すと消費税1%軽減可能、所得税を総合課税制にすると1%軽減可能、法人税実効税率を40%にすると1%軽減可能、相続税を全所得段階で50%課税にすると消費税2%軽減可能となります。これで消費税5%は実現します。増税で得る税収は、所得も法人収益も経済の動向に大きく左右されますので、いずれも少なめに考えています。相続税50%課税は、消費税2%に7千億円ほど足りませんが、相殺できるでしょう。高齢の死亡数は増加が見込まれますので(笑)その意味でも7千億円なんてクリアーできるでしょう。
(5)消費税を5%減税にした場合の代替増税の経済的影響について考える。
所得税・法人税・相続税の増税が、経済的に悪影響が大きければ、消費税の減税の意味は半減します。そこで、これら3税の増税の影響を考えてみます。
A.所得税増税(最高税率60%時代へ戻す)の影響・・・最高税率を下げる理由の一つ、「高所得者の労働意欲をそぐ」というのは、ホントじゃないと思います。事業をやっている人やサラリーマン(社長も含めて)や不動産投資や株式投資者が最高税率が高すぎるので稼ぐ意欲をなくすとは思えません。
また、所得が多い人が、多く消費する故(→そのため経済成長に貢献)所得の多い人の税を増やすべきでないという説も同意できません。金持ちもそんなにそんなに消費は出来ません。所得の多い人は、余剰を貯蓄や投資にまわしていると思います。貧困層・中間層の方が、割合としては、消費が多いのは自明と思います。
また高所得者の海外脱出の心配もありますが、この日本で高所得を得ているわけですので、脱出は少ないでしょう。高所得の事業者・サラリーマンの脱出は考えにくいです。影響は小さいと思います。
一方で格差拡大は明らかな事実です。格差縮小のため最高税率を高くするのは良いと思います。故に貧困層・中間層の手元にお金がより多く残る税制の方が良いと思います。
(具体的には最高税率60%時代の階層別人数と課税率表から考える必要があります。所得税の最高税率を下げるころ、所得税も大衆課税の性格を強くしたと記憶しています。)
以上から、所得税の最高税率60%時代に戻す方向で良いと思います。故に消費税9%はOKです。
Å所得税の総合課税制導入について
特に経済に影響があるようには思えません。高額所得者の勤労意欲低下、消費低下、海外脱出は、Aで考えたよりも影響がないと思います。
反対者の理屈は、政府により自分のプライバシーが知られるというのですが、知られるのもしょうがないでしょう。もともと消費税導入は、所得税の捕捉率の不公平さをカバーするという意味もありました。
(なんて言いましたか、給与所得者は殆どの所得が捕捉され、自営業・農家は捕捉されるのは3~5割、政治家は1割なんて言う不公平のことです。これをプライバシーを守るため是と考えるのは、無理かと思います。脱税とは言いませんが、それに近いのではと思います。サラリーマンが不憫です。)
総合課税制を目指す(所得捕捉が進む)のが、不公平性の解消につながると思います。技術的にも、今はいくらか簡単になったと思います。
以上から総合課税制導入は良いことと思います。故に総合課税制で消費税8%にすべきでしょう。
簡潔に言うと、法人税は、かつて所得に対して実効税率50%でした。それが現在は30%になっています。
私の知る限りでは、その理由は、海外の企業との競争力強化、海外への流出防止、企業の活動強化は、経済全体に恵みをもたらす(トリクルダウン理論)などでした。
実際には、平均給与が上がってないので、トリクルダウンは嘘でした。一方この30年で格差が拡大しました。
ここに所得格差の国際経年比較グラフが入るのですが、入れることができませんでした。
(30年以上前から、主要国の中でも日本は所得格差が大きい方です。一億総中流なんて、ほんとにあったことなんでしょうか。そんなときがあったのか?それにしても世界の先進国いずれも格差が拡大してますね。新自由主義経済だからでしょうね。)
次に、法人税の減税は、海外流出防止に役立つかどうか、考えます。
国内と国外の市場の大きさを考えると、企業にとっては、海外に行った方が良いのではないかと考えます。(海外進出で儲けてもらう)故に、この点で流出防止は考えなくともよいのでは、と思います。
また法人税の高低よりも、もっと大きな要素(例えば円高・円安、労働力・市場・技術・情報獲得)が企業の海外進出には、あるのではないかと想像します。故にこの点でも海外流出に関しての法人税の高低は考える必要なしと判断します。
「海外企業との競争力」と「法人税の高低」についてはわかりません。ただ、競争力は法人税の高低に関係ないと想像します。創意力、技術力、積極性が大きいのかなと思います。
かつては50%の実効税率で世界2位のGDPを稼いだわけですので、各企業は40%の実効税率で頑張ってほしいと思います。内部留保を積み上げるばかりでは無能と思います。
以上から、法人実効税率40%へ戻すことが良いと思います。故に消費税は7%にできます。
相続税強化により、被相続者(親)も相続者(配偶者・子)も、生きているうちにお金を使うことが多くなります。それで需要が喚起されます。この点で経済発展に貢献します。お金持ちの子供も、自分の力で生きようという気もちが出て、これも経済発展に貢献しそうです。「児孫に美田を残さず」です。
心配なのは富裕層の海外移住ですが、それはやむを得ないでしょう。お金のため日本を捨てる人は、「去る者は追わず」です。
それにしても、偉い人がいます。遺産100億超の16人です。現在、この16人で税金1633億円を支払っているのですからね。お疲れ様でした。何か表彰しなきゃね。この場合その人は死んでいるので、相続人に国から感謝状はどうでしょう。叙勲もいいかもね。相続人に一代限りで国や自治体の博物館や美術館の無料入場カード(ゴールド色)進呈もいいかもね。海外脱出防止に少しは役立つかな。(割と本気)
以上から、相続税50%への課税強化はいいと思います。これは消費税2%に当たります。
結論:所得税の累進課税強化(もとに戻す)、総合課税制、法人税強化(半分元に戻す)、相続税強化(全段階50%)で、消費税5%は、経済への大した悪影響なしに実現できると判断します。消費税全廃は、この倍の増税が必要なので、非現実的と思います。
ついでに財政全体を考えてみます。
(6)財政の推移
ほんとは、グラフで言いたかったのですが、そのグラフの引用がうまく出来ません。
そこでごく基本的な数字のみで考えます。(世界経済のネタ帳から)
1988年 2019年(予想) 政府・自治体歳入 121兆円 189兆円
政府・自治体 歳出 119兆円 206兆円(政府のみ101兆円)
政府純債務残高 114兆円 857兆円
(政府純債務:政府総債権(借金)-政府保有金融資産(持ってるお金))
個人金融資産 1000兆円 1800兆円
この三十年で、政府・自治体合計歳入は約70兆円増えましたが、歳出は約90兆円増えました。約20兆円たりません。毎年の足りない分は、ご覧の通り債務(借金)の増加で補填してきました。その残高合計が、純債務857兆円なわけです。この30年で増えた政府純債務は、857兆円-114兆円=743兆円です。743兆円÷30年≒25兆円。毎年平均25兆円借金して国民生活・国家を維持してきたわけです。
一方、個人金融資産残高(預貯金、保険、投資信託など)は、800兆円増えています。743兆円≒800兆円と考えて、大きくとらえますと、政府の借金増加分が個人金融資産に回ったといえます。
うまく資料がコピーできないのですが、個人金融資産は、年齢では、60歳代以上が60%以上持っています。
図1:純金融資産保有額の階層別にみた保有資産規模と世帯数
- 出所)
国税庁「国税庁統計年報書」、総務省「全国消費実態調査」、厚生労働省「人口動態調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計」、東証「TOPIX」および「NRI生活者1万人アンケート調査(金融編)」、「NRI富裕層アンケート調査」などからNRI推計
また、図1.でご覧の通り、アッパーマス層以上の世帯(合計1162万世帯、3000万円以上の金融資産保有世帯)がマス層世帯(4200万世帯、3000万円以下保有)の673兆円より多い866兆円を持ってます。大雑把に言って、全体の5分のⅠの金持ちの世帯全体で、普通~貧乏の5分の4の世帯全体よりも多く金融資産を持っています。(7)まとめー財政と税制と個人金融資産の関係
この30年、日本政府とそれを支持した日本国民は、毎年20~25兆円の借金をして
国民生活と国家を維持してきました。その結果積みあがった政府純債務は740兆円です。一方、この30年日本の個人金融資産は800兆円増えました。それを多く持つのは、高齢者と金持ちです。
日本国は、750兆の借金をして、そのお金をほぼ高齢者と金持ちに回したといえます。
借金をなぜ増やしたのでしょうか。国家の収入である税収が足りなかったせいです。なぜ税収が足りないか。所得税累進課税弱化、法人税減税をしたこと、相続税等その他の増税をしなかったこと、経済成長ができなかったことです。
経済成長ができない理由は様々でしょうが、税制面では、この30年間の「所得税の累進課税性弱化」、「法人税軽減」、「消費税強化」という作戦が失敗だったのです。そしてこの30年の税制は、高齢の金持ちの金融資産と黒字会社の内部留保を増やしたのです。
(8)今後どうすべきか
税制は、この30年の作戦が、経済成長できなかった上、不公平と格差を促進したので、その逆の作戦をすべきです。
所得税の累進課税を元に戻す、所得税の総合課税制、法人税を元に戻す、相続税の強化、です。これらを実施すれば消費税5%は、悪影響もなく実施可能です。
次に消費税を5%にした状況下での社会保障・経済を考えます。
現在よりも不公平さは解消しますが、しかし、これまで積み上げてきた借金とこれからの少子高齢化を考えると、税収の確保は、ぜひ必要です。
(「国家の借金は、個人金融資産をうわまらない限り大丈夫」とか、「固有の通貨を発行できる国家は、インフレにならない限り、借金大丈夫」とかいう理屈は信用できません。「原発は絶対安全」に似た嘘でしょう。ひどい破局を迎える可能性を否定できないのです。これらの理屈は、この30年やってきた税制や財政や経済政策を存続させるためのもの=即ち富裕層向けの政策の存続と思います。この意味で山本太郎の「消費減税を国債増発に頼る」というのも、富裕層を利するものです)
そこで、消費税を7%に軽減するのはどうでしょう。そして相続税は、50%で考えましたが、それを70%くらいで考えればさらに税収は確保できます。借金をいくらかずつ返し、経済成長に役立つことに今よりもっと多く使えるでしょう。「どこにどう使うか」も「どこからとるか」同様大事な視点ですが、随分長くなりましたので、ここで止めます。
(消費税を5%でなく7%にすれば、5%の時より、約6兆円税収が増えます。相続税を70%にすれば、約8兆円増となります。合計14兆円です。)
この辺を総合的に考えて、野党は政策を立案し、わかりやすく提示してほしいと思います。