自然は人の努力にこたえてくれる

いい番組を見た。

NHKBSプレミアムのプロジェクトX襟裳岬に春をよべ」である。

舞台は北海道えりも岬。時代は、戦後すぐから平成まで。

 

かつていい昆布の取れた襟裳の海は、昭和20年代初めには、昆布はあまりとれず品質も「泥昆布」と呼ばれるように劣悪になっていた。

 

開拓者たちが、農業と採暖のため近くの森を切り出し、森を失った土壌は砂漠化して、その砂が強風で海に堆積し、昆布を弱らせたのである。

 

襟裳の人たちは、昆布復活のため森の復活に努める。それが困難を極める。まずは、砂地に芝を植える。芝さえ大変だ。烈風吹きすさぶ中で、せっかく植えた種・幼苗が飛ばされる。いろいろな工夫の中で、風を防ぐため、海草・海藻類を砂地に蒔いた。

 

それでやっとこさ、芝が定着し始める。その後数十haの砂漠に芝を生やすのに20余年である。

 

その後黒松を植えるが、これがまた枯れ死する。その原因が地下の水と分かると排水路をつくる。人力でだ。そうして黒松をすべてに植えるのにまた20年。

 

番組の終わりは、平成4年。そのころには、襟裳の人たちは、松だけでなく落葉広葉樹も植えていた。その腐葉土が海に栄養を注ぎ品質の良い昆布をつくる。その黒光りのする昆布を出演者がおいしそうに食べるシーンで終わる。やわらかい昆布。うまそう。

 

番組は、砂漠を森林化する活動の先頭に立った主人公一家を描く。その風貌が印象的である。

 

しわだらけの顔である。番組当時の年齢は今の私とほぼ同じ72歳。辛苦を刻んだいい顔である。美しい。

 

涙が出たのが、「流氷伝説」のことである。主人公は部落の古老の話を聞いたことがある。「ある時流氷がやってきて海の砂を沖に押し流す」という伝説である。芝を生やし黒松が定着し始めてもなかなか海が復活しない。流氷はこない。「流氷伝説」は嘘か。

 

ところが、ほんとに流氷がやってくるんだなあ。これが。私はこの場面で泣けた。自然が人間の努力にこたえてくれたんだ。自然はきっと人間の努力にこたえてくれる、そう確信した。

 

私達は、自然を信じて努力をしなけりゃいけない。そう思った。

 

私がかかわっている相馬市の玉野。100haの森林伐採をして太陽光発電基地をつくるなんて、やはり間違っている。

 

今日九電工の東北支社長が反対派の中心人物Kさんのところにやってきたそうだ。Kさんは、これまでの経緯を支社長に説明し、反対の意思を伝えたそうだ。それでもやりたそうだったとのこと。

 

相馬の漁師たち、この番組を見てるといいなあ。玉野の腐葉土が海の豊かさをもたらしているんだよ。メガソーラー反対に立ち上がってほしい。

 

 

プロジェクトX。昔々やっていたころ時々見た。

時々しか見なかったのは、「日本素晴らしい」という感じがいやらしいと思ったからかな。俺だってやってる。けどさっぱりだ。という事で嫉妬もあったのかな。もともと継続してTVを見る習慣がないからかもしれない。分からない。

 

むかしの番組、近頃もやってたんだ。初めて見た。

 

落ち目の日本。多くの人が見た方がいいかもしれない。今は素直に、素晴らしい日本人がいたと思える。いい番組である。