5月17日の朝日新聞声欄・オピニョン欄に興味を惹かれました。
まずは、「法を守らぬ議員に改憲を語る資格は」という題の、福島県の山崎健一氏の投書に興味を惹かれました。
というのは、私も入っている「鈴木安蔵を讃える会」のことについて触れていたからです。同会は、東日本大震災後、壊されようとしていた鈴木安蔵の旧宅保存・維持管理・鈴木安蔵の業績理解に努めています。
参考 拙過去ブログ
山崎氏の文章の最後は、「鈴木安蔵なら、『裏金で法を守らない国会議員に改憲を語る資格はない』と断言するでしょう」です。まったく同感です。
今日(5月17日)の声欄でびっくりしたのは、「平等の理念 人々に根付いたか」と題する奈良県の中田庄史氏の投稿です。
同氏は、憲法が、14条で平等と差別禁止を宣言した、その41年後の5月3日に、被差別部落出身の女性と結婚した人です。ところが、母親が開口一番「えらいことになった」と言ったそうです!自分の親族の多くから反対・無視の扱いを受けたそうです!
これ、憲法制定の41年後の話ですからねえ。
私には、信じられないような話です。私らの小学校の運動会の最後は、「部落対抗リレー」という名前です。私も部落という言葉を平気で使ってました。つまり部落差別は、この辺では、なかったか、ごくまれだったんだと想像します。
中田氏は、憲法第14条を寅子が見て涙するシーンの朝ドラ「虎に翼」に触れて、
「寅子のような先達が切り開いてくれた、社会の進展を邪魔するものとの闘いを忘れてはならない」と締めくくっています。
平等に関連して、同日のオピニョン欄に、小説家 李 琴峰(り ことみ)氏の「私は2級市民? 永住者脅かす法改正 選別に正当な理由は」と題する投稿が載っていました。私は知らないひとですが、彼女は台湾出身の芥川賞作家だそうです。
彼女は言います。「日本は社会制度と法制度だけを見れば日本人と外国人にほとんど格差はない。差別はあるけれど、耐えられないほどではない。それは差別撤廃のため闘った先人のおかげである。
この平等が今壊される心配がある。『政府は今、税金や社会保険料の未納や滞納を理由に、永住資格を取り消せるよう法改正を検討している。外国人労働者を増やそうとする中で、外国人を選別しようとする思惑が透けて見える。
・・・私は、税を払わなくてよいと言っているわけではない。未納者や滞納者には法律に従って督促や差し押さえをしたり行政罰などのペナルティを課せばいい。悪質な脱税には刑事罰もある。・・・日本人だろうと外国人だろうと同じ法で裁けばいいのではないか?』(『 』は原文のまま)」
彼女が危機を感じている法改正ってなにかと思って調べたら、入管難民法の改正案のことで、「技能実習」に代わる「育成就労」を導入する法案でした。これに伴い、故意に税や社会保険料を払わない外国人の永住資格を取り消すことができるようにしたのだそうです。
朝日新聞5月18日によると、自民・公明。立民・維新の修正案が、17日衆院法務委員会で可決され、近く本会議で可決され参院に送られる見通しとあります。
同紙によると、立民は初め政府案に反対して対案を出し、政府案の修正協議が行われ「永住資格の取り消しに当たり、生活状況に十分配慮すること」という付則を付け、可決されたとのことです。
ネットで見た日経新聞によると、岸田首相は、「永住権剥奪は、一部悪質なものに限る」と発言しているようです。
「故意に支払わない場合」の故意かどうかという判定は難しいでしょう。故意でなくとも故意とみられる可能性もあります。立民の意見で挿入した「生活状況状況に十分に配慮」も、ほんとに配慮されるのでしょうか。岸田首相の「一部悪質なものに限る」というのも、悪質を広く解釈される可能性もあります。永住権剥奪が可能なれば、外国人永住者の人権が保障されなくなるのではと思いました。
永住権は、原則10年以上日本在住とか、配偶者が日本人とかの人に与えられるようです。日本の生活に溶け込んでいる外国人なわけです。李琴峰さんの言う通り「日本で生まれ日本で育った」人もいるわけです。
永住者にとって永住権を持つというのは、日本国籍を持つというとに近いのではないだろうかと思いました。
それを税金や社会保険料を払わないという事だけで、剥奪するのには正当な理由があるのでしょうか。
永住権剥奪は、生活基盤を奪うわけです。税・保険料の不払いで、永住外国人を区別する根拠があるのでしょうか。税や社会保険料の不払いは、日本人と同じ扱い(処罰)でいいのではないかと思いました。
永住権剥奪という処罰には、外国人差別の意識があるのではないかな、と感じました。
外国人排除の意識も働いているようにも感じます。
また、平等の理念の弱さがあるのではと思いました。