NHKスペシャルで、「国境の島 密着500日ー防衛の最前線はいまー」を見た。
国境の島とは、与那国島のことである。人口1700人で、台湾との距離は111㌔なのだそうだ。近い。映像にたびたび出てくるが、与那国島から見える台湾島は、のしかかるように見える。
実際、台湾は、与那国町民に重くのしかかっている。勿論、「台湾有事」に備えてどうするか、という問題である。
もともと与那国には自衛隊基地はなかったが、中国の海洋進出に対抗して、日本政府は、2008年に自衛隊の監視部隊を設置した。この時、島民には賛否両論があり、論争があった。(論争の様子も少し流れる)
さらに、日本政府(岸田政権)は、ロシアのウクライナ侵略という新情勢を理由に、2022年末閣議決定で、安全保障関連3文書を策定し、それを実行に移している。
日米軍事協力の強化や例の敵基地攻撃能力・防衛費GDPの2倍増計画、などである。
その中では、中国の脅威を強調していて、南西諸島の防衛力強化を実施している。その一環として、2023年、与那国へのミサイル部隊配備が始まった
番組は、与那国町長と土建会社経営の大宜見朝要さんと畜産業・小峰博泉さんの三人を中心に、与那国町民の苦悩を描いている。
小峰は、保守の町議時代、台湾・香港・フィリッピン・インドネシアなどとの交流・交易での島の発展を目指し、自衛隊基地の設置に反対した。
一方大宜見は、人口増・過疎化脱却、土建の仕事の発生という点で賛成した。(実際、駐在自衛隊員は、運動会や祭りに参加し、臨時の住民として町に貢献している)
2人は、幼なじみの同級生で、今も付き合いはあるが、二人の間には基地問題が横たわり、本心での話し合いができない。ここに深刻な分断がある。
賛成の立場の大宜見も、ミサイル基地には疑問があり、「監視部隊だけ」と思ってたという。
今年は、有事の際の「全島民避難計画」の住民説明会があった。
町の職員の説明:「バスに何分で集合」「手荷物は、縦横高さ合計何センチ以内」「全島避難故、町の職員退去後は電気はない」「全員退去は、義務であるが罰則はない」「補償の決まりはない」等々
住民の疑問:「戦争を前提としている話か」「避難の最中、爆弾が飛んでこないか」「町にシェルターを備えるべきでは」「俺たち、島に帰れるのか」「弾丸はいつ飛んでくるかわからないだろう」等々
小峰は言う。「自衛隊に皆振り回されている。ミサイルを設置して標的になるのは嫌だと思うが、それはわがままと言われ、言えない」
自衛隊基地推進派の町長は、「戦争がしたくてやっているわけではない。その真逆だ」
昨年から今年、軍備増強のため、空港・港湾設備充実計画があり、与那国も手をあげたが、2度ともダメだった。
町長:「(政府には)ずるさが見え隠れする」「私は、軍事基地をつくると思ってない、港をつくるだけだ。それは島の発展のためだ」「与那国が手をあげなければ、石垣や竹富に持っていかれる」「(ミサイル基地は)原発や火葬場と同じで、必要だけどみな嫌がるもの」「島をひっくるめまとめて、米国や中国と関係ないハワイあたりに持って行きたい」
小峰は、島に来た見知らぬ人から「国境にあるのだから、国に協力するのは当然、防衛協力は国民の義務だろう」と。
小峰は言う。「防衛の義務は、全国民のものだろう。なぜ、俺たちだけ、責務があるように言われるんだ」
番組は、「島民の苦しみを国民どれくらいが知っているのか」というナレーションで終わる。
確かに私も島民の苦しみを知らなかった。第一、与那国島という国境の島を、明確には知らなかった。
まずは、NHKのナレーションが言う通り、全国民は、南西諸島の現状と島民たちの苦悶を知るべきだろう。島から見える台湾島の大きさ!
私は、武装中立(日米安保条約破棄、自衛隊による専守防衛、中立故台湾有事に介入しない)かつ国際法中心の外交が日本の安全保障策として正しいと思っている。中立国を攻撃することは国際法上できない。また中国も日本国領域内への攻撃は、国益上もしない可能性が高い。
しかし、これは極少数派の考えであり、現在日本国は、日米同盟による安全保障の道を取っている。
それでも、集団的自衛権を認めなければ=安保法制破棄で、台湾有事の場合の戦争参加(惨禍)を避けられる。流れ弾が少々あるにしてもね。敵基地攻撃のミサイル基地はおいてはならない。標的になるからである。
安保条約(1960年以来)があり、安保法制(2015年以来)があり、安保3文書(2022年以来)に対して立民などの厳しい反対がない以上、
台湾有事が起きれば、それは、日本有事となり、中台戦争に日本が参加する可能性は高いと判断する。
故に現状、やるべきことは
①台湾有事が起きないようにすることである。抑止力理論が、中国に通用すればいいのであるがなあ。私は怪しいと思っている。
②南西諸島に、敵基地攻撃の基地を置いてはならぬ。敵の攻撃の理由付け・標的になる。ひいてはそれは、日中全面戦争の可能性も出てくる。
③南西諸島全体で12万の避難となるのだそうだ。難しい。自衛隊の艦船・航空機では攻撃される可能性も大きくなる。民間の輸送手段をきちんと構築しておくべき。同時に12万人が難しければ、ミサイル基地のある島を優先にすべきだ。
④心身の状態の為逃げられぬ人も出よう。介護人や生活用品の備蓄も必要。こんな人の為降伏の意思表示手段を教えておく必要がある。
⓹二つの大震災、多くの地震・水害を参考に、避難先の生活の確保の研究が必要だ。
⑥戦争終結の手順・構想を明確に政府は持っておくべきだ。作ってあるのか?
⑦自衛隊員・民間人の死傷や土地建物生産物への補償も決めておくべき
思いつくまま書いた。どんなことも起きる可能性がある。
私は、東日本大震災の巨大地震・津波なんてあると思ってなかった。原発事故なんて夢にも思ってなかった。第二次の日中戦争だってあるかもしれぬ。