久しぶりに小説を読みました。いつ以来かわからないくらいです。今年の目標の一つを、本を読むこととしてました。早速。
荻原浩 短編集「海の見える理髪店」です。帰省していた娘が置いていったものです。
荻原作品は、長編「明日の記憶」を読んだだけですけど、それが良かったという記憶がありまして、読んでみました。
期待にたがわず、印象にのこる短編がいくつもありました。
実にうまい作家ですね。
直木賞を取ったという「海の見える理髪店」は、やられたという感じですね。なるほどと思う真相とほのぼの感、最高でした。あとで読み返すと伏線もばっちり。
「いつか来た道」は、母娘の深刻な葛藤を、母の病気が溶かす話ですが、母との16年ぶりの再会で、娘は自分も取り戻します。
「遠くから来た手紙」は、夫に嫌気がさし実家に戻った妻が、亡くなった祖父の手紙でやり直す気持ちになるという話。冥界からの手紙はちと無理があるけど。
「時のない時計」は、父親の形見の時計の修理を頼む話。その修理屋の老人の話で
父親の実像がわかるという設定なんだけど、私にはいまいちピンとこない話でした。
「成人式」・・・15歳で娘を失った夫婦の時間は止まったまま。しかし5年後動き出します。5年後とは、・・・。40代の夫婦が、20歳に若作りし成人式に出ます。勿論無理があります。ほかの新成人に馬鹿にされ気味わるがられ、式場に入るのを拒まれます。しかーし・・・・。これから読む人のために黙っときましょう。イヤー泣けたなあ。無理な設定だけど泣けたなあ、いい小説です。
「空は今日もスカイ」・・・小学校三年の茜の冒険。茜は離婚した母親の実家にあづけられてて、肩身の狭い思いをしている。そこで家出を決意する、途中で家族に暴力を振るわれている森島陽太と合流し、海へ行く。夜、二人は海辺でテント暮らしの優しい男の世話になる。
朝、警官がこの男を捕まえようとする。
テント暮らしの男「その子の背中を見てみろ。お前ら、取り締まる人間を間違えてる」
森島「やめて、違う、やめて、違う」
茜(ありったけの声で)「その人は悪くない、私たち何もしてない」
大人や社会は、子供に正しく接しているんだろうか、という疑問を持ちました。