昨日NHK+で、こころの時代・選「それでも、信じるー負け続ける元裁判官」という番組を見ました。
無罪判決の多さで「伝説の裁判官」とよばれた木谷明さんについてのインタビュー中心の番組で、2021年放送のアンコールです。
刑事訴訟では、日本では99%が有罪となる中で、木谷裁判官は、30件以上の無罪判決を確定したというのだから異色です。
取材当時は83歳で、裁判官を退官後何年かぶりで弁護士として法曹の世界に復帰し、
主に再審請求を担当しているのだそうです。年300件ほど再審請求はあるのだそうですが、それが通るのは、2,3件なのだそうで、負け続けるのは当たり前です。
木谷さんの裁判がなぜ無罪が多いか、木谷さんは言います。
「裁判は白黒つけるものではない。黒か黒でないかだけなのである」
「犯人らしく思っても証拠不十分なら無罪」
「真実は、神様と本人しか分からない」
「疑わしきは、罰せず」
「十人の罪びとを逃すとも、一人の無実の人を罰する方が罪深い」
なるほど。
このような裁判官ばかりだったら、袴田さんのような冤罪も起こらないでしょう。
木谷裁判官のさらに特徴的なことは、被告人の声を聞くということです。
木谷さんは言います。
「被告人は、警察・検察でも真情を言えません。裁判で言いたいと思っているはず」
「被告人を対等な人間として、話を聞いてあげる、聞かせてもらう」
木谷さんは、被告人を「○○君」「○○さん」と呼んだのだそうです。
こんなことがあったそうです。
暴力行為を重ねる少年は、裁判で次々嘘を言います。木谷裁判長は、次々それを調べて、嘘を暴きます。結局は、彼を少年院に送ります。この少年は、少年院から木谷氏に10通以上の手紙を書きます。自分の話を聞いてくれたことに感謝したのでしょう。
私が木谷裁判で一番すごいと思ったのは、3人の自分の子を殺して自殺を図った母親の裁判です。無罪を言いました。
争われたのは、母親の責任能力でした。検察側鑑定証人は「責任能力があった」と言います。弁護側鑑定では「責任能力はなかった」と言います。
木谷さんは言います。
「母親がうつ病なのは間違いない。この母親が子を愛していたのも間違いない。」
「主人が非協力的な中、長男もうつにかかり、長男から殺してくれと言われてた」
検察の再鑑定要求を退けて無罪を言い渡します。
異例の補足説明ではこう言います。
「母親は、これから愛する子を殺した恐ろしい罪を背負って生きていかねばならない。
生涯いやすことのできない彼女の深手を軽くしてやりたい」
3人も殺して無罪ですから批判もあったでしょう。
その後彼女は、病気を克服し社会復帰をします。そして一度木谷さんと再会します。
木谷氏「彼女は今はボランテイアをしながら、海外の山に登って、頂上で○○ちゃん、ごめんね、○○ちゃんごめんねというそうです。私の裁判は間違ってなかったと思う」
ほんとにこの母親、つらいだろうな。罰があった方がいいのかも?しかし、罰があろうとなかろうと、つらさは関係ないとも思います。この人を懲役にしても意味がないとも思います。
そして私は、3歳の娘を欄干から落として殺した24歳の母親を思い出しました。
2014年、離婚した母親は、新しく同居した男が連れ子を疎外するのを見、育児ストレスもあり「この子がいなければと」と思います。この子は、歩くのも言葉も遅かったそうです。
母親は、橋の上にこの子を立たせます。車が来るとおろします。3度目にこの子を抱いた手を欄干から伸ばした時、この子は、にっこり笑って、「バイバイ」といったそうです。
どうしてこんな子を川へ落とすことができるんだ?
この子は、自分が邪魔なのを感じてたんでしょうか。母親が自分を川へ落とすことをわかってたんでしょうか。私はそんな気もします。この母親の罪から逃れるための作り話なのでしょうか。あるいはそう思いたかっただけなのでしょうか。
木谷明裁判長だったら、どんな判決を下したんでしょうか。