よくわからない番組でした。「日本人と東大」

NHKETV特集で、「日本人と東大-シリーズ第一回・エリートの条件・28年組はなぜ敗北したかー」を見ました。

 

受験生時代の私にとって、高嶺の花で、遠く仰ぎ見た、そして畏怖していた東京大学、日本を動かしてきたといわれる東大についての番組ということで、期待してみました。

 

しかし期待に反して、何を言いたいかよくわかりませんでした。

 

テーマがでかすぎるのかもしれません。多くの話題を提供しすぎて、作るほうが消化しきれてないのかもしれません。構成が悪いのかもしれません。私の知識不足・理解力不足が問題なのかもしれません。

 

分かった範囲でまとめて、感想らしきものを書いておきましょう。

 

(1)現代の東大生のエリートについて意識

自分をエリートと思うかというアンケートに

1999年の東大生は、27.2%が肯定。2024年では、58.1%が肯定

 

→1990年代は、高級官僚の不祥事があり、日本のどん詰まりもそろそろ自覚され、エリートへの批判が盛んだったので、東大生も、自分をエリートと思いたくなかったんでしょう。

 

(2)「エリートの条件とは」についての、現役東大生や東大出身の若手官僚の答え

〇もっとも革新的な仕事をする人

〇考えたこと、遂行したしたことに責任が持てる人

〇社会の全体像が見えて未来像を示せる人

〇ゲームのフィールドを変える人

〇引っ張るというより、背中を押す人

 

→この番組の制作者が考えるエリートとは、日本の国家を動かす高級官僚ということであり、それでは考えが狭すぎると思いました。国家ばかりが日本を動かしているわけじゃない。国内に限っても、民間企業・労組・政党・NGONPO・文学・芸術・スポーツ・世論様々あります。だから、番組は、「高級官僚について述べる」とはっきり示しておくべきでしょう。その方が筋が通ると思いました。

 

→なるほど東大は、官僚輩出の面でのエリート大学といえる。・・当たり前ですね。

 

(4)2024年の東大卒業生の就職希望の1位から5位に、官僚は入ってない(1位は外資系企業)、1980年のエリート国家公務員試験合格者の東大出身者の占有率は、41%だったが2024年では、14.3%に激減している。

 

→東大生の官僚離れが進んでいるわけです。官僚のみが日本を動かすのではないので、

東大生も広い視野を持つようになったのでしょう。いいことと思います。一方、国家の役割が現在でも巨大なのも事実で、東大生が、いろんな能力で優秀ならば(きっと優秀でしょう)官僚離れは、国家にとって損失ではないかと思います。

 

(5)花の「28年組」は、なぜ敗れたか。これが今回のメインテーマなんですが、上の(1)~(4)とのつながりがいまいち不明確という感じを受けました。

 

これも言ってることをまとめ、感想を述べておきましょう。

 

A.「28年組」というのは、東大法学部の明治28年卒業の人たちで、87人のうち、官僚が43人、官僚のトップ事務次官に9名がなり、二人の総理大臣を出している学年。秦氏に(歴史家)よると、長い東大の歴史の中でも突出しているとのことです。

 

→確かにねえ、事務次官9人輩出はすごい。総理大臣2名もすごい。しかも超有名な

浜口雄幸幣原喜重郎だからなあ。番組制作者が目をつけるのは当然だ。

 

B. 番組によると、この学年の特徴は、民主的・国際協調的ということのようだ。その例証として、浜口雄幸の「国家は、一人の英雄より多数の常識に導かれた方が良い」という言葉、金解禁という国民に不人気な政策を直接訴える行動、幣原喜重郎の「争いの時代は終わり、国家間の協調が重要」という言葉を上げる。そのほか、後年孤立しながらも、「国家総動員法」に反対した伊沢多喜男、売春婦の廃業を応援した弁護士の桃井熊太郎などを上げる。これらの根底には、話し合えばわかる、という説得力への信頼があったと番組は言う。

 

→この学年の特徴が民主的・国際協調的・説得力への信頼というのは、当たっているかどうか、わかりません。彼らの言動・行動からすると、おそらく当たっているのだろうと思いました。

 

 

C. 「28年組」の敗北とは、浜口雄幸総理大臣が、金解禁政策、海軍軍縮条約締結で、

野党・軍部・右翼等により批判され、殺害されたこと、幣原外務大臣が欧米との協調外交を軟弱外交と批判され、退いたこと等を指す。

番組は、その背景に浜口・幣原への国民の批判があり、番組は、エリートと国民の乖離を指摘したいようだった。

 

→かつて読んだ城山三郎「男子の本懐」は、浜口首相と井上準之助大蔵大臣の、金解禁実施への苦闘を描いていて、とても面白かった。金解禁=金本位制復帰は、世界恐慌の中で間違った政策だったけど、そんなのは後付けの知恵でして、彼らは、不運だったと思います。

 

→確かに、浜口・幣原は国民に理解されなかったといえるけど、浜口を統帥権干犯で批判し、幣原協調外交を軟弱外交=国家利益を侵害という言説をリードしたのも、エリートだと思います。エリートと国民の乖離では説明しきれないのではないでしょうか。

 

→結局日本の進路は、国民が、28年組的な、民主的考え・国際協調に共鳴するか、全体主義的考え・強硬外交(欧米と対立しても、自国の利益のため、中国への侵略を進めるか)のどちらに共鳴するかで決まったのだと思います。

いつの時代も、どこの国でも、国民の大勢の考えが国を動かしていくんですね。曹宇思いました。

 

(5)2003年制定の「東大憲章」で、東大は、教育目標を「市民的エリート」育成としている。しかしこの言葉は、その後も今も、東大の中でほとんど使われていないし、学生に知られてもいない。

→制定した当時の副学長は、この言葉を「公共性を目指すリーダー」、「皆と手をつないで市民社会を作るリーダー」と言っていました。市民的エリート、いい言葉です。ぜひそうあってほしと思います。

東大生は、知的能力が高いと思います。その高い能力を、官僚になっても民間で活躍しても、研究者になっても、皆のため、市民社会のため、役立ててほしいと思います

 

最後に、この番組に関係ないことだけど、ぜひ言っておきたいことがあります。

3月23日の朝日新聞の「天声人語」です。

チンパンジーがいた。名前は、アイ、アキラ、マリ。性格も才能も異なる。」

で始まる文章です。

概要を示すと、

「アイは、自発的に学習でき、アキラは打たれ強かった。しかし、マリは、不正解のブザーが鳴るとそれだけで、頭を抱え込む劣等生だった。マリは研究対象から外され、動物園に移された。しかし、研究所で落伍したマリは、その後群れを率いるリーダー格になった」

 

ものさしは、様々です。勉強ばかりではなさそうです。

東大に入れなかった大学生も、中卒で社会に出た人も、中途退学の人も、自分を生かす道は様々のようです。それぞれ自分の個性・素質・才能を生かして、幸せな人生を送り、よい日本、「みなが幸せな日本」を作ってほしいと思います。

3月は、幼・小・中・高・大の卒業シーズンです。

前期高齢者を卒業し、後期高齢期の新入生となった私から、若者たちへのひそかなお願いでした(笑)