「さあ、歩け歩け、時彦」(高田郁(短編集「駅の名は夜明け」より)

久しぶりに高田郁を読みました。

「みおつくし料理帖」「あきない世傳金と銀」シリーズ以来です。

「駅の名は夜明け」は、上記の時代小説と違い、現代が舞台の9つの短編集です。

 

この9つのお話には、三つ共通点あると思いました。

お話の舞台が、交通機関やそれに関係することがひとつ目。

登場人物はみな、苦しみ・悲しみを抱えて生きています。愛する人の死、離婚、いじめ、介護のつらさ、仕事の行き詰まり等。これ、二つ目。

そして三つめは、その登場人物を必ず応援する人がいることです。

 

9編とも、つらい人生を歩む人を応援する人がいて心温まる話でした。

 

特に、離婚しそうになった男女を、亡くなった娘が応援する話=「トラムに乗って」が良かったな。思わず涙が流れました。舞台はオーストリア・ウイーンの12月。寒い中、とても心が温かくなる話でした。

高田郁さんは、話がうまいです。

浅田次郎の初期の大傑作「鉄道員」の諸短編を思わせます。「鉄道員」、も一度読みたいな。本持ってたんだけど、なくしちゃった。

 

表題の「さあ、歩け歩け、時彦」は、高田さんの初めての小説(漫画原作だそうです)=「背中を押す人」の中での、父親が息子に言う言葉です。

 

これを言う父親は、すい臓がんで余命は1か月もありません。

 

この息子は、11年前父親と大喧嘩して上京。出奔するとき、母親にけがをさせました。その日は、しかも、妹が高校に合格した日なんです。その後11年間帰郷しないどころか連絡も取りません。

 

時彦は、演劇をやりたかったのですが、この時全く芽が出てません。

 

こんな状況で、余命1か月の父親が「背中を押す」のです。「どういう経緯で」は、まだ読んでない人のために言いません。

 

どんな人生にも悲哀や苦悩や苦痛があるでしょう。その時誰か応援する人がいるといいですね。

高田郁さんは、大変な人を、そっと応援するつもりで、この9つの話を書いたと、あとがきで言ってました。