岩波新書「独ソ戦」(大木 毅著)を読んで

私の独ソ戦の知識は、「もともと敵対国同士のドイツとソ連が、不可侵条約を結んだが、ドイツがそれを破ってソ連に侵攻し、ソ連が、後ろに引いて力をため、やがて冬の到来とともに反撃し、ドイツ軍を破った。その勢いでベルリンまで侵攻し、ドイツを敗北させた」くらいの知識であった。これは、知識というより印象であろう。

 

大した興味もなかった。

 

しかしこの本を読んでみて、独ソ戦というのは、きわめて大きい歴史的出来事ということを知った。またこの本で戦争についての様々な考えを知った。

内容を十分理解したとは言えないし、考えもまとまってもいないが、読んだ感想を、書いておく。

(1)独ソ戦は、空前の大戦争であった。

〇時期は、1941年6月~1945年5月。広大な地域で戦う(北はレニングラード、南はスターリングラード、海で言えば、バルト海黒海さらにボルガ川

 

〇民間人も含めて死者数・・・ソ連は、2700万人、ドイツは、600万~800万(独ソ戦以外も含む)CF・・日本→民間人も含めて死者数、310万人、近頃350万人といわれる。

 

〇1944年6月のソ連の大攻勢(バグラチオン作戦)の時、ソ連軍兵士125万、守るドイツ軍33万、CF・・同時期のノルマンデイ作戦は、連合軍とドイツ軍合わせて20万強

 

*何せ、欧州のほとんどを支配したドイツとその同盟国イタリア等が、ソ連に攻め込み攻防を繰り返し、3年後ソ連がドイツ本国まで攻め込んだ戦争だから、巨大な戦争なわけだ。日中戦争では、日本は中国を侵略したが、中国は日本を攻撃してない。太平洋戦争では、日本は、米本土を攻撃してなく、米軍は、沖縄等を除き日本本土を陸上部隊で攻撃してない。

 

(2)この本では、独ソ戦は、ドイツの世界観戦争とソ連大祖国戦争のぶつかりで、絶滅戦争という認識である。

独ソともに、自国の目的のためには、相手が絶滅してもいいという考えの下で戦った。

 

〇ドイツの場合:優れたゲルマン民族のドイツが、劣等のスラブ民族を奴隷化しようと

        する戦争(世界観)だ。共産主義は、脅威で撲滅しなければならない

ソ連の場合:ファシストの侵略者を撃退し、祖国を守るための大祖国戦争だ。道徳的

       に許されない敵を滅ぼす聖戦である。

 

※これでは、戦時国際法の無視は当然で、敵の強制移住・追放、敵の物資強奪(その結果の餓死)、捕虜の殺害・強制労働が起きるのは当然だ。ドイツによるレニングラード包囲戦では、同地で人肉食があった!

 

※兵士や庶民レベルの憎悪の連鎖・拡大が、独ソ戦の惨劇を起こしたと思っていたが、それ以上に、指導層の戦争目的が相手を滅ぼすというのでは、惨劇は必然だ。

 

※敵の絶滅を目的とする闘争は、人類しかしないのでは?絶滅戦争ってどのぐらいあったのか。民族間戦争だろうけど、ボスニア内戦、ルワンダ内戦なんかは、敵の絶滅をめざしたもののように思う。

 

※現在のイスラエルのガザへの侵略は、絶滅戦争じゃないのか?

 

ウクライナ侵略戦争の時、プーチンは、大祖国戦争を持ち出し、ウクライナをナチ・ドイツのように言っていた。これは、ロシア国民には効くのだろう。

 

※この本は、4年の独ソの戦闘状況を詳述していた、ウクライナの地名もいっぱい出てくる。なるほど、ウクライナは、西欧とロシア双方に重要な地域なのだと再認識した。

 

(3)この本では、戦略・作戦術・戦術という軍事用語について、以下のように説明している。

戦略は、戦争目的を定め、国家のリソースを戦力化すること

戦術は、戦闘を有利に進めるための技

作戦術は、戦略と戦術を結ぶ環。戦線各方面に実施する作戦を相互に連関していくこと

作戦術は、ソ連で研究され、対独戦で威力を発揮した。ベトナム戦争後の米国も参考にしているとのこと。

 

※この区別、私は理解不十分だが、大切な認識と思う。特に平和志向の人にも、必要と思う。平和志向の陣営は、この点が弱かった。この本では、独ソ戦の各戦局・戦闘について記述しており、勉強する必要を感じた。

 

※太平洋戦争の目的(戦略の一部)は、「大東亜共栄圏」建設と発表されたが、それは、戦争が始まってから言われたもので、戦略ではなさそうだ。同戦争は、日中戦争に行き詰って、その打開のためと考えられる。しかし、中国を屈服させる戦略がない。

 

※安保法制で容認した集団的自衛権行使は、どんな戦略なのか?同盟国=米国の戦争を助けて、日本が参戦する目的(戦略の一部)は何だろう。日本の存立危機を救うためか?

参戦する方が存立危機になるのではないか?ぜひ国会で追及すべきだし、国民も本気で考える必要があると思う。