前回のブログに続いて、新聞について述べる。
(1)元日1面トップ記事について。
前に書いたが、日経と朝日は、AIについてである。AIは、現代の主要問題で興味をひかれるが、毎日は、田中角栄のロッキード賄賂事件ついてであり、エー、2026年元旦のトップ記事??と思った。
読売トップ記事は、「中国、台湾上陸訓練か」「桟橋搭載の船団複数展開」とある。内容を読むと、3隻が連結すると800mの桟橋となり、この機能を持つ民間船10隻が軍の演習に参加している可能性が高いことが判明したという。
私は、大騒ぎするほどのことでないと思った。習近平政権は、中国統一に武力行使も排除しないといっているので、台湾上陸作戦も研究しているのは当たり前である。
そして思ったのは、この扇動的な表題である。内容をよく読まない人は、すわ、台湾進攻近いか、何とかしないとと思うだろう。記事は、中国の造船能力の高さに対抗する日米の造船能力の向上の必要性で締めくくっている。
造船能力が高い方が良いと私も思う。しかし、限られた資源をどこに配分するかは、簡単ではない。全体を見渡して決めるべきだ。
また、台湾有事は日本有事ということ、それは日本の存立危機事態になるということ(=参戦)の二つは、決定事項では、決してない。台湾を日本の安全保障から切り離したって良いのである。2015年安保法制以前は、自衛隊は国外では、日本周辺で米軍の後方支援しかできなかったのである。1999年以前は、日本周辺での米軍の後方支援もできなかったのである。
読売は、上の二つを決定事項として、危機感をあおっている。フェイクはないが、日本国民を中国を敵視する方向にあおっていると思う。読売の報道姿勢は疑問である。
(2)中満泉さんについて(日経・朝日の元旦の記事)
中満さんは、現在、国連軍縮担当上級代表・事務次長である。
日経の第3部の私の転機というコーナーで、1992年の当時のことを語っている。ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争の最中、彼女はサラエボに国連難民高等弁務官事務所長代行として赴任した。
「防弾チョッキとヘルメットをかぶって軍用機から降り、ターミナルまで走ると150メートルほど離れたところに迫撃砲が着弾した」
「砲撃戦が始まったら防空壕にすぐ逃げられるよう、寝るときもブーツをはいた」
「クロアチア系男性に、「殺害されたイスラム系男性の(彼が保護していた)妻と娘を助けてほしい」と頼まれ二人を逃がした。完全に規則違反だったけれど」
国連安保理が機能不全に陥り、事務総長の発言力低下した現在でも、AIの国際的な規範作りなどの新しい役割を国連は持っているという。
朝日新聞元旦版にも、中満さんのインタビュー記事が載っている。こちらは詳しい。
以下にまとめる。きわめて重要なことを、わかりやすく言っていると思う。
①国連で働く人はみな、これまで人類が築いてきた国連憲章を中心とした秩序が崩壊しつつあるという危機感を持っている。
②安保理の機能不全が世界に失望を与えている。国連の安保理の常任理事国(米英中仏ロ)が、自分たちに与えられた拒否権を「特権」と思っているのが間違いである。国連が構想された時、常任理事国に期待されたのは、平和維持のための「特別な責任」だったはずだ。
③冷戦時代には、安保理決議が一本も通せなかった年がある。しかしこの一年は30本以上が採択されている。国連がなくなれば、世界はより危険になる。
④国連が取り組むべき新しい課題もある。軍縮分野では、宇宙やサイバーといった領域でも人類は活動し、軍事概念も変わりつつある。AIも軍事に使われる危険性も高まってる。自律的に人を殺すAIをどう考えるか。アルゴリズムが、核を自動的に発射する事態もありうる。
⑤戦争にもルールがある。国連は、軍事技術の発展に応じた規制を懸命に考えている。ただし、個別の技術に対応するだけではだめだ。例えば機械が人間の命を奪う決定を下すことになれば、人間の説明責任を前提とする国際法が崩壊する。今私たちは、そんな危険な瀬戸際にいる
⑥日本は、以前ほど経済力がはないから、あるいは常任理事国になるのは難しいから大した役割を果たせないというのは、間違いである。日本も多国間主義の現場で十分存在感を発揮できる。常任理事国の拒否権を規制しようとする最近の動きは、リヒテンシュタインなどの小国が力を発揮している。
⑦国連の歩みは創造的な歩みである。PKOは、そもそも国連憲章にない。カナダのようなミドルパワーが主導したものだ。1956年のスエズ危機の時も安保理は機能しなかったが、時の事務総長は、朝鮮戦争の時の決議を使い、憲章にない緊急特別総会を開いて国連緊急軍を創設した。
⑧これからの大切なことは、グローバルサウスの理解と支持を得ることだ。その際、平和国家としての80年の歩みこそが日本の財産だ。
石破前首相の国連総会での「アジアの人々は戦後、日本を受け入れるにあたって寛容の心を示してくださった」といった。排外主義や近隣国への敵対感情でないこうした姿勢は、重要なポイントだ。
⑨最近の日本の若い世代については心配している。国内の格差や不平等への不満が、排外主義に向かうとなると、戦前の繰り返しにならないかと心配している
⑩日本人が本当に誇れるのは、戦後80年、歴史の反省に立ち、国際社会に平和国家としてどう貢献できるのかを考えてきたことだ。私はこのことにいつも誇りを感じている。
最後は、インタビューそのままを掲載する。
「最近、日本人のSNS発信を見ていると、どうもこんがらがっている人が多いように見えます。平和国家として、80年かけて、私たちは信頼される地位を築いてきたのです。それをこそ誇りに思うべきだと、若い人に伝えたいです」