自衛隊トップではありませんが、元自衛隊幹部学校主任研究開発官の著作です。
木元寛明氏の「作戦術から考える 台湾有事と国土防衛戦」という本です。
作戦術とは、近現代の戦争で確立した考え方で、戦争を戦略・作戦・戦術に分けて考える考え方です。作戦は、戦略と戦術の中間に位置しそれをつなぐものという考えのようです。
戦略:国家指導者が外交・情報・軍事・経済などの国家資源を運用して国家目標を達成する
戦術:戦闘部隊が目標を達成するため、戦術のアートとサイエンスを用いて計画・準備
実行する
作戦術について、著者は、古今東西の(ちと大げさです)戦争を例にとって説明し、
台湾有事の時の国土(尖閣・与那国・先島諸島)防衛について説明しています。
作戦術は以下の10の要項(著書では要則)に分けて説明されています。
①作戦終了の状況と条件
②作戦の重心
③死命を制する要点
④作戦戦とおd力戦
⑤作戦のテンポ
⑥作戦段階と作戦の転移
⑦戦力転換点
⑧作戦の範囲・攻撃週末店
⑨根拠地の選定
⑩あえてリスクをとる
とりあげているのは、ナポレオン戦争・第一次湾岸戦争・イラク戦争・第三次中東戦争・第二次大戦のアフリカ戦線・サイパン島戦闘・ガダルカナル作戦・フォークランド紛争・ノルマンデイ上陸作戦などです。
むずかしそうに見えるかもしれないが、そうではありません。戦国時代の戦いや陣取り合戦、騎馬戦やサッカー・ラグビー・アメフトなどと共通の勝つためのやり方です。
軍事合理性(勝つためどうするか)は簡明であると思いました。
この作戦術を南西諸島防衛戦に応用するのが本書の主眼ですが、大したことありませんでした。
④・⑤・⑥についてはあまり言及がありません。
①については、尖閣・南西諸島について、中国軍の上陸を阻止すること・上陸された場合排除すること
②については、中国軍の重点は、中国軍を上陸させる「057型強襲揚陸艦」である
③については、強襲揚陸艦を護衛する駆逐艦を攻撃し、さらに強襲揚陸艦を各種ミサイル・魚雷・各種ドローンで攻撃する
④中国軍の台湾侵攻で、日本側方面が弱点
⑤中国軍の先制攻撃で戦闘は始まるので「後の先」で行くべき
⑥作戦は政府は口出しせずに、実施部隊に任せるべき
⑦わが方が先島諸島の制空権・制海権を保持することが重要
⑧防空手段の強化・自衛隊の行動自由度の向上
⑨日本が最初に手出しをしてはいけない
⑩中国に先制攻撃の気配があっても手出しをしない
ごくごく当たり前のことを言っています。
作戦術以外の著述もあります。
第一章 戦場に想定される南西諸島
南西諸島が、戦場になる可能性があることについて説明しています。
同上諸島は、ランドパワー(大陸国家=中国)とシーパワー(米国)の衝突する場所
米中が太平洋を2分割する考え=西太平洋は中国のものという考え
日清戦争の敵を討つと中国が考える
抗日戦争に勝利し、国共内戦に勝利したが、まだ台湾が残っている、という考え
九段線等勝手な中国領域の拡大
(以上中国の海洋進出の理由)
その後、台湾進攻の手段→尖閣・南西諸島への波及について述べています。
→(感想)このような考えもありますが、同書も認めるように、台湾の武力侵攻は
2000万の台湾住民を支配するため、結局陸軍を派遣しなければならず、その運搬・上陸・補給・長期支配の難しさがあり、武力侵攻可能性はかなり低いと想像します。
さらに日本には、台湾有事は日本有事ではないという選択もあります。
第2章 国土防衛戦の備えはあるか
国防に欠かせない意志と覚悟と行動力という副題で、現在の日本、意志と覚悟と行動力いずれも不足・または欠陥があるということを指摘しています。まとめませんが興味をひかれたこと数個を挙げておきます。
〇真の専守防衛は、実行力ある抑止力で、それは、中国国内を攻撃できる能力を自衛隊が持つということだ。核保有も考えるべき。
→(感想) 敵の要地を攻撃できるミサイルやドローン・爆撃機などを考えているのだろうが、これって全面戦争にならないか。筆者は日中全面戦争は考えないといって、どの章でもそれに触れていない。すべての可能性を考えるなら、全面戦争もありうるのではないか。その引き金に敵基地攻撃能力は、なるのではないか。
〇惨勝という考え・・・最悪の場合、中国軍に領土の一部を占領され、被害を受け
中国軍を排除することも考えられる。被害を受けるという意味で惨勝という。
→(感想)先制攻撃をしないのが原則なので、そういうこともあるな。その場合いかに被害を防ぐか。この考えは、南西諸島住民の人命軽視ともいえる。
〇世界の紛争は、ランドパワー(ロシア・中国・インドなど)とシーパワー(英国・米国・日本などの争いと考えられる。前者の進出を抑えようとする後者との争い。
→感想(面白い考えだけど、あやしいな。日米戦争・日中戦争・独ソ戦・ベトナム戦争
イラク戦争・中越戦争・普仏戦争・30年戦争…いずれも上の範疇に入りません。)
〇日本の自衛隊は、ポジテイブリスト(原則禁止、一部許可)、世界の軍隊は、
ネガテイブリスト(原則自由、一部禁止)である。世界の軍隊のようにすべき。
→自衛隊がどのように(原則禁止、一部許可)なのか、具体的に示すべきです。触れてないのでよくわからない記述です。
第4章 戦争に負けるということ
薩英戦争や占守島の戦闘(ポツダム宣言受諾後の千島列島北端でのソ連との戦争)や日露戦争やベトナム戦争に触れているが、まとまりがなく、何を言いたいか不明。
全体的な感想
〇前のブログで述べたように、日本国の総理大臣は、武装漁民の大量襲来など、難しい多くの問題を即時に判断せねばなりません。高市氏のように睡眠時間0~3時間では正しい判断が出来ません。またそれを自慢げに公表するようでは、困ります。高市氏は総理の資格がないと思った。
〇自衛隊の能力・活動・装備などについて不足を様々言いたてていますが、自衛隊の戦力は、世界ランクで7位とか8位になっていることに言及がない。
〇作戦術や戦術は、軍事的に考えて比較的簡明と思った。当たり前のことを言っていると思った。中国の強襲揚陸艦を攻撃するのが要点と言っている当たり前のことだ。
国民が日本の安全保障をどう考えるかという戦略が極めて大事と思った。
〇上の文でも言ったが中国共産党軍の台湾武力侵攻の可能性は低いと思った
〇核保有は、国際法違反(非戦闘員の殺傷)であり、NPT条約(核拡散防止条約)違反であり、日本が核保有をめざせば、イラク・イラン・北朝鮮のようになる。ましてや、我が国は唯一の戦争被爆国である。数十万の死者、それに(多分)数倍する傷者・心理的障碍者・被差別者への裏切りである。
〇日本は、資源・エネルギー・食糧・資材の自国調達のできない国であり、自由貿易で生きてきた国である。
戦争や国家間の重大な対立(貿易制限など)ができない国である。国家的戦略は、軍事的戦争抑止力の充実ではなく、全方位的協調外交を旨とすべきである。
中国とは、日中平和宣言、同平和友好条約の充実の方向を目指すべきである。
さらに国連の強化、国際法の強化に尽力すべきである。戦後一番戦争をした米国との同盟は、軍事面では解消すべきである。面白いことに、この筆者も、理想としては、武装中立を言っている。この点で私と同じ主張である。
日本は、憲法の平和主義を再宣言すべきである。その一手段として、国際紛争は、国際司法機関にゆだねて解決するという宣言をする。
万が一の侵略のため、この本のような作戦術・戦術の研究はすべきである。敵基地攻撃の能力は保持すべきでないと思う。作戦術や戦術についての知識は、平和主義者や反戦主義者も大いに知っておくべきと思う。そこが不足していると思う。