角栄逮捕も米の掌上の踊りか?日本は独立しているか?検察とマスコミへエールを送る傑作ドラマ

昭和44年の春入学手続きの長い列に並んでいた時のことです。大学自治会の入会勧誘が来ました。私の前の連中は誰も反応しませんでした。私は、「皆入らなきゃいけないんですか」と聞きました。上級生「いやそんなことはない、自由意思だ」そこからいろいろ話が発展しました。その上級生の話で「日本を真に独立させないと」という言葉にびっくりしました。私「えー、日本は独立してるでしょう」と言ってそこからまた議論をしました。中味は忘れました。翌年は、70年安保。きっとそんな話だったのでしょう。

 

こんな大昔のことを思い出したのは、NHKドラマ「未解決事件シリーズ10-下山事件」を見たからです。

 

このドラマ、安達奈緒子作という事で、彼女らしくいろんなものをつぎ込んでいるという気がしました。と言っても、私は彼女のドラマは、大感激した「透明なゆりかご」とつまらない、失敗策と思っている「別れのホスピス」しか見ていません。

 

このドラマ、いろんなことを詰め込んでいるので、分かりにくい面があると思います。

けれど、下山事件自身が複雑な事件と思いますので、やむを得ないのかもしれません。

 

主人公は、下山事件主任検事・布施健(森山未來)です。

最初は、偉くなった布施検事総長による田中角栄逮捕の場面で、そこから話は1949年の下山事件にさかのぼります。

 

話は、下山事件の捜査の進展にそって進みます。

「このドラマは、発見された極秘資料に基づいて作られている」というテロップが流れます。

 

捜査の推移の概要は以下の通りです

下山自殺説と他殺説の並行捜査→警視総監からの中断指令しかし次席検事馬場(渡部篤郎の許可を得て、布施は地下捜査続行。

→李中煥の告白(ソ連が下山を殺害との告白、布施、ソ連を疑う)→捜査を朝日新聞がすっぱ抜く→これを見て渡辺修二が出頭し、「李の告白が全くの嘘と供述、米国の関与」を示唆

布施検事は、GHQ下部組織(キャノン機関・CIC)を捜査する。渡辺の供述を真実と確認(布施、米国を疑う)→実行犯として旧陸軍関係者が浮上、右翼の大物児玉源太郎にも接触

CICから捜査中断要請最終的にGHQから捜査終了せよと命令、上司・馬場も承諾

→その後も、ほそぼそ捜査続行、この間、布施は、朝日新聞記者矢田喜美雄(佐藤隆太の調査や読売新聞記者の調査を参考にする。

 

まとめ「検察は、他殺説を取り、初めソ連を疑うが、のち米国の謀殺を疑い、実行犯が旧軍関係者と考え、新聞記者とともに追う。しかし追い切れなかった。この捜査には、初め日本、次に米国の権力が介入し、検察は捜査を断念」

 

ほぼ、ドラマは、今回のNHK取材班のつかんだ新情報にそった話となっています。しかし、さらに突っ込んだところもありました。実行犯が旧日本陸軍関係者ではないかという事です。

警察を自殺説にミスリードたのは、殺人を実行した旧軍関係者。替え玉を使って線路付近を歩かせたというのです。犯罪追及を逃れるためです。

 

犯人が旧軍関係となると、反戦意識の強烈な当時の国民が、再軍備を狙う旧軍閥に反感を持つ故、警察を自殺説に導いたというのです。

 

しかし「追えば消える」の繰り返しと布施が言うように、実行犯特定には至らず、米国の命令で捜査は終了、迷宮入りします。

 

なるほど、納得しました。

安達奈緒子(このドラマの作者)するどい。

 

捜査の大原則は、「犯行で得するものを疑え」です

得したのは、再軍備を果たした旧軍閥と日本を「反共の砦」にし、占領期の特権を維持した米国です。

 

ドラマのテーマは、次の3つと思いました。

下山事件の真相に迫る。

②その中で米国の日本操縦を浮き彫りにする。その意味を視聴者に投げかける。

ドラマ最終盤の布施と馬場のやり取りは、最大の見どころと思いました。

 

(布施の吉田茂を聴取したいという要望を、馬場が拒否した場面)注:吉田茂首相は、下山殺害の犯人を、韓国人李と断定している。

 

布施:(米に捜査介入されて)独立とは何ですか。

馬場:米との関係は国の存亡にかかわることなんだよ

布施:その言葉ですべてを片付ける。(検察=国家権力)に権限がないなんて、主権国

   家じゃない。権力は、立場の弱いものを守るんじゃないですか。手を汚し捨てら

   れるのは、弱いものだ。国民の一人一人を救うのが戦後の理想でしょ。そうでな

   かったら、アメリカのもたらした民主主義は嘘だ。

馬場:絶望したか。検事をやめるか。物事は複雑なんだよ。白か黒か、右か左か、国家

   か個人か。簡単に決められない。この混沌の中で、辛うじてよさそうな道を選ぶ

   んだよ。今もっともまともなのが米との関係継続なんだよ。

 

それにしても、布施と馬場のやり取りは面白い(安達奈緒子うまい)

(捜査中止命令を無視して地下捜査する時)

布施:・・・捜査を続行していいですね。

馬場:おいおい、責任は俺がとらされるんだぞ。

布施:上司はそのために存在すると思います。

馬場:(にやりとして)くれぐれも慎重にな。俺は地方に飛ばされるのは嫌だよ。

布施:ありがとうございます。

こんな上司が欲しかった。いい場面です。

 

③布施検事と朝日新聞矢田記者の友情

=検察とマスコミへの作者からのエールだ。俺もエールを送りたい。

 

(矢田が、轢死体のあった線路上でルミノール反応発見を検察庁に持ち込んだとき)

布施:これは使える。これからの捜査は、こう言う科学的根拠の積み重ねが大切。

   それが人権を守ることになる

矢田:へえー、固いな、・・・でもその通りだな。

 

(上からの圧力で捜査を実質断念した時、検事連中の残念会?)

矢田:(飛び込んできて)おい、大変な情報を手に入れたぞ。アメリカが怪しいぞ

検事連中は、反応しない

矢田:(その態度を見て)なんだ知ってたのか。

布施:捜査は実質中止だ

矢田:なんだよそれ、上からの圧力か?人が死んでんだぞ。いつまで黙ってんだ。

   国家権力がアメリカの言いなりでいいのか?偉くなりたいのか?

布施:(激怒して座卓をたたいて)日本は占領されてる。

 

下山事件10年後、雑誌で下山事件の特集が盛んに組まれた時)

矢田(検察にやってきて):おい、主任検事がこんな雑誌見てていいのか

布施:(しぶしぶ、雑誌の事件について、いろいろ知らせる)。(ぼそっと)次はあん

   たの記事を調べるよ。

矢田:(喜んで)諦めてなかったのか。

 

(15年後時効を迎える寸前、矢田が布施を訪問する)

矢田:下山事件だけどな、怪しい人間を見つけた。

布施:(笑って)あんたも変わらないな。・・・・・

矢田:俺は、時効が成立したら何したらいいんだ?

布施:権力を監視してください。少しでも何かの強い力を感じたら迷わず書け。

矢田:・・・(布施に向かって)偉くなってください。

実にいい場面です。前に布施に「偉くなりたいのか」と言った矢田が「偉くなってください」という。

こんな検察とこんなマスコミだったら、こんな落ちぶれた日本になっていない。

 

偉くなった布施は、元総理という最高権力者を逮捕する。矢田は「やったな」と喜ぶが、布施は、暗い顔で「悲しい。ほんとに私は、独自の判断で動いているんだろうか」と自問自答して、ドラマは終わる。

 

そうだなあ、なぜアメリカは、ロッキード社の日本へのわいろを公表したか。疑惑は生じるね。米国は、田中(日本)が米国の操縦から離脱すると思ったのかもしれない。

少なくとももっと操縦しやすい奴を総理に、なんて思ったかもしれません。

 

後も一つ。

このドラマには、女性は全く出てきません。

事件の関係上、時代背景故当然のことなのかもしれませんが、そして煙草をよく吸うなあと思いました。

時代は変わったな、でも米国の日本操縦は変わってないな。いや自主的服従になったのでしょうね。日米同盟安全神話が、壊れなければいいんですがね。原発安全神話のようになったら困ります。