義父の死 

5月3日、義父は93歳の生涯を閉じた。連絡を受けて急いで駆け付けると、彼は、下顎で呼吸する状態であった。

 

彼の妻が「こんなに苦しんでいるのに、なぜ救急車を呼ばないのか」と何度も何度も言う。元看護士の娘は、「今呼んでる。コロナで忙しいのでなかなか来れないんだ」と何度も言う。実は病院とは家族で看取るという約束があり、救急車を呼んでいるというのは、嘘なのである。苦しい嘘である。

 

私が行って2時間くらいだろうか、義父の呼吸は間遠になり、次第に弱くなりとうとう呼吸をしなくなった。私は彼の耳元に、「みんな来ているよ。みんなでみまもっているよ」と囁いた。最期まで耳は聞こえるというので、そう言ったのだが、果たして彼に聞こえたろうか。医者の余命1~2か月の宣告通りとなった。

 

通夜と告別式は、コロナのため極めて変則的であった。通夜でも、告別式後の仏立てでも、食事を出せなかった。当地では、通夜でも告別式でも、酒と食事の供応が普通である。通夜は、誰一人葬儀場に泊まってはいけないということで、義父は一人で葬儀場に置かれた。これまた異例であった。

 

一番困ったのは、火葬場への弔問客の20名以内という制限である。勿論お骨拾いも20名以内である。誰を選抜するかは難問であった。通夜の式・告別式でも人数制限のため、家族葬と新聞に告知した。

 

今日は、もう初七日である。自宅でささやかな法要を営んだ。遺族には嵐のような日々であったろう。

 

義父は特攻隊の生き残りである。

通夜の席で、40代前半?のお坊さんは、「彼のような特攻隊のおかげで、今の日本の繁栄がある」と言っていたが、この言葉の意味するところは複雑である。

 

全体的に見れば、特攻隊を含めての戦争死が=敗戦という全体状況が、よくも悪しくも戦後を作ったとは思う。敗戦の結果の、国民の平和の希求、米国依存の安全保障=軽武装・経済発展等が戦後をつくったと判断する。

 

一方で、特攻隊は、敗戦必至の中で編み出された人命軽視の戦法であって、私は特攻隊死は、無駄死にと思う。

 

 

死後に知ったことだが、義父は多くの短歌を残していた。それを見ると特攻隊への参加(中学在学中に志願した)は、彼の誇りであり、戦後の生き方の支えであったと思われる。苦しいときでも、特攻隊に志願し、死を覚悟した精神で戦後の様々な困難を突破してきたのだと思われる。個人レベルで見れば、特攻隊に参加し生き残ったのは、大きなプラスであると思う。

 

義父の短歌には、恋を歌ったものが多数あった。若いころのも年老いた時のも。同時に妻への愛の歌もあった。どうも死を覚悟したとき編集したように見える。これをなぜ残したか、私の大きな大きな疑問である。

 

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「ビッグイッシュー日本」から、寄付へのお礼の手紙が届いた。それによると、「コロナ緊急3か月通信販売」への参加者は6000名以上であり、4月30日、路上販売者63名に、5万円ずつを配ったとのことである。5月末にも給付できるとのことである。私の寄付も、いくらかは役だったかな。Colaboと反貧困ネットワークからは連絡はない。あれ、こちらの住所とかは知らせなかったっけ?・・・忘れた。まあ、有効に使ってくれていると信じる。

 

Colaboと言えば、

馳浩元文科大臣が、Colaboへ訪問したときのセクハラ(女性の腰に手を触れた件。馳は謝罪している)は、もっと問題になってよいと思う。コロナのせいか、うやむやになっているようだ。

 

コロナ騒動のどさくさ紛れと言えば、自民党の検察の定年延長法案は、問題だ。政権の非合法な己の利益のための好き勝手を、合法化する法案である。この法案が通れば、検察の最高人事に政権の思惑が反映できるという悪法である。

 

安倍政権の9条改正と同じ趣向である。既遂の悪事(憲法違反の政府解釈に基づく立法=安保法制)を合憲化するという趣向である。「検察幹部定年延長は政権の随意」法案もまたコロナ騒ぎの陰に隠れて世間の目が届いていない。マスコミが積極的に取り上げてほしい。

 

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10万円をColabo等への寄付以外、地元飲食店利用に使うというのは、なかなか難しい。というのは、焼き鳥屋もとんかつ屋蕎麦屋も、5月末まで完全休業だからである。わが福島県は、現在のところ、飲食店等への自粛要請の解除はない。結婚式場のやっている臨時の出前と寿司屋の出前でもとろうかと思っている。

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世界では、窒息から逃れるため経済活動復活への動きがある。それはコロナウイルスの喜ぶところである。きっとまたコロナウイルスの跳梁が起こるだろう。その時またロックダウンや自粛要請が起きるだろう。経済はまた窒息するに違いない。

 

ワクチンが開発され多くの人に行き届くのが先か、6・7割の感染が先か。この間特効薬ができるか、ウイルスはそれを乗り越える変質を遂げるか。医療体制は持つか。

 

私は生き延びられるか、わが家族はどうか。福島県は現在まで81名感染し、死亡者は一人もない。まあ、あんまり人を殺さないウイルスのようではある。しかし、感染し呼吸が苦しいのは嫌だな。