5月15日に入院し、5月17日に退院しました。PSA(前立腺がん)の数値が、5.2と基準の4.0をオーバしたため、癌かどうかを調べるためです。前回は、4.1でがんが見つからなかったのですが、今回はどうか、2週間後に結果が分かります。
知ってはいたのですが、やはり大変でした。メインは肛門から器具を入れて、細胞を採取することです。(16カ所)準備の浣腸・尾てい骨麻酔、術後の行動制限(翌朝6時までベットから動けない)など苦痛でした。しかし、帰宅後の血尿・血便が、早くに治まり安心しました。
でも1週間は、力仕事とお酒は厳禁です(きつい)。とはいえ、畑仕事を徐々にやってます。散歩は、咳が収まらぬこともあり、まだ復活してません。
さて2泊3日の謹慎中、さんざん読書をしました(というか、それしかできないんです)
読んだのは、①磯田道史「日本史を暴く」、②半藤一利・江坂彰「日本人は何故同じ失敗を繰り返すのか」③和田秀樹「70代で死ぬ人、80代でも元気な人」④吉村達也「金閣寺の惨劇」⓹山本周五郎「白石城死守」⑥吉村昭「戦艦武蔵」⑦吉田満「戦艦大和」
です。
圧倒されたのは、⑥と⑦です。この二つは再読なのですが、これについては、いつか感想を別に述べるつもりです(考えがまとまればですが)
①は、戦国から幕末の歴史余話でして、へえそうか、ぐらいであまり関心を持ちませんでした。②は、太平洋戦争と戦後経済についての二人の雑談でして、知っていることも少々、知らないことも多々ありましたが、これまた印象にはあまり残りませんでした。
ま、雑談です。
③は、73歳かつがんの疑いありの状態なので、興味深く読めました。読みやすく、新書ながら、1時間もかからないで読んだかなあ。そうだね、と思ったことは、A、好きなことをして生きよ、B、団塊世代は、偉い、よく頑張った、おとなしくなるな、発言をせよ、C、夫婦単位の生活から抜け出してみよ、D、ランチは外食で、E、「知らなくて幸せ」という癌との向き合い方等々、なるほどと思いました。
④は、金閣寺で金色に染まって死ぬという荒唐無稽な推理小説。まあ、読んでいるうちは面白かった。家族間の恐ろしい葛藤を描いている。こんな家族もあるんだろうな、とは思った。
⓹山本の短編・中編は殆ど読んでいるが、これは、表題作一つを除いて初読。全遍、山本節。山本節は、やはり俺には合っているなあ。気に入った二つを紹介します。
矢押(やのし)の樋
日照りで枯れ死しそうな田へ水を引き、逃散寸前の農民を押しとどめるために死んだ矢押兄弟の活躍を描く。その水は、お城の内堀の水。勿論重大な幕府法令違反である。
矢押梶之助(弟)の言葉「彼等(農民)の苦しみをよそにして、徒に濠の水を守っている時ではありません。今こそこれを切って、彼等と苦しみを共にすべきです」
守るべきは、庶民の生活。自分の利益優先で行動している今の政治家に聞かせたい。
菊屋敷
主人公は、学者の父を持つ長女の志保。この小説は、志保の清冽な生きざまを描く。
彼女の父は儒学者でありながら、国学への関心も高い。志保は、才気煥発かつ美人の妹の小松に気後れを感じ、学問を目指すが、父はこれを禁じる。
志保は、門人たちの指導者となってほしいという願いを退け、村の子供の手習いの師匠となる。そして事情により小松の息子を養育することになる。その養育に志保は全力で臨む。
しかし、やがてその息子は実母小松に奪われる。この息子は、志保の教えに従い、実母を選ぶのだ(嗚呼)。そして、志保をひそかに愛していた門人まで失う。幕府への反逆者として捕縛される。彼等門人たちは、体制に順応せず、真理を求める若者たちである。
志保は、幸せであったか。分からぬ。もっと自分の俗な欲望に生きた方がよくはないか。その方が幸せでなかったか。分からぬ。
しかし、つつましく、かつ前向きに全力で生きる志保は、魅力的である。