朝日新聞 2月23日の考論に「歴史的圧勝の意味」という題で、長谷部恭男(憲法学)
、杉田敦(政治理論)、加藤陽子(歴史学)の3氏の鼎談が載っていた。
今回の総選挙とその結果についての話である。話はあちこちにとんでいてまとめるのは難しい。しかし、碩学たちが言うことで興味深い。発言の順番通りに紹介する
杉田・法大教授
〇高市首相が連呼した「日本列島を強く豊かに」は、トランプの「米国を再び偉大に」と同じで意味不明、「責任ある積極財政」も何となく前向きなイメージを振りまくことに成功した。
加藤・東大教授
〇悪天候などで投票率が下がった場合、組織票が強いという従来の行動分析では説明つかない。「高市さんを勝たせねば」という推し活行動様式が国政の場で開花した。
長谷部・早大教授
〇総選挙を人気投票にすり替えた高市さんの作戦勝ち。高市さんは、アイドルとして戦った。それが出来たのは、首相として実績がゼロに等しいから
加藤
〇今回の解散は、高市さんが弱い政治家だから。予算委で野党が予算委員長のままでは身が持たないと思ったからと思う。実に後ろ向きな動機だ。
杉田
〇ブレーキのついた民主主義から見ると、今回のような大義なき自己都合解散、人気投票的な選挙は、おかしい。拙速でも、選挙で有権者の意見を聞くというやり方は、有権者を自分の権力を支える道具として考えている。維新の大阪都構想も同じ。成立するまで問い続けるのは、独裁者が好む手法。衆院の任期4年は最大限尊重すべき。ただでさえ強い政権に自由に解散権を与えるのはおかしい
長谷部
〇日本は国政選挙のサイクルが異様に短い。有権者が落ち着いて考える時間がない。
今回は、人気投票で高市さんが勝った。今後マネする人が出てくる。解散権を縛る必要。
加藤
〇熟議が大事といっていた立憲が数日で新党結成をしたのが過ち。新党結成のトップダウン方式に不満があったのでは。辺野古基地問題、安保法制解釈での妥協が従来の支持者を失望させた。
長谷部
〇中道の安保法制についての説明はよく聞けば、個別的自衛権の範囲でしか通用しませんといってといっているので、立憲の従来の方針を大きく変えたわけではない。しかしそれは、一般の人には分かりにくい
杉田
〇公明との合流で立憲の政策軸が右により、左の人の支持を減らしたのは間違いない。しかし、丸山真男が言うように「落としたい人以外の人で、勝ちそうな人に投票」というのが、政党政治の作法。
加藤
〇高市氏の「今年度中の安保関連三文書の改訂」は、米国の変化に気を付けるべき。
米国は、中国敵対視を、弱めている。2022年に日本は中国敵対視を強くしたが、中国との経済的友好性を保てるよう書き換えるべき
長谷部
〇米国は、「法の支配」から「力の支配」を重視するようになった。しかも損得勘定で動くようになった。こんな米国にどこまでくっついていくつもりか。新しい構想が必要。高市さんを取り巻く右派は米国べったりで、新しい構想なぞでるはずがない。
加藤
〇先の大戦で日本は、「A国が〇〇すれば・・」という「たられば」を戦略を混ぜ込んだ。日本の悪しき伝統だ。幅広い熟議が必要。
杉田
〇市場が財政悪化を警戒し、「ノー」を突きつけるかもしれない。その時、外に敵を作って国民の目をそらすことにならないか、それが心配。国会はその防波堤になるのは困難。世論しか「ミニトランプ」を止められない。
加藤
〇「これからレアアースに困らない」「外為特会はホクホク」など高市首相の発言は、軽すぎで首相の資質を疑うレベル。憲法改正は、他国から「アジア太平洋地域の国際秩序に重大な改編をもたらすもの」とみられていることに注意。
杉田
〇今回の選挙では、野党候補についての虚偽情報が大量に流された。一方高市氏側の宣伝は、おそらく高額な宣伝費で動画閲覧サイトに氾濫し、影響を与えた。
根拠がなくとも断言する政治家は人気を博し、様々な留保をつける政治家は弱いとみられる。政策よりもイメージで政治家が判断される。
長谷部
〇「責任ある積極財政」は、プライマリーバランスを複数年度を考えており、無責任な積極財政だ。これは新語法だ。積極財政を進めれば、円安・物価高になり人々の生活も苦るしくなる。政治をよくすることができるのは、ちゃんと自分の頭で考えることができる人だけです。