男も女も見るべきドラマ(3)「透明なゆりかご」(7~8)

第7回 小さな手帳(ここもネタバレです)

小さな手帳とは、母子手帳のことである。

 

この回では、ここまでの語り部・アオイ自身の事と彼女の幼なじみミカのことが、紹介される。

 

始まりは、妊娠したミカの登場である。彼氏とけんかして追い出されて、行くところがなく、産院に来た。産院の厚意で出産まで入院することになる。

ミカの左頬には大きな傷がある。

幼なじみのアオイは、その頬の傷におもいいたる。

小学4年の時アオイは、学校でいじめられているミカを助ける。仲良くなってミカが大事にしてる母子手帳を見せられる。

ミカのうちに行くと、ミカは、母親に無視され、虐待されている。

母親が再婚して、ミカは連れ子となり、邪魔にされる。新しい夫との間に子(弟)ができるとそれがエスカレートする。母子手帳も取り上げられた。

 

ある時、弟がミカの大事にしてたもの(絵かな)をはさみで切っている。それをミカは阻止しようとする。そして母親ともめ、頬に大きな傷がつく。その後母親とはあってない。母が彼女を養護施設に入れたのである。

養護施設にいるうち、ミカは、彼氏と出会い、妊娠する。施設には黙っている。彼氏と喧嘩したミカは死のうかと思う。そこへ、実母が死んだとの知らせがあり、母親の荷物が届く。

そこには、母に取り上げられたボロボロの母子手帳があった。母子手帳には、生まれたばかりのミカへの、母親の降り注ぐ、あふれる愛があった。

 

彼女は、生きようと思う。

 

ミカが母子手帳をアオイに見せたころ、アオイは、母子手帳を見ることができない。そして、18歳の今でもできない。

 

アオイは、現在でも母親に嫌われていると思っている。アオイは変な行動をとる。例えば、ミカの隠された靴を探しにプールに飛び込む。そして見つけてきたつぶれたバレーボールを、「使える」といい張る。勉強もかなり遅れている。何かに気をとられると没入する。

 

母親は、「この子おかしい、こんな子、私の子なの、どうしてこんなこともできないの、なぜ約束を守れないの」などという。

 

母親は、心では、アオイをまともに育てられない自分をも責めていたのである。

 

アオイはふつうの子と違う。それはそのはずである。

 

注意欠陥多動性障害という病気だったのだ。高校時代、医師に診てもらって分かった。

 

アオイは、ミカに再会し、出産した彼女が一生懸命母子手帳を書いてるのを見て、初めて自分の母子手帳を見る。

 

ミカは言う。「今はこの子とてもかわいいけど、いつかこの気持ち忘れてしまうかもしれないから、残しておきたい」と。

 

夜中、恐らく不安にさいなまれながら、アオイは、自分の母子手帳を見る。

そこには、生まれたばかりのアオイに対する、母親のあふれる愛情があった。

 

アオイの独白で、この回は終わる。

「純粋な愛が続かない場合がある。形が変わる場合もある。でもほんの一瞬でも

世界中の誰よりも愛されたというあかしがあれば、生きていける。そしていつか誰かを愛することもできると思う」

 

 

 

このドラマを見て、注意欠陥多動性障害で看護師ができるんだろうか、という疑問を持った。危険じゃないのか?薬は飲んでいるけれども、大丈夫か。そう思うのは俺の偏見か。差別なのか?私にはわからない。ドラマでは、アオイは優秀な看護師である。見習いだけれどもね。この病気の名前が仰々しくてまずいのかな。まずは事実を知る必要があると思った。

 

このドラマを見て、母子手帳ってとても大事なものと思った。

 

皆さんは自分の母子手帳を持っているでしょうか。私は今持ってません。小学校の頃でしょうか、見た記憶があります。母が見せてくれました。生まれた時の身長・体重・生まれた場所・血液型・日時などしか書かれてませんでした。忙しくて気持ちを書く余裕なんてなかったに違いありません。その後見た記憶はありません。あの手帳はどこへ行ったのか、まったくわかりません。

 

でも愛された記憶は残っています。それは主に母親の話しの中で感じました。

 

私が歩いた最初の日のこと。母が歌を歌うと背中で歌ったこと。私がセリが好きな理由。もらい乳。

はいはいして、囲炉裏に落ちて、頭に大やけどをしたこと(今も禿として残ってます)

少し離れたお店の女主人に「あれ、この子(私)育たないかと思ってた」と言われ、怒ったこと

年長から入った幼稚園が嫌で嫌でしょうがない時、結局は退園を認めてくれたこと

                                  等々

「昔々しきりに思う慈母の恩」(「春風馬堤曲」蕪村)、私の大好きな句です。

 

誰しもごく小さいころ母親に愛されたという記憶があると思います。直接でなくても、親の話しの中でも。

このドラマで言うように、愛された記憶は生きる糧です。

第一、今生きていることは、愛された証拠だと思います。最低限、少なくとも中絶されませんでした。

 

第8回 妊婦たちの不安(ネタバレ)

この回の主人公は、望月看護師。

彼女は、医師・婦長と並んでこの医院の中心的存在である。能力が高く、仕事もてきぱきする。心配りも十分である。気も強い。経験も豊富である。

 

彼女は、子供を欲しいと思っている。そして待望の妊娠。

 

ところが、そこから思いがけない彼女の苦悩が始まる。

 

まずは、体の不調。つわりがひどい。自信と誇りのある彼女は、今まで通りに働こうとする。しかし、体が利かない。考えられない失敗もする。頑張りたいけど頑張れない。

 

また、彼女は、子どもを生んだ後、子育ての為に夜勤は出来ないと悩む。夜勤ができない看護師は、産科の看護師としては、役立たない、それでもこの仕事が好きだ。どうすればいいと悩む。助産師の資格も取りたいのに、と悩む

 

婦長は言う。「夜勤が出来なくとも十分役立つ、あなたは、産むことを選んだ」

医師は言う。「私から産科医の仕事を取ったら何もない、仕事は大事と分かる、でも産むと決めたら選択の余地はありません。休暇を取って下さい」

 

キャリアウーマンの中森さんも、プロジェクトから外されたと悔しがる。でもつわりで苦しむ。

 

ここには、産むことと仕事やキャリアアップのギャップという問題がある。どれほどの女性が、産むことで仕事やキャリアを諦めただろう。きっと多いんだろうな。それは、社会全体から見れば、損失だろうな。

 

夫との諍いも生じる。優しい夫なんだけど、やはり妊娠や出産については、無理解なのだ。男と女の大きな違いがここにはある。

男の産科医の由比も言う。

「男には子宮がありません。産科医の私には、体の仕組みや生理や病気のことはわかります。しかし妊産婦の深い心まではわかりません、女医の、「女だからわかる」で、す通りすることも、勉強して分かろうと努力しています」

 

望月看護婦の「(夫に対して)ただ甘えたいだけなのに」という、夫に言えなかった言葉が、ヒントかもしれないな。