「推定脅威」を読んで

未須本有生「推定脅威」を読んだ。

軍需会社社員と航空自衛隊の技術員・パイロット達が、自衛隊機墜落事件という犯罪を追う推理小説である。

その墜落させる方法が面白い。自衛隊機の性能とパイロット個人の特性を利用して墜落させるのである。航空機に関心ある人には美味しい話だろう。こんなこともあるかと思わせる作家の力量である。

社員も自衛隊員も魅力的に描いている。まあまあ面白かった。

思ったのは、産軍共同体の絆の深さである。その輪には政界もあるのだろう。非武装を考える場合、抵抗は極めて大きいな。何せ自衛隊機で食っているわけだから。

10年以上の長い期間をかけて、(1)自衛隊を段階的に国連軍に移譲する。他国にも自国軍を国連軍に移譲することを呼び掛ける。(2)自衛隊を、国際・国内災害派遣部隊に編成する。(3)軍需会社を民間航空機産業への転換を促す、(4)自衛隊を公共建築土木部隊へ編成する。(河川の石垣化、山の手入れ等民間企業の儲けにならない事業で必要なこと)(5)国際海上警察へ編成する。
こんなやり方でどうだろう。

これを非現実的と言わないでほしい。テロや核を考えると軍事力による国防も非現実的と思うから。人・物・金・情報の相互依存を考えると戦争も非現実的と思うので。

この本の中でなるほどとおもったこと。>・・・ <が引用部分。

軍需会社の社員は、>「ほぼ100%ありえない脅威からの攻撃に備えて、日々膨大な経費を使って訓練している自衛隊の隊長とも思えない」<という。それに対して隊長は>「それを言っちゃ、身も蓋もないんじゃないか」<と苦笑いして言う。

それが事実なんだと想像する。
核兵器のおかげか、テロのおかげか、米軍の抑止力のおかげか、自衛隊の抑止力のおかげか、国際法のおかげか、国際世論のおかげか、経済を中心とする相互依存のおかげか、諸国民の公正と信義のおかげか、諸国民の日常生活への欲求のおかげか、、難しい問題だが、ほぼ100%侵略はありえないと私も思う。軍事衝突があっても全面戦争には100%ならないと思う。

軍事力や軍事抑止力以外での国民の日常生活の平穏・安定・幸福を考えるべきだ。