世界の1割強の国に軍隊がない

前田朗著「軍隊のない国家」(日本評論社、2008年)を読みました。軍隊のない27カ国を文献で調べるのみでなく実際行って調べた本です。以下に感想を述べます。

(1)こんなに多くの国に軍隊がないということにびっくりした。日本が憲法通り軍隊=自衛隊がなかったなら、この国々と一緒に軍事力に拠らない平和構築を世界に示せただろう。我々は戦後軍事力で解決できないことを多く目にしてきた。

世界に軍事力以外の別な道を示すのが、日本の役目だろう。普通の国になる必要なんてない。そのためには、1951年独立した時に、安保条約を結ばず、全面講和すべきだったと思う。今からでも遅くない。世界三位の経済大国が非武装路線をとれば、世界を変えることが出来るぐらいのインパクトがある。「最後は力が正義」の米国・中国・ロシア・イギリス等の中にも賛同する人も出てくるだろう。

日本は、「紛争は国際司法裁判所国際海洋法裁判所WTO等国際調停機関にゆだねる」と宣言することだ。
そうして、軍隊を持つ国々に自国軍廃止を呼び掛け、それを国連軍にという提案をすればいい。今日本は強力な自衛隊がある。これを国連軍にするから賛同しないかと言えばいい。賛同する国があるかもしれない。そんな国がないなら、軍縮を呼びかければいい。少なくとも27カ国が賛成するぞ。これは強力だ。諸国民は皆、戦争なんていやだと思っているのだから。中国の人々も、金儲けの方が良いだろう。北朝鮮の人も戦争よりは豊かな生活と思っているはずだ。(軍事関係で食っている人は別。)米国の若者もロシアの若者も、人殺しの訓練や人殺しや建物・自然破壊や殺されるより、恋人とのベットタイムの方がいいと思っているはずだ。
あれー、感想と言うより、いつもの言い飽きた主張になっちゃった。


(2)本日の朝日新聞には、19の県議会が、「改憲を」という意見書を採択したという記事が載っている。日本会議という運動団体(安部普三首相が特別顧問)が自民党と連携して採択とのことだ。その日本会議は、「憲法改正によって日本の真の独立を目指す」と言う主張だそうだ。日本の真の独立には、安保条約廃棄が必要と思う。これまでずっと米国の言いなりだったじゃないか。そのもとは安保条約だ。も一度憲法を考え直すのも真の独立になると思う。(私は、現憲法をも一度選びなおす)同時に安保を廃棄しなけりゃ独立と言えない。日本会議自民党にその考えはない。故に彼らの言う真の独立というのは嘘・まやかしそのものだ。

上述「軍隊のない国家」には、アイスランド(人口約30万)が出てくる。アイスランドでは、1951年以来米軍が駐留してきたが、2006年撤退したそうだ。同国には、もともと軍隊がないので完全な非武装国家となった。この本で言うとおり、東アジアとヨーロッパは、緊張関係が違うので、日本もまずはじめに武装中立と言う方式もいいと思う。

(3)緊張関係でいえば、ルクセンブルク(人口約40万)が面白い。ドイツとフランスという強国に挟まれた国である。周りの強国に併合や支配をうけた歴史を持つ。それなのに?それだからこそ?1867年に非武装永世中立国となった。しかし、中立にもかかわらず、2度の大戦でドイツに占領された。戦後非武装永世中立路線を捨てる。その後は、外交努力により小国にもかかわらずEUを作る中心となる。本部を自国に持ってくる作戦は素晴らしい。こんな外交こそ、安全を保つ最強の武器ではないか。現在でも自国軍は持っていない。NATAに参加しているので志願のNATO軍兵士900名を持つ。こんな安保政策もある。

(4)コスタリカ(人口約400万)は非武装中立国家として有名だが、隣のパナマ(人口約300万)も面白い。1989年アメリカに侵略されて、パナマ軍は解体された。1999年の米軍撤退により、パナマは非武装国家となった。ただし憲法で「外部からの侵略の脅威がある場合、…一時的法律によって・・・特別警察組織を編成する」とある。普段は非武装、臨時に武装なんて方式もある。

(5)ドイツとオーストリアとスイスに囲まれたリヒテンシュタイン(人口約3万)も面白い。非武装永世中立国になったのが1868年
。日本でいえば明治維新の年だ。その後ナチスドイツの勢力が伸びてくるなんてこともあったが、外交をうまくやり中立を続けた。

(6)日本も、安保条約や軍事抑止力を自明の前提と考えずもっと本質的に考えるべきだ。中国の脅威ばかりを言いたてず、それを低減させる方法をもっと考えてみるべきだ。近頃百田某が非武装国家を馬鹿にしたような発言したと聞いているが、ルクセンブルクは、2013年一人当たりGDP世界1位であり、アイスランドのそれも日本より上である。コスタリカのサッカーを見れば馬鹿に出来る国じゃない。非武装国家には小さい国々が多いけれど、それらの国は米英露中仏日独伊のような戦争犯罪は犯していない。馬鹿にしちゃいけないよ。

(7)100%イスラム教のモルジブ(人口約30万)、人口約120万のモーリシャス、1740年から非武装モナコ公国(人口約3万)、言わずとしれたバチカン(人口約800人)、2006年イギリスのシンクタンクが「世界一地球にやさしく幸せに暮らす」としたヴァヌツア(人口約20万)、13世紀から非武装でやってきたアンドラ公国(人口約7万)など、非武装国家も魅力いろいろだ。いろいろ勉強になった本である。