駆け付け警護任務を自衛隊に与えてはいけない

昨年成立した安保法制の、最初の実質的発動である「駆けつけ警護」が一昨日閣議決定された。今度派遣される自衛隊は、「駆けつけ警護」が出来ることになった。駆け付け警護とは、民間会社員やPKO 要員、NGOが何らかの勢力に襲われた場合、自衛隊が武器を持って助けに行く行為である。私は、自衛隊に駆け付け警護と言う任務を与えてはいけないと思う。その理由を述べる。

(1)法の支配(立憲主義)と言う立場から・・・全ての行為は、ルールに従って行うべきと言う観点。

報道によると、駆け付け警護には、厳しい限定がついている。(1)活動地域は、南スーダン首都ジュバとその周辺のみ、(2)他国軍人救助は対象外、(3)他に対応できる国連部隊がいない場合、(4)応急的措置として、(5)国、国に準じる勢力が敵対勢力、(6)発砲が出来るのは、銃で威嚇→警告射撃という手順を踏んで→相手が撃ってきた場合に、発砲できる、(7)銃撃戦が行われていない、(8)任務不能なら撤退、など限定がついている。

こんな厳しい限定条件の中で、自衛隊員は、自分の安全を確保しながら任務が遂行できるのだろか。私は無理と思う。

たとえば(2)。これは論理矛盾を含むと思う。民間人やNGO職員はいい。しかし、他国のPKOから救助要請あった場合は、どうなるか。他国のPKO要員は、もともと軍人である。この軍人が、PKOとして活動してる場合は、軍人でないと認定するほかないけれど、これはすっきりしない。派遣された自衛隊が、要請してきた勢力を他国軍人と考え、日本の独自の論理で断わるのは、難しい。また断った場合、自衛隊は、他国から白眼視される可能性もある。他国のPKOは、軍人を救助するのも当然と考えているから。

またもう一つ、(6)の場合を考えよう。自衛隊員が銃で威嚇している時や警告射撃の時、襲撃している相手は、撃ってこないだろうか。相手は、自衛隊員に銃で威嚇された場合、撃たれると思って撃ってくる可能性は極め高い。自衛隊員は、撃たれる可能性が高い。勿論撃つ可能性も高い。

この二つを考えただけでも、無理がある。

何故このような厳しい限定がついているか。それは憲法9条の制約があるからである。

もともとから考えてみる。憲法の許す自衛隊の活動は、日本が他国に侵略された場合だけである。自衛隊の行使する交戦権も、武力による威嚇も、武力の行使も、自国が侵略された場合だけ発生するものである。それは、憲法9条の芦田修正、つまり「国際紛争を解決する手段としては」と言う文言の挿入から、発生した許容される活動範囲である。(侵略された場合というのは、国際紛争に入らないという解釈。また侵略された場合、全ての国家が持つ本来的自衛権=個別的自衛権の発動として、自衛隊武力行使が可能となり、交戦権も発生すると言う考え)

この憲法PKO派遣の矛盾を何とか解消しようとしたのが、PKO派遣5原則である。しかし、それとて、きちんと考えれば、自衛隊の行動できる範囲から言えば、憲法違反と思う。つまりもともとPKO自衛隊を使うことが無理筋なのだと思う。無理に無理を重ねて、安保法制の一つ改正PKO法を成立させた。私は、改正pko法は憲法違反で、できないことを自衛隊にさせることになると思う。国連PKOへの協力は、自衛隊でない別組織でやるべきであった。非武装の組織でやれる事をやるべきであった。出来ないことは、できなかったのである。

憲法が変わってない以上、厳しい限定があるのは、当然である。しかし、上述のように、厳しい限定のもとでは、自衛隊員が自分の身の安全を確保しながら、任務を遂行するのは、無理なのである。

だから、内閣は、駆けつけ警護と言う任務を自衛隊に与えてはいけないのである。

(2)個別的な、現在問題になっている今の南スーダン駆けつけ警護について
上述のように、もともとのPKO協力法も改正OKO法も憲法違反だと思うけれど、憲法違反でないと仮定して考えて見る。PKOに自衛隊を派遣できるのは、PKO5原則を満たす場合である。5原則とは、停戦合意の成立、両当事者からの要請、中立の立場で、これらが満たされない場合撤退、護身的武器使用のみと言うことである。現在の南スーダンでは、政府と反政府勢力の衝突が起きている。多数の死傷者も出ている。停戦合意は、ないと判断すべきである。だから自衛隊は、撤退すべきであると思う。


(3)憲法を改正して、PKOの駆けつけ警護をするべきか。・・・日本の国際協力について・・・

国際協力が大事なことは、言うまでもない。しかし、PKOは、国際協力の一つでしかない。さらにPKOには、非武装の活動もある。国際協力には、様々ある。経済協力、国連維持への貢献、法の支配への貢献等様々ある。その形態も、民間会社の経済活動、NGO、国際NPO、個人、pko様々である。

現在まで世界は、日本を自国が侵略されない限り、武力を行使しない国家と考えている。この認められたアイデンティテイを捨てて、他の国のようにする必要はない。武力が全てを解決しないのは自明であるからである。日本は、PKO以外で、あるいは、PKOの非武装的行為の範囲で国際貢献すべきである。そしてそれを大いに宣伝すべきである。他国の真似をする必要はない。PKO協力法は、湾岸戦争の時、随分お金を出したのに、クエートから感謝されなかったというトラウマから作られたものである。前にも云ったが、お金とは税金である。国民の汗の結晶である。大事なもので貢献しているのである。さらに言いたい。日本の貢献は、お金だけじゃないとおもう。経済力はあるけど、軍事力で自分の意見を通そうとしない国家というモデルは、大きな貢献と思う。もし日本国憲法通りに努力していれば、何も卑下する必要はない。米英仏ロ中独伊と違う世界人類の平和的生存権への貢献を考えるのが日本の誇りと思う。故に憲法改正してまでPKOの駆けつけ警護をする必要はないと思う。