映画「二十四の瞳」・・一番見た映画

 寅さんの映画について書いていて、ふと書きたくなったので、書く。映画「二十四の瞳」は、おれが一番多く見た映画だ。もちろんビデオに撮って見ている。最初から最後まで通してというのは、3回くらいしかないが。ある場面ということでは、あるいは途中からということでは10回以上になると思う。
 この映画は泣けてくる。主人公の女先生は、良く泣くが、見ている私もひどく泣けてくる。なぜだ。先生自身の悲しい出来ごとー先生を辞めたこと、母・夫・娘の死と教え子たち悲しい出来事ー戦死や病死や夜逃げや盲目になったこと。悲しいことが多すぎる。その背景には、日本の巨大な歴史体験=戦争がある。
 しかし、画面は明るい。瀬戸内海の戦後すぐの頃の美しさ、小豆島の美しさ。子供たちの純真さ、かわいさ。
 気に食わない点も挙げておこう。高峰三枝子の声ーどうしようもなく固い。先生としての「国定教科書云々」という戦時教育への批判ー正しい認識と思うが、この映画にそぐわない。公式主義的だと思う。
 この映画の成功の一番のポイントは、小学校唱歌を多用していることだとおれは思う。多くの小学校唱歌を使っている。なぜいいのかな。それは、小学校唱歌は、子供の純真さやもともとの日本の風景の美しさ、日本人の心根の優しさを表わしていると思うから。
 そして唱歌仰げば尊し」だ。先生の喜びと悲哀が多分この映画の主題だろう。その背景は戦争だが。先生の悲哀と喜びは、先生の一生懸命さから生じる。そんな先生は、やはり「仰げば尊し」の斉唱に値する。だから始まりと終わりで、「仰げば尊し」が流れるのである。
 名作と思う。いやそんなことはどうでもよい。おれはこの映画が好きだ。それで良い。