賛成派も反対派も読んだ方がいい「原発ホワイトアウト」(1)

①若杉冽「原発ホワイトアウト」を読んだ。福島第一原発事故後の原子力ムラの復権を描いている。最後は、テロによって
再稼働した原発メルトダウンする話で終わる。

②小説なのでありそうなウソである。しかし原子力ムラの、官僚・議員・電力会社等が自分たちの利益をどう守っていくかをきわめて本当らしく描いている。なるほど、こんな風にするのかと良く納得できた。経産省辺りの官僚が書いたというのは、本当かもしれないと思った。
 賛成派は、原発再稼働・輸出・将来の原発新設のため参考にしたらいい。実際このようにしてるんだと思う。そうして、もし再稼働出来たとしたら、再びの原発事故で日本崩壊を起こさないための参考にすべきだ。
 原発事故→日本売り=円・株大暴落、国債大暴落・デフォルト→超インフレ→国民生活破壊というシナリオは100%確かと思うからだ。そうなれば、原発賛成派も反対派も無関心派も何もない。等しくひどいことになると思うから。

③私は原発反対派である。この本は、どうしたら原子力ムラに対抗して原発再稼働・輸出・新設等を防ぐかを考える参考になった。
反対派のみなさんはぜひ読んで欲しい。自分には理解できないところも多くあったので。間違いもあるだろうから。戦いには、相手のやり方を知ることが極めて大事だから。(この小説の真実もウソも含めて知っておく必要がある。われわれ反対派も全てを想定していないと勝てない)

④以下章ごとに概要と感想を書く。
1章 選挙の深奥部  
去年今年の保守党(自民党)の勝利の陰に日本電力連盟(電気事業連合会)の活動があった。電力会社から保守党と民自党(民主党)へ各世帯の情報が提供された。→本当だろうな。多分。

2章 幹事長の予行演習  
マスコミ・国民対策のために、官僚が自民党の幹事長の会見の訓練をする。その中味は、目立たぬようにひそかに「再稼働」「電力システム改革阻止」の方向を入れ込む。→官僚は頭いいな。俺らも注意して見てないと騙される

3章 フクシマの死  
この本の反原発の中心人物の紹介 玉川京子の紹介。
この章には、反原発デモ最前列の人を撮っている私服警官も描かれる→ブログの友人たち気をつけて。変装や毎週入れ替わりで対抗できないか。

4章 落選議員回り  
電力会社は、落選議員にも保険として手を差し伸べている。→用心深いな。民主党にも気をつけねばならぬ。
>「脱原発のデモにどんなに人が集まっても、今日の午前中の二票ほどの力は持ちえない」<(電力幹部)
→うーん。そうかもな。1960年安保闘争も岸は倒せたが、日米安保改定を阻止できなかった。しかし当時と違う部分もある。選挙民の流動化である。今回自民党も風で勝利しただけだ。数年前民主党への政権交代を実現した国民は、選挙であっさり自民党を捨てる可能性もある。風。雰囲気。しかしこれは怖い面もある。ファッシズム、超ナショナリズムも雰囲気で起きる。

この章では、原子力ムラの利益分配構造も描かれている。
→その利益を生む元である地域独占と総括原価方式(電気料で確実な利益を競争なしに得られる)を叩かないとムラは存続すると思った。

5章 官僚と大衆   
原発ムラ官僚が、官僚同士の仲間関係から、原子力規制庁原子力委員会の力の削減を図る姿を描く。ムラ官僚が電力会社と国民(大衆)をうまく牛耳る姿を描く。官僚の思考が生々しく描かれている。
>大衆は常に愚かで、そして暇だ。衆愚というのはこういう連中をいうのだろう。こいつらのいうことを聴いては国の将来を誤る<(原発デモに対して)
→われら衆愚も、知恵を結集して、集賢と行きましょう。「三人寄れば文殊の知恵」と言うでしょう。

>電力会社に徹底的にリストラをやらせ、大衆に「値上げか再稼働かの二者択一」をせまる< 
→官僚のやり方と思考の描写は、圧巻である。著者が経産省エネルギー関係の官僚と思われる根拠です。
→「値上げ」「再稼働」以外に、省エネ(技術と意識)・循環エネルギー依存・電力解体(競争原理)・化石燃料効率化等いくらもありそうだ。まず原発をやめるという決意をする。そう決めれば、我ら愚かでかつ賢い国民は何とかする。

6章 ハニートラップ 
玉川京子が原子力規制庁官僚西岡進に半分色仕掛けで接近。→特に感想なし。しいていえば描写あまりうまくなし。特に西岡があまりに単純。

7章  はめられた知事  
電力業界が、再稼働に慎重な新崎県知事伊豆田清彦を知事の座から引きずり落とす作戦を描く。モデルはもちろん新潟県泉田知事。
その作戦は、彼をスキャンダルに追い込むこと。そのルートは、北東電力(東北電力)ルート、地元自治体コネ採用者ルート、も一つは関東電力(東京電力)が飼っているフリージャーナリストである。
→泉田知事人となりとその周囲の実際は知らない。泉田知事頑張れ。
→フリージャーナリストというのが怖い存在だ。我ら権力・金を持たない「衆愚」の主要作戦ルートは、世論だからだ。

8章 商工族のドン
政治家(商工族のドン)と原発ムラ官僚が、改革を希望する世論に対して、現在の電力システムを出来るだけ生かそうとする相談をする場面。対立する面もあるが、全体としては政治家・官僚・電力会社の利益温存で一致。
>法的分離とする味噌は、法律的には発電会社と送電会社は別法人なので、送配電会社には、地域独占と料金規制、そして総括原価方式を維持させることが可能です。<(官僚)
これは、発送電分離後もまた、原子力ムラの利益確保が可能という知恵である。→送配電会社は、第三者機関が監視する(民間会社や国民に安く電力を供給し、かつ官僚等の特別な利益にならないように監視する)国有企業がいいかなと思うが、もっと考える必要がある。

9章 盗聴
玉川京子と西岡進は、原子力規制庁審議官の盗聴・盗撮をする。そして西岡は、審議官が、審査前に電力会社に規制庁の報告書を見せたことの証拠を得る。その見返りは審議官の天下り。西岡はその証拠を玉川京子に渡す。→もちろん毎日西山太吉事件がモデル。特に感想なし。

ちょうど半分となりました。続きはこの次。