NHKスペシャル「映像の世紀」第5集「世界は地獄を見た」を見た。20年近く前に見たもののデジタルリマスター版である。
これは、第二次世界大戦を映像とナレーションで描いたもので、戦争の経過とその惨禍を描いている。20世紀の戦争は、総力戦である。どの国家も勝つために、相手国の一般国民を殺戮する。ドイツの英国諸都市へ爆撃、英米のドイツ諸都市爆撃、日本の中国諸都市爆撃、米国の日本諸都市空襲・原爆投下が描かれる。これらは、犯罪である。戦争を合法とした戦争法規上も犯罪である。通常人殺しは、重罪で処罰されるのに、戦争なら勝利国の犯罪者は、処罰されない。何と戦争の不条理なことか。
国家が戦争体制を敷く場合、自国民の権利を抑圧し、他の民族を抑圧する。どこの国家でもあったが、その典型は、ナチスによるユダヤ人迫害である。国家の宣伝を真に受けて、ドイツ人は、ユダヤ人を人と見なくなる。殲滅の対象と見る。何と戦争のむごいことか。
憎悪の業火が燃え盛る。ナチスに家族を殺されたソ連国民のドイツ兵への憎悪。ドイツ兵へ尽くしたフランス女性への、フランス国民の憎悪。悲惨である。
そして、罪もない母子の過酷な運命。フィルムでは、ユダヤ人の追い込められたゲットー
での母子。母親は幼い子供を抱きながら、手に入らない食事と住居を求めて大声で何かを叫ぶ。その絶望。強制収容所へ連れていかれる母親を求めて小さい子供が追いすがる。それをナチス兵が突き飛ばす。それを母親がかばおうとする。それをナチス兵が無理やり引き剥がす。地獄だ。そんなことが全世界であったろう。いっぱいいっぱいあったろう。
母子の過酷な運命。憎悪の燃え盛る灼熱の炎。今中東では、それが進行している。
地域のことは地域にまかせるしかないのじゃないか。大国が口出しすればするほど地獄が、憎悪が拡散するのじゃないか。イスラム国が出来てもいいじゃないか。クルド人国家が出来るのは当然いいことだ。地域に任せるしかないんじゃないか。自国の利益のために口出しするな。
少なくとも日本は、米国や欧米の軍事的応援なぞ決してしてはいけない。憎悪の連鎖の増幅に手を貸しちゃいけない。安保法制は止めるべきである。応援するかしないかの判断を政権に任せちゃいけない。法制上できないことにしておかなくちゃいけない。安倍内閣退陣を望む。安保法制廃棄を望む。
フィルムは、日本の二つの都市への原爆投下で終わる。米国による戦争犯罪である。
それは処罰されない。犯罪が処罰されない戦争は、起しちゃいけない。国家に気持ちを吸い取られるな。一国民・一人の人間としてなら憎悪は増幅しにくい。人殺しという犯罪は、起こせない。戦争は、善良な国民を、個人を犯罪者にする。
全世界の国民の平和的生存権を求めて、理想向けて努力することを誓った日本国憲法に、日本国民は立ち返り、行動すべきである。
フィルムの中で、特攻隊員上原良司は言う。「国の皆さんに、祖国の栄光を高からしめん事を」と言って散っていった。彼は、軍国主義・全体主義を明確に否定していた自由主義者である。彼が生きていたなら、間違いなく現日本国憲法の個人主義・自由主義・平和的手段による平和主義を支持したと思う。安倍政権退陣。安保法制廃棄。