「領土問題は、国際司法裁判所の決定に従う」と再宣言しよう

白井聡「永続敗戦論」を読んだので、「永続敗戦の概念が理解出来なかった」という昨日の感想だけでなく、他の感想も書いておこう。そのうちに、彼の言いたいことが分かるかもしれない。

第2章は、「対外関係の諸問題が、戦後の終わりを告げている」と言うテーマで、領土問題と北朝鮮問題を取り上げている。
領土問題についての説明には、大いに納得した。尖閣竹島北方領土問題の由来や問題点のありかを手際よく説明していると思う。特に北方領土に関する日本政府の説明が正当性がなく、国民に対して嘘をついていると言う説明に、なるほどと思った。(サンフランシスコ講和条約北方領土を含む千島全島を放棄しているという事実を誤魔化す)
日本政府のごまかしの中に、「永続敗戦」の状況が見てとれると白井はいう。そうなのかもしれない。

私は、その状態を何と言うかというより、どのようして平和を保つかという方に関心がある。

領土問題は、歴史的経緯も国民的感情もからまって、難しい。だから、日本国は、全ての領土問題は、国際司法裁判所の裁定に従うと言う宣言をすべきである。そして中露韓政府と同国国民と世界の人々に宣言すべきである。

この白井氏の論文を見て、改めてそう思った。

もう百年以上前から、国際紛争は平和的解決をということが国際社会で言われてきている。国連憲章でも、紛争解決の原則は、平和的解決である。平和的解決には、話し合いもあるし、国際司法裁判所で決めてもらうと言う手もある。話し合いがつかない現在、国際司法裁判所に決めてもらうのが一番いい。それで係争地が全て日本のものでなくなっても、相互国民間の安全・安心・信頼が得られればはるかにいい。

何故こんな簡単な宣言が出来ないか?

安倍政権は、安保法制・憲法改正の理由に「東アジアの安保環境の緊迫化」をあげる。つまり軍事力以外の、一つの解決方法=国際司法裁判所で決着をつけると言う、緊張緩和が嫌いなのだ、と思う。もっと言えば、緊張を増大させたいのだと思う。それは何のためか?やはり軍産学利益共同体の利益のためだろうと思う。もっといえば安保体制維持のため、もっといえば、米国軍産学複合体のためなのだろう。もっといえば、政権に近い連中のなかで己の権力維持のため、米国にすり寄る方が得と思う連中のためなのだろう。「永続敗戦論」で言いたいことのひとつは、これなのかと思う。が、それはどうでもいい。

平和が欲しい。

どこの国も「裁判で決めましょうという国」を軍事力で取るのは難しい。相手が領土問題は存在しないと言うことはあるだろう。日本国現政府の「尖閣には領土問題は存在しない」というのと同様に。韓国がそうだと思う。竹島を実効支配しているからだ。しかし、日本国が実効支配している尖閣についても、領土問題の存在を認めれば、韓国も困るだろう。そして韓国民の中には、「あれー、日本の主張も分かるかも」という人が出てくるかもしれない。もめごとは、裁判で決めようと言うことに賛成する人が出てくるかもしれない。


「日本の領土問題は、全て国際司法裁判所の裁定にゆだねる(宣言)」という公約をする政党の出現を切に望む。