安保法制は、戦争を抑止するか、日本を戦争に巻き込むか

桜は満開でもうすぐ散り始めそうだ。

こんなに早く、安保法制とそれのおおもとの根本条約=安保条約が、戦争を抑止するか、日本を戦争に巻き込むか、どちらなんだという状況に直面するとは思わなかった。

かつて、ほぼ同じ題と同じ内容で書いたことではあるが、だいぶ朝鮮半島がきな臭い様子なので、また書いてみたい。まあ、年寄りの繰り言である。
(まあ、ひどいことにはならないのじゃないかとは思うけど、東日本大震災やあの原発事故を考えると、何が起きるかわからないという恐怖もある)

安保法制を巡っては、安保状況をどう考えるか、集団的自衛権が合憲か違憲か、法制成立手続きが正当かどうか、(例えば)米国青年の血のみで日本の安全を守ってよいか、国際貢献のあり方等、様々な議論があった。わたしは、この議論の決め手は、安保法制(集団的自衛権行使可能)は、戦争を抑止するか、日本を戦争に巻きこむか、という点にあると思う。

北朝鮮はミサイル発射実験・核実験を積み重ねてきて、同国が米本土を核ミサイルで攻撃できるという能力を持つ段階も見えてきた。ここに至って、米政権は、北朝鮮への武力行使も辞さない覚悟で、核弾頭を持つ大陸間弾道弾は持たせぬ方針を打ち出した。それは、米国(民)の安全を直接脅かすからである。(米国は、米国のため行動する

2015年成立の安保法制(この場合は、改正武力攻撃事態法)は、日本が直接攻撃されていなくとも、ある状態の場合、集団的自衛権を行使して、同盟国の味方となって、武力行使できるという法律である。(テレビで解説者が後方支援する、といっていたがそれは間違いと思う。後方支援は、重要影響事態法適用の場合=全世界で、多国籍軍等を支援)
日本も、「戦争になれば米国の味方になって武力行使するぞ」、という改正武力攻撃事態法が、北朝鮮武力行使を抑止しているか。2015年以降の北朝鮮のミサイル発射などを見れば、抑止力増強になってないと判断する。理屈で考えても、世界最強の米軍を相手にする北朝鮮が、日本も米国と一緒に戦うぞということで、武力行使を控えるとは考えにくい。米国一国で十分。

次に、現在の朝鮮半島情勢で、安保法制は、日本を戦争に巻き込む可能性を高めるかどうかについて考えてみる。
改正前の武力攻撃事態法は、日本国領域内を攻撃された場合のみ、日本は武力行使できた。改正後は、政府の判断により、日本領域内を攻撃されなくとも、武力行使できることになる。

北朝鮮から考えてみよう。
改正前は、「日本国内を攻撃しない限り、日本が米国を応援して戦うことはないから、攻撃しないことにしておこう」、と北朝鮮が考える可能性がある。改正後は、日本国内を攻撃しなくとも、どうせ日本は米国と一緒に戦う可能性が高いのだから、日本国内の米軍基地をミサイルでたたいておこうと判断する可能性が高くなる。日本国内を攻撃されれば、安保条約により、日本も戦うことになる。
つまりは、安保法制(武力攻撃事態法の改正)は、日本を戦争に巻き込む可能性を高めるのである。

結論、安保法制は、戦争を抑止することには効果はなく、日本を戦争に巻き込む可能性は高くなるのである。
安保法制は、早く廃止すべきである。

安保法制は、廃止すべきといっても、現にある。この段階で、日本の戦争被害を防ぐにはどうすればいいか。
(1)米国に戦争をしないよう働きかける。
北朝鮮を除き、一番戦争の被害を受けるのは、韓国、次が日本、次が中国だろう。韓国・中国と一緒に戦争を避けるよう動くしかない。日韓がそろって米国に自制を求めるべきである。勿論、一番現段階で有効なのは、中国による北朝鮮の説得なのだろうから、中国に頼むべきである。(これを考えると、安保状況は改善したといえるのでは?)交渉内容は、北朝鮮・金体制の維持と核開発を現段階でストップが最低の交換条件。できれば北朝鮮の核放棄。
韓国大統領選で、容共政権ができることを望む。そうすれば、北も安心し、「挑発」(私はこの言葉に疑問を持つ)も抑制的になろう。
(2)米国と北朝鮮が、戦闘状態に入った場合は、全面戦争にならぬように努力すべき。しかし、私には、日本がどうすればいいかはわからない。日本にはうてる独自の政策はごく少ない。(日本は、戦争に積極的に協力しないという態度であれば、米国も自制の方向に行くかもしれないが、積極的に協力しないという政策をとれるか、疑問
(3)日本政府(安倍政権)が、武力行使の3要件をどのように考えるかが問題となる。どの程度に参戦するかは、政府の判断次第である。(安保法制がある以上そうなるほかない。憲法違反ということが問題となるが、それは事後のことである。損害を受けた日本国民への補償も焦点の一つだろう)
日本政府は、どの程度に参戦するのがよいか。どうせ敵とみなされるので、積極的に参戦すべきという考えと直接戦闘には参加しないの間のどれを取るか、よくわからない。(改正武力攻撃事態法は、必要最低限という要件があるけど、それだって解釈次第である。勿論事後に検証されるべき)少なくとも、北朝鮮が崩壊すれば、ミサイル攻撃・テロ・難民という極めて大きな問題があり、安倍政権に、直接戦闘に参加しないようにという、圧力はかけるべきと思う。しかし、日本がどうあろうと、米国の決断次第で、北朝鮮の崩壊は、容易にやってくる。

ここまで考えてきて、北朝鮮も含めてどの国も戦争を望まないし、損だとわかっているのに、なぜ戦争が起きそう(あるいは起きたのか!!)になるかを考えなければならない。これは課題とする。

安保条約はどうか。
1960年、新日米安保条約(現在の安保条約)を締結する際の、安全保障の面での論争を思い出してみる。
賛成論・・・ソ連や中国から攻撃される危険から日本を守るため必要(条約内容は、米国の日本を守る義務とその代償としての米軍駐留・米軍の東アジア全域での自由行動権承認、自衛隊の増強・日本国内の米軍への攻撃に対する自衛隊と米軍の共同行動を認める)
反対論・・・米国は、敵対国との決着に戦争という手段を使う国である。東アジアで行動する米国は、中ソという敵対国と戦争状態になる可能性がある。戦争状態に入った場合、敵対国は、日本国内の米軍基地を攻撃する。そうなれば日本も戦争に参加する。つまり戦争に巻き込まれるので安保条約に反対。

米ソ冷戦の終わった現在、私は、米国に日本を守って貰う必要はないと判断する。ロシアも中国も、日本を攻撃する理由はないと思う。ロシアも中国も日本と経済関係を深くして、自国の利益を追求したいと思うだろうし、現にそうしている。つまり私は、冷戦終結後は、日米安保条約は、不必要と考える。

現状で考えれば、かつての中ソに代わるものは、北朝鮮である。北朝鮮は、中ソより軍事力は弱い。日本がもし、北朝鮮に敵対しない(北の政府転覆を目指さない約束、相互不可侵条約、相互経済協力条約等)政策をとるなら、日本は安全であると判断する。

日米安保条約とその進化型の安保法制は、日本を戦争に巻きこむ可能性が高く、戦争防止に役立たないと判断する。

今回の危機が回避出来たら、安保法制廃止、日米安保条約解消を検討すべきである。そして日本の武装中立国際法重視・集団安全保障及び地域的集団安全保障体制の確立・国連軍創設・各国の非武装(もちろん日本も)を目指して努力すればいい

この危機がなんとなく収まればいいがねえ。北が米国を攻撃できる核ミサイルを持ってもやむなし、とまで妥協しても、危機は回避すべきである。第一、米国もロシアも中国も核ミサイルを持っていることを忘れちゃいけない。こやつらも、違法な核を持つ、かつ武力威嚇をする、かつ侵略をした実績を持つ(国連憲章違反)悪い国(笑)だということを忘れちゃいけない(笑)

国会とマスコミと国民は、この緊迫した情勢の中で、ごまかしなしに、率直に、安保法制や日米安保条約の是非をまじめに考えるべきと思う。