太陽光発電で環境破壊?(相馬市玉野で大規模太陽光発電計画)

福島第一原発事故後、原発から自然エネルギーに電源を替えようという動きが起きました。自然エネルギーは、二酸化炭素を排出する量も少なく、地球温暖化防止にも役立つということから、推進されました。特に、自然エネルギーの中でも、身近に発電できる太陽光発電は、固定買い取り制度で普及しました。

福島県は、原発事故の当事者ですので、特に太陽光発電の建設が積極的に進められました。わが相馬市でも自宅の屋根や敷地への設置はとても盛んです。これは小規模な発電装置ですが、そのほか市内各地に、樹木を伐採した丘などに規模の大きな太陽光発電施設がつくられました。特に相馬市磯部のメガソーラー基地は、約70ヘクタールの巨大な発電基地です。磯部地区は、あの大震災の時、津波により200名以上の犠牲者を出した地区です。漁業のほかに、広い田が広がっていました。ここにもう一度、稲作を復活させるのは難しく、大規模な太陽光発電基地が作られたわけです。

私も、震災直後自宅の屋根に太陽光発電のパネルの設置を考えましたが、築30年以上という古さと家の作りが南向きでことで断念しました。それにしても、「トイレのないマンション」である原発地球温暖化の主因といわれる二酸化炭素を排出する石炭・石油・天然ガス等による発電と違い、クリーンなイメージ太陽光発電に持っていました。

本文とは関係ないのですが、眼を休めるため、私が近頃ボランテイアで刈ったところです。左側は、池なのですが、ほとんど葦に覆いつくされてます。

ところが、先日相馬市玉野に住む片平芳夫さんの話を聞き、相馬市玉野に建設計画中の太陽光発電基地は、二酸化炭素を出さないメリット以上に自然破壊のデメリットの方が大きいのではと感じました。
この発電所計画は、東京都の「相馬伊達太陽光発電所」というの合同会社の事業計画だそうです。その会社の環境影響評価報告書の概要によりますと、対象面積は、約230ヘクタールで発電規模は、最大8万3千キロワット、約2万世帯の年間消費量になるそうです。その分の二酸化炭素を削減でき、福島県の進める再生可能エネルギー導入拡大への貢献というのが、この会社の事業目的だそうです。


この事業計画について、雑誌「政経東北」(4月号・5月号)地方新聞「福島民友」(4月1日)で取り上げられていて、地元住民にも、賛成の人と懸念を持つ人の両方がいるという記事がありました。(私はこの事業計画も知りませんでした)

先日講演をいただいた片平芳夫さんは、相馬市玉野の酪農家です。彼は、こんなことをおっしゃってました。

(1)この発電所計画の土地は、かつてバブル時代、リゾート開発会社がゴルフ場建設を計画し、約5億円を投じた土地です。バブル崩壊でゴルフ場建設は、失敗し、この土地は転売を重ね、最後に現在の
会社が、競売により数千万で手に入れました。さらにその周りの農地等を借りて、約230ヘクタールの規模にする計画です。山間地かつ高齢地域なので、農地の所有者は、賃貸料が入るので、おおむね歓迎しています。

(2)この発電所計画は、阿武隈山地の中の傾斜地です。傾斜がきついため、発電用に傾斜を20°にします。そのため樹木を伐採し、表土(腐植土)を削り、さらに山塊まで削ります。樹木や表土(腐植土)は、保水・気温上昇防止・生態系維持・酸素供給・景観維持に大きな役目を果たしています。

(3)樹木伐採、表土はがしは、鉄砲水・洪水の危険性を増大します。水源枯渇の危険性もあります。生態系維持も破壊します。ここに住んでいたイノシシ・サル・ニホンカモシカなどは、住処を奪われ、里村に姿を現し、農地を荒らすのは間違いありません。

(4)ここでは発電する電力は、相馬市に供給するのではなく、伊達市に供給します。それがこの会社の「相馬伊達太陽光発電所」という名の由来です。

(5)屋根へのパネルの設置や磯部の発電基地には、賛成です。しかしこの玉野の発電所は、磯部の倍以上の大きさです。磯部では、土地を改変することなく設置できます。土地の有効利用になります。しかし、この玉野の発電所は、山の姿を変容し、環境を改変しなければ設置できません。環境破壊のデメリットが大きいと考えています。

(6)発電事業は、採算が取れなくなるので20年で終了します。借り上げられた土地は返却されますが、パネルなどの装置がどうなるか、会社は明言しません。破壊された環境だけが残されるのではと、心配しています。

(7)この発電所に隣接する5軒の家は、水道がなく、発電所の敷地にある湧き水を使っています。私たちの生活用水がどうなるか心配です。

(8)会社は、環境影響評価を行っていますが、大した調査もせず、いい加減です。

(9)会社は、草刈りなどの雇用を生み出すと言ってますが、パネルの日陰になるので、草はあまり生えず、雇用は作り出せないのではと思っています。

・・・・・・・・以上が、片平さんの話のまとめ・・・・

私は、片平さんの話を聞いて、「太陽光発電もやり方では、自然破壊になる」ことを知りました。現在の緑豊かな山の姿が、太陽光発電の黒っぽいパネルが数キロ続く風景は。どうもなあ、と思いました。
まして、20年後、使われなくなったパネルの風景や(パネルが撤去されても)むき出しの山肌の延々と続く風景を想像し、ぞっとしました。

太陽光発電所を作る資材の製造や運搬には二酸化炭素の排出します。建設作業でも二酸化炭素を出します。(「原発二酸化炭素を出さない」と言われながら、実際は出していました)さらに、樹木を失うことによる二酸化炭素の吸収量が減ることも考えなければなりません

この相馬市玉野のメガソーラー発電所計画には、過疎の山間高齢集落の維持・再生という問題もあります。それは、人口密度の低いところに建設される原発と似た構造があると感じました。

そこで片平さんに連絡を取って、実際に、相馬市玉野の建設予定地を案内してもらうことにしました。

・・・・・以上前編終わり、後編に続く・・・