平成天皇の被災地 訪問 人に迷惑をかけることと人に頼ることは違う

平成天皇が、南相馬や相馬を訪問しました。全国植樹祭に参加することが中心ですが、それは表面的で、被災地への訪問がほんとの目的なんじゃないかと思ってます。

昨日、我が家に警官がやってきて、近くの道路を天皇陛下が、11時58分ごろ通過するので、もし見るなら、20分前にどこそこに来てくれという用件でした。同じ用件で今朝10時ころにも来ました。どうも「見に来てくれ」、という感じでしたね。私は、行きませんでしたが、妻が行きました。この警官は、栃木県警でして、応援に来ているのだそうです。ただじゃないでしょうから、お金がかかるなあ。天皇の訪問で力づけられる人がいるのも本当でしょうから、この訪問は、+なんでしょうか−なんでしょうか。

しかし、天皇の訪問を迎える国民も動員なのですね。

本日午後、相馬のスタンデイングに参加してきました。台風の影響で結構な雨と風がありました。私ら夫婦を含めて5名の参加でした。

なかなか、雨のスタンデイングは、大変です。ずいぶん濡れました。立ちながらいろんな話が出ました。
天皇制の話も出ました。ある人は、「生まれながらにして身分が違う存在を認めるのはおかしい」と言ってました。確かに、その通りだと思います。

しかし、敗戦直後ならいざ知らず、現在では天皇制廃止なんて非現実的です。となれば、天皇制を利用したある人間たち(権力を持つもの、既得権を持つもの)の自己利益追求を阻止するのが肝要でしょう。今回の天皇退位の問題では、天皇を公務員化する「定年制」を作るべきでした。平成天皇その人も、恒常的退位制度を希求する人でした。それは、天皇の神格化の危険性を弱めるものと思います。安倍政権は、これを否定したわけです。

平成天皇は、現憲法に忠実に行動したと思います。そうなるはずです。敗戦後、天皇家の地位を安定させたのが現憲法なのですから。

さて、近頃読んだ柚月裕子明日の君へ」がよかったので、読書の感想を述べます。

家裁調査官補の望月大地という若者が、少年の犯罪事件や離婚の問題で、加害者や離婚問題で困っている人の、ほんとの気持ちやほんとの事情を知って、解決に寄与するという話です。

例えば第一話 背負う者(17歳 友里

友里は、ラブホテルに男を誘って、男の隙をついて財布の盗んだ窃盗の罪で家裁に送られてきます。「なぜそんなことをしたか」という望月の質問に対して、「遊ぶ金が欲しかった」ということ以外、友里はほとんど何も答えません。同僚のアドバイスを受け、望月は、友里の家庭を訪問します。そして、友里の家族(友里と母と妹)は、ネットカフェに2年間生活ているということが判明します。さらに母親の実家への訪問や友里がかかっている医者への訪問で、友里の真実がわかります。

友里は、遊ぶ金が欲しいため窃盗をしたのではなく、妹の通院(摂食障害)の費用がほしくて窃盗をしたことが明らかになります。同時に母親が能力低いため仕事が続かないこと、友里がバイトで家族のネットカフェ生活を支えていたことが明らかにされます。

なぜ、彼女は、ほんとのことを言わなかったのしょうか。・・・友里はようやく言います。「お母さんがいつも言っているもん。人様に迷惑をかけちゃいけないって

望月がはっとしたのと同様、わたしもはっとしました。「人様に迷惑をかけちゃいけない」と私も教えられた来たからです。

生活保護を受けるべき状況にある人々が、生活保護を受けていないことがある」と調査で分かってます。彼等も「人に迷惑をかけちゃいけない」という道徳に縛られているのではないかと思いました。

作者は、望月を通して「迷惑をかけることと人を頼ることは違う」と言います。そうなんだと思いました。友里は、少年院に送られます。私も望月同様、保護観察処分が妥当と思ったのですが、先輩は少年院送致が妥当と判断し、家裁もそう判断します。

裁判官は言います。「半年間、少年院で自分が犯した罪を考えてください。今までよく頑張りましたね。半年間ゆっくり休んでください」

けなげな友里、誠実な望月、的確な判断の先輩調査官や裁判官。いいなあ、こんな風に日本の社会もありたいなあ。

最近知った柚月裕子という作家、「検事の死命」「パレートの誤算」「明日の君へ」と読んできましたが、どこか温かいという感じを受けました。前向きな人々を描いています。いい作家だと思います。

「明日の君へ」の中で解決できなくとも温かい、ほのかに希望が見える話がありました。

第5話 迷う者(十歳 悠真)という話です。離婚の場合の親権を争う話です。中味は省きますが、世の中には、どうしようもない状況というものがあると思うのです。しかし真実を知ることと、誠実にものを考えることが、ほのかな出口を見せてくれると思いました。