薄気味悪い空疎ー「安倍三代」を読んで

「安倍3代」(青木 理著)を読んだ。久しぶりの読書である。その感想を書く。

(1)安倍三代とは、安倍晋三(現首相)、安倍晋太郎(晋三父)、安倍寛(晋三父方祖父)である。著述は、寛、晋太郎、晋三の順である。この著述の順番に従って、人物の印象が薄くなった。インタビュー数や資料数は、寛、晋太郎、晋三の順に多くなるはずだが、印象はそれに反比例して薄くなった。

 

特に晋三の父方の祖父は印象深い。戦前軍政になびかなかった数少ない政治家である。さらに「富の偏在は国家の危機を招く」という主張は、まるで無産政党のようである。

 

一般に、資料が少ない方がくっきりするし、終わった歴史の中の人物は、その存在がはっきりするのは当たり前のことではある。ただそればかりではなさそうだ。それは、晋三という人間存在の本質が関係していそうだ。

 

(2)寛と晋太郎の章を読むと、昔の保守政治家の様子がよくわかる。彼らは地元の名望家であるが、地元の利益に尽くし地元の熱烈な支援を受けている。その意味では、地ばえの人間で、生きている感じがする。

 

(3)寛と晋太郎を見ると、かつては保守勢力間の熾烈な争いがあり、自民党の活力が感じられる。かつての自民党は生きていた。今の自民党は、官邸の陣笠代議士ばかりのように見える。その主因は小選挙区制にある。選挙制度改革の時、私は政権交代のため小選挙区制もありと思ったが、(勿論当時も今も比例代表制がベターと考えている)それは間違いだったのかもしれない。

 

(4)同級生・同僚による小・中・高・大・社会人の時の晋三の評価は、この本によると、「凡庸・優しくいい子・まじめ・目立たない・おとなしい・可もなく不可もない・ひ弱・腰が軽い・信念がない・右翼的な所もない」というところである。現在の晋三とずいぶんイメージが違う。

 

青木の悪意(笑)による印象操作(笑)か?

しかし、幼少期から青年期にかけての、この人の長い期間の、かつ多くの人の証言相互に矛盾がないことを思うと、この通りの人間なんだろうと思う。それを証明するため、青木は、どのぐらいの人間にインタビューしたか、数字で示すべきであった。また上と反対の評価がなかったと明言すればよかった。(ある程度言っている)

 

○○で目立ったとか、○○に優れていたとか、こんな発言を覚えているとかという証言がごく少ない。「大学のゼミでの発言ほとんどなかった」には、びっくりした。ゼミとは、学生が自分の考えを言うことで成り立つものと思うからだ。現首相は、自分の考えのない人なのだと思った。(ただ政界入り後変身したという可能性はある。)

 

こんな人間が、なぜ長期政権を維持できているんだろうと、疑問に思った。勿論青木もこれに答えを出そうとしている。門閥閨閥の力、小選挙区制による官邸の力の強大化、民主党政権の失敗、自民党短命政権への反動から、決められる政治への期待等をあげている。いずれもあっていると思う。しかし、まだ腑に落ちない。

 

(5)開発独裁という政治スタイルがある。後進国が発展するためには、強力な政治が必要という考えである。中国・韓国・フィリピン・インドネシア・タイ等いっぱいある。明治の日本も同じであったろう。それに倣って、私は、現在の日本の安倍政権を「衰退独裁」とよびたい。バブル崩壊から四半世紀、ますます日本の衰退は顕著となりつつある。こんな中、日本国民のかなりの部分が、安倍独裁で何とかなるのと思っているのではないか。一方、なんともならないと考える国民の一部は、絶望から棄権しているのではないか。そんな気がしてきた。

 

(6)青木は、少年期・青年期の晋三を「薄気味悪いほどの空疎」と言っているが、これが現在でも変わらぬ安倍晋三という人間の本質なんだろうと思った。

なるほど、と思った。 なぜなら、首相として彼の言動・行動を「空疎」が説明できると思うからである。

 

本質が空疎であれば、平気でうそがつけるし、恥を感じないし、無知を自覚もしない。言い逃れだって平気である。空疎故物事の根本を考えない。物事の様々な矛盾を見据え、それでも選び取るということをしない。

 

人は、経験も含めた知識と情動で動くとするなら人間安倍晋三は何でできているのか。

 

空疎を埋めたのは、母方祖父岸信介への憧憬。政治家一家の跡継ぎをうまく演じようという情動。知識は、官僚や彼を担ぐことで(晋三神輿は軽い)利益を得ることのできる自公政治家が、彼の空疎に吹き込む。・・・うむむ、トランプと似ている。情動があり、知識と他への目配りはない。恥もない。

 

(7)私も含めて多くの人は、凡庸で深い知識もなく可もなく不可もないというところだろう。しかし、空疎ではない。優しくまじめな人も、目立たない人も、信念のない人も、ひ弱な人もおとなしい人も多いだろう。でも空疎ではない。普通の人は、平気で嘘はつけないし、恥を感じるし、無知を自覚する。やはりただものではない、安倍晋三。本質は空疎なのである。怖い。

 

ということで(?)地元のスタンデイングに行ってきた。初め3名で途中から一名合流した。風がかなり強かったが暖かさも感じた。もうすぐ春という気がした。

 

f:id:A0153:20190218134913j:plain二つのプラカードを持っているのが私で、隣が言いだしっぺの女性。写真を撮ったのが妻。以上で全員。初心に帰って「安保法制 違憲無効」を掲げた。

 

青木「安倍三代」の取材中は、安保法制へ抗議行動が盛んだったころである。安倍晋三の出身校の教授連中が安保法制反対の決議をあげたことが「安倍三代」に紹介されていた。あの頃今のスタンデイングが始まった。

 

安保法制が成立してからもう2年半たつ。安保法制はもう多くの人の頭から抜けている。馴れは恐ろしい。それで初心を忘れないように「安保法制 違憲無効」を掲げた。

今日は中学生も通りかかった。「お疲れさんです」と言ってきた生徒が一名。男子生徒である。俺「ありがとね」

別な中学生と会話

俺「ずいぶん早いね」(まだ2時前)

中学生「テストなんです」

俺「テスト何日目」

中学生「一日目」

俺「何日やるの」

中学生「二日」

一日4科目で二日でやるのだそうだ。私らの時はどうだったか。もっと長かったように思う。余裕があったように思う。今は日程が厳しいようだ。土曜日が休みということが効いているのかもね。